高カリウム血症の犬猫さんに対する輸液
昨日に引き続き
点滴・輸液療法をテーマに書いていきたいと思います。
日常の診察の中でたまに遭遇する質問ですが
『血液検査でカリウムが高いのに、カリウムが入っている点滴を入れても大丈夫なんですか?』
というご質問をいただく機会があります。
高カリウム血症に出会う場面として多いのは
猫さんの尿道閉塞とか、犬・猫さんの急性腎障害とか
そういう時に認めることが多いです。
そういった疾患の際には
全身状態が悪化していることも多く
原疾患の治療に加えて
輸液による循環血液量や脱水の補正などを目的とした治療が必要となることも少なくありません。
その際に何の輸液製剤を選択するのか?
昔はカリウムが含まれていない輸液製剤が多く選択されていました。
一般的には生理食塩水が多いですかね。
今でも使われる先生はいらっしゃると思いますし
別にそれが間違いとかではないとは思います。
ただ、生理食塩水は疼痛を生じる可能性があるため
皮下点滴への使用を避けるという意見があったり
高クロール血症になるのを気にして使用を避ける先生もいらっしゃったりで
最近では使用機会が減っているように思います。
僕自身も基本的には生理食塩水は
何かを希釈したり、溶媒として使用する時以外は使用することはほとんどありません。
一方で、最も一般的に使用される輸液製剤の一つである乳酸リンゲル液ですが
こちらにはカリウムが含まれているので
高カリウム血症なのに本当に大丈夫なの?って話なんですけど。
実際に
尿道閉塞の猫さんに対する乳酸リンゲル液の投与は
生理食塩水と同様に脱水の補正には有用ですし
酸塩基平衡異常の改善効果は生理食塩水よりも高いことが明らかとなっています。
カリウムが高くなっている基礎疾患の治療をするのはもちろん大事ですが
乳酸リンゲル液を輸液製剤として選択すること自体は
今では妥当な選択だと考えられています。
そんなわけで
僕自身は、高カリウム血症の犬猫さんに対して輸液を実施する場合
基本的には乳酸リンゲル液を選択することが多いと思います。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。