センベルゴによる猫さんの糖尿病治療
今月のVeterinary Boardの特集は『新薬を使いこなす』でありまして
センベルゴ、ゼンレリア、エルーラ、クレボル、エポベット
アプカード、パノクエル、ベトメディン経口薬、アリジンについて
それぞれ書かれてありました。
今日はその中からセンベルゴについて改めて書こうかと。
発売当初もブログのテーマにしておりましたが
センベルゴ(成分名:ベラグリフロジン)はSGLT2阻害薬というものに分類される薬剤です。
簡単にいうと
腎臓での糖の再吸収を抑制することで
糖を尿中に排泄して、血糖値を低下させようというお薬です。
猫さんの糖尿病は
人間の2型糖尿病と類似しているとされており
膵臓でのインスリン分泌障害とインスリン抵抗性が増大することによって
持続的に血糖値が高くなる状態になってしまいます。
この高血糖状態がずっと続くと
糖毒性と呼ばれる
インスリン分泌能力が低下したり
インスリンの反応性が低下するような状態になってしまうとされています。
その結果
高血糖→糖毒性→また高血糖・・・という
悪循環が続いてしまい、糖尿病が発症・進行してしまうという事態に陥ります。
センベルゴは
この悪循環を断つために、血糖値を低下させ
糖毒性からの脱却し
膵臓のβ細胞の機能回復を図るというお薬なわけですね。
従来の猫さんの糖尿病治療において
血糖値を確実に低下させる方法には、インスリン療法しかありませんでした。
長時間作用型のインスリンを大体1日2回注射してもらうというのが一般的かと思います。
これにはいくつか問題点がありまして
・ご家族が注射をしないといけないという心理的な負担が生じる
・1日2回の注射ということがご家族のライフスタイルに大きな影響を与える
・常に低血糖のリスクが伴う
などが課題になってきたりします。
これに対して
センベルゴは1日1回の経口投与で
低血糖を起こしにくいとされている薬剤であるため
このような問題点を大きく改善できる可能性があるという意味では
すごく良さそうなお薬です。
実際、当院でも糖尿病の猫さんにセンベルゴを使用してみて
糖尿病が寛解できた子もいらっしゃいます。
ただ、どんなお薬でもそうですが
メリットばっかりのお薬なんていうものはあまりないと思います。
その点、センベルゴも例外ではなく
使用するにあたり、最も重要と思われるのが適応症例の見極めです。
基本的に
猫さん自身がインスリンを体の中で分泌しないと
このSGLT2阻害薬による糖尿病治療は成立しないので
糖尿病が進行してしまって、インスリンが膵臓から分泌できなくなってしまった猫さんには
適応外となってきます。
今回の雑誌では
SGLT2阻害薬の適応を見極めるための評価項目として以下が挙げられています。
・一般状態が良好であること
・高度な脱水または悪液質を認めないこと
・ケトン体の増加を認めないこと
・血液検査においてクレアチニンが2.8mg/dl未満、ビリルビンが0.5mg/dl未満
いわゆる『ハッピーな糖尿病』状態というやつですね。
また、糖尿病の猫さんの中には
甲状腺機能亢進症やクッシング症候群、高ソマトトロピン症などを併発している子もおりまして
このような子はインスリンの感受性がすごく不安定だったりもするので
インスリンが効かないなあと思っていたら
次の日は低血糖っぽくなったりで、結構管理が難しかったりします。
そういう子には低血糖のリスクが低いセンベルゴは
上記の評価項目を満たす状態であれば
有効な治療選択肢になるんじゃないかと記載されておりました。
今回の特集では
センベルゴを使用してみた3症例が書かれてありましたが
そのうちの2症例は
インスリンからセンベルゴへの切り替えを試みたものの
結局、センベルゴ開始後にケトン体の上昇を認め
インスリン治療へと戻らざるを得なくなりました。
やっぱり一度DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)とかまでなってしまった子に
SGLT2阻害薬で挑むのは難しい場合が多いのかもしれません。
試すとしても慎重にモニタリングを続けながらでないと
危険を伴うことになりそうです。
同じ糖尿病の猫さんでも
インスリン分泌能が残存していそうな猫さんをきちんと選択することが
センベルゴ治療の失敗を防ぐポイントなのですが
そこを治療開始前に見極めるのがなかなか難しいのかもしれません。
というわけで
今日は、猫さんの糖尿病治療薬センベルゴについてのお話しでした。
それでは。
おはようございます。
センベルゴのご説明、分かりやすく飼い主が取り扱いやすく負担が軽減するお薬だと理解が出来ました。
ありがとうございます。
現在、センベルゴ投薬中の猫です。
処方された夜に、センベルゴを与えました。
その後、血糖値は徐々に下がり次の日の朝から血糖値は安定して基準値をキープしました。
センベルゴの投薬は、1日1回ほぼ同じ時刻に投与なので次の日の同じ時刻に与えようと思いましたが、低血糖数値となり投薬を止め食事を与え血糖値を上げました。
その後も血糖値は基準値内なのですが、たまに低血糖数値になる事があり高カロリーチューブでの強制給餌をして血糖値を上げてます。
センベルゴ投与は、低血糖になってる時にどうしたら良いかと困惑中です。
ブログでのコメントでのご質問で申し訳ございません。
コハルママ様
お世話になります。
こちらでの返信という形で申し訳ありません。
小春ちゃんの場合は、血糖値が下がってしまうようであれば
投与回数を2日に1回、3日に1回など
血糖値の様子を見ながら漸減していただいても良いと思われます。
または血糖値が200から250を超えた段階で投薬という形でも良いかもしれません。
よろしくお願いいたします。
ご返信ありがとうございます。
血糖値の数値を見ながら投与してみます。
少量での摂取ですが食欲もあり食べれる時に食事は与えてます。
低血糖の対応は出来ていますので様子を見つつ投薬をしてみます。
ありがとうございます♀️