慢性腎臓病の猫さんに対するアルミニウム製剤

先週出た報告ですかね。
さっき見つけたやつです。はい。
慢性腎臓病に対する治療戦略の一つとして
血中リン濃度を抑えるというものがありますが
その方法の一つにリン吸着剤の使用、というものがあります。
リン吸着剤については
どこかの記事だったりに詳しく書いたように思いますので
ブログ一覧のページから検索していただければと思います。
リン吸着剤には
鉄製剤、アルミニウム製剤、カルシウム製剤、ランタンなど色々とありますが
今回はアルミニウム製剤についての報告です。
僕が知らないだけかもしれませんが
猫さんにアルミニウム製剤を使用した際に
血中濃度がどのくらいになるのか、とか
どのくらいで中毒症状が出るのか、とか
詳しい話はあまり知らなかったので、勉強になりました。
僕の解釈が間違っていたら申し訳ありませんが
以下参考までに書かせていただきます。
間違いがあったらご指摘いただけますと幸いです。
水酸化アルミニウム製剤を投与していると
こんな感じで、血中のアルミニウム濃度は上昇していく傾向にあるみたいです↓

(この元論文より抜粋しています。)
で、実際にアルミニウム中毒になった猫さんのケースレポートも書いてありましたので
それも参考までに。
症例は16歳の猫さんで
体重が4kgのあIRISステージ2ぐらいの慢性腎臓病の子でした。
軽度の後ろ足の脱力と断続的な右前肢のミオクローヌスが7ヶ月間見られたので
この動物病院を来院されたみたいです。
この時に測定した血清アルミニウム濃度は376ng/mlと
人間とかわんちゃんの中毒域とされる100ng/mlを大幅に超えており
この後、水酸化アルミニウム製剤の投与は中止され
追跡調査で前肢のミオクローヌスは完全に消失したそうです。
また、水酸化アルミニウム製剤中止5ヶ月後の血清アルミニウム濃度は71ng/mlであり
ご家族からは神経学的徴候が完全に消失したとの報告を受けたそう。
この投与休薬後の71という数値も
実は結構高くてですね。
さっきの図を見ていただくとイメージ掴めるかもしれませんが
健常な、アルミニウム製剤を飲んでいない猫さんの血中濃度とかと比較しても
まだ結構高い水準にあるんですね。
このことは、アルミニウム製剤の影響がなかなか体から抜けにくいということを
裏付けてます、的なことが書かれてありました。
アルミニウム中毒症状が完全に消失するまでの期間というものは
まだ定まっていないようですが
結構長期的なスパンで考えないといけないかもしれないですね。
実際、この論文では
猫さんの中毒症状を示す閾値が人間やわんちゃんの100ng/mlよりも低い
86ng/mlという数値になっておりました。
そこから考えると71ng/mlってまだ危うい数値だとは思うんで
中毒症状が消失するまでは時間がかかりそうな感じですよね。
興味のある方は、元の論文も貼っておくので
よかったらご参考になさってください→https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12060314/
こんな感じの報告だと
慢性腎臓病の猫さんのリン吸着剤としての選択肢として
アルミニウム製剤はちょっと使いにくいのかなあ、って考えてしまいました。
それでは今日はこの辺で失礼いたします。