利尿剤を飲むと危険な時
10月後半ぐらいから急に気温が下がってきて
寒くなってきた影響なのかどうなのか
『咳』を主訴に来院されるケースが最近は多いです。
わんちゃんの場合
咳症状の鑑別は大きく循環器疾患か呼吸器疾患かに分かれます。
細かく言えば、喉に何かしら刺激があるとかでも起こるとは思うので
他にもあるとは思いますが
多いのは、慢性気管支炎みたいな呼吸器疾患か
僧帽弁閉鎖不全症絡みの循環器疾患か
それらが併発している子か。
そこらへんが1番多いのかなって思います。
正直、僕が慢性気管支炎に関して語れることなど
そこらへんの動物病院の獣医さんたちとそんなに変わらないので
僧帽弁閉鎖不全症に関連する話でも。
診断だったり、ステージ分類だったり、内科治療だったり、外科治療だったり
そこらへんの情報については
過去のブログでも書いた気がしますし
いろんな病院さんが色んなこと書いてるので
ここで書いてもあんまりおもんないかなと思うので
今日はちょっと違う視点から。
こっからは僕の完全な独断と偏見を多分に含みますので
何のエビデンスもないことと捉えてください。
僕の完全な私見です。
循環器内科を生業とする獣医にとって
僧帽弁閉鎖不全症のわんちゃんが肺水腫、呼吸困難で亡くなるということは敗北を意味すると
僕は考えています。
おそらくその多くが投薬でのコントロールの仕方が上手くなかったんだろうなと。
もちろん、薬自体が飲めなかったとか
ものすごい急性断裂でどうしようもなかったとか
めちゃくちゃ興奮する性格ですぐに心拍数が爆上がりしちゃう子とか
若干しかたない部分もあるかもしれませんが
それでも何とか治療方法を模索するのが循環器内科の獣医の仕事かなって思ってます。
まあ、別に僕は循環器内科専門でやっている獣医でもないですし
ただただそういった専門的な循環器の先生方の診察の片鱗に触れさせていただく機会が
他の先生よりも多かった獣医ぐらいに考えてくだされば良いと思うのですが
僕的な、末期の僧帽弁閉鎖不全症のわんちゃんの最期の終え方の理想系は
慢性腎臓病関連の悪液質みたいな症状か
膵炎っぽい感じの消化器症状絡みのものです。
ただただ、呼吸苦で最期を迎えてほしくないっていう僕なりの思いもあったり
酸素が足りず頑張って呼吸しようとしながら亡くなるよりは
ちょっとずつ食欲や体重が落ちてきてしまって、枯れるように亡くなる道の方が
犬さんの苦しみは少ないんじゃないかという僕の持論です。
自分の症例を肺水腫にしてしまう先生の特徴としては
(偏見なので話半分で聞いてくださいね。)
未だにフロセミドを多用していたり
エコーが下手くそだったり
再診のタイミングが微妙だったり
色々とあるわけですけれども
基本的には、利尿剤の使い方が下手くそなことが多いのかなって思ってます。
利尿はかけすぎちゃうと、脱水や急性腎障害、膵炎などの原因となってしまいますが
かけないと肺水腫になってしまうことも少なくありません。
要は全身状態を良好に保ちつつ、利尿を良い感じにかけるのがポイントになりますが
そこのポイントの見極め方に上手い下手が出てくると思っています。
左心房圧が高めなわんちゃんについては
常に利尿剤は飲んでおいて欲しい部分はありますが
下痢をしてしまったり、嘔吐があったり
自由な飲水ができなかったり、食欲が落ちていたりする場合は
その限りではないと考えています。
ただでさえ脱水に陥りそうなところに利尿剤を飲んでしまうと
腎臓の数値が跳ね上がったり、消化器症状が出てきてしまったり
そこが結果的に死因になるケースも少なくないので注意が必要な部分です。
利尿剤の使用料をチキってしまう先生方は
そこらへんが怖いというのもあるのかもしれません。
普段から僧帽弁閉鎖不全症で投薬をされているわんちゃんで
左心房拡大による咳が日常的に出ている子に関しては
咳がなくなるというのも脱水を示唆する一つの所見なんじゃないかなって思っています。
今まで大きかった左心房が
何かしら脱水になることで血液量が低下し
小さくなってしまった結果
咳がなくなるんではないかなと。
こういう時に利尿剤が追い討ちをかけることがありまして。
それをできるだけ避けたいわけです。
循環器疾患はどうしても長期戦になる傾向がありますし
薬の投薬期間も長くなるケースが多く
どうしても、命に関わる薬だから、という認識が強いせいか
どんな時でも絶対に飲ませないといけない!という感覚に陥ることが多いです。
その感覚・認識自体が間違っているわけではないのですが
時には注意が必要ですよ、ということも覚えておいてもらう方が良いと思います。
特にACE阻害薬と利尿剤に関しては
脱水時の投薬には注意を払うべきですし
可能であれば、処方された動物病院で相談していただくことをお勧めいたします。
それでは、今日はこのへんで失礼いたします。