尿検査〜飲むから出るのか・出るから飲むのか〜
午後の診察が落ち着いて
今誰もいらっしゃらないので早めの更新。
今の時点で本日の件数が65件。
そのうち5件ぐらいの診察で尿検査を実施しました。
1日の中で5件以上尿検査があることも珍しいのですが
その内訳が
膀胱炎症状関連の検査としての尿検査と
多飲多尿関連の検査としての尿検査が半々ぐらいでした。
最近、なんとなくですが
多飲多尿を主訴に来院されるケースが以前よりも増えたように思います。
それだけ
お水の飲む量が増えたり、尿の量が増えたり、という症状を
気にする人が増えてくれたということでしょうか。
前にも書いたかもしれないですし
個人的に多飲多尿について考える上で大事だと思うことを書いていきます。
多飲多尿という症状は大きく二つに分かれると思っておりまして
①多飲→多尿パターン
②多尿→多飲パターン
の二つです。
どっちが先かという話ですね。
たくさん飲めば、それだけ尿は増えるので当たり前と言えば当たり前なんですけど
飲水量を増やすと尿は薄くなりますし、多尿になります。
具体的には、わんちゃんの心因性の多飲とかはこれに当たりますね。
あとは、ドライフードをふやかして与えている場合やwetフードがメインだったり
手作り食がメインで水分量が多い場合なんかも
同じように多尿になる傾向があると思います。
以前、多飲多尿を主訴にいらした犬さんがおりまして
血液検査をしても、画像検査をしても何も見当たらなくて
再度、食事の内容なんかをご家族に確認したところ
フードにダシをかけて食べているということが判明しました。
結果的に、食事中の浸透圧が高くなり喉が渇いたのか
それにより飲水量が増えていたみたいで
それをやめてもらったら、多飲多尿の症状は落ち着きました。
診察って難しいな、ってこういう時思います。
お気づきかもしれませんが
①の多飲から始まる多尿に関しては
その多くが病気に起因するものではなく
どちらかというと普段の生活習慣からもたらされる症状であることが多いと思います。
獣医師は、多飲多尿という主訴だけを見ていると
どうしても何かの病気だと診断をつけようと躍起になってしまいがちなので
こういう考え方って自身の経験からも案外大事なのかなって考えるようにしてます。
多飲多尿でイメージされる疾患としては
犬さんの副腎皮質機能亢進症・クッシング症候群や
猫さんの甲状腺機能亢進症
犬猫さんの慢性腎臓病や糖尿病なんかが
一般的なものかと思いますが
それらはほとんどの場合
尿がたくさん出てしまう多尿症状から始まります。
その結果として
身体から水分が出ていってしまうので
水分喪失を頑張って補おうと、たくさんお水を飲むわけですね。
結論
多飲からスタートする多尿であれば
そんなに問題ないことが多いけど
多尿から始まる多飲は、病気が隠れている可能性が高くなる
そんな感じです。
それを鑑別するための一つのツールが尿検査なわけですね。
もちろん、それが100%当てはまるわけではないですが
『多飲多尿です』と一言で言っても
症状の出方によって考え方は少し変わってきますよ、ということは
覚えておいても良いかもしれません。
ただ、多飲から始まる多尿だから大丈夫だよーと自己判断せず
もし急に多飲多尿の症状が出てきたと感じる場合は
一度、かかりつけの動物病院の先生に相談してみてくださいね。
今日の内容は、あくまでも多飲多尿という症状を考える時の
考え方の一つとして捉えていただければと思います。
実際に動物病院で検査をしてもらって結果を受け取った時の見方が変わるかもしれません。
ご参考になりましたら幸いです。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。