過剰輸液について
輸液療法について書いていきますよ、となってから
色々とドタバタで結局今日まで書けなかったので
今日は輸液療法のガイドラインの中から抜粋して
過剰輸液についてでも書いていこうと思います。
色々な形でお別れを告げないといけない日が続いておりますが
それでも前を向いて頑張りましょう。はい。
体液過剰というのは
文字通り、体が必要としている量よりも体液が過剰になってしまう状況なわけですが
体液過剰を引き起こす最も一般的な原因は
輸液の不適切な過剰投与とされています。
怖い話ですよね。
この体液過剰ですが
多くの臓器に影響が出てくるとされており
それぞれ、腎臓浮腫、消化管浮腫、肝臓浮腫、脳浮腫、心筋浮腫、肺浮腫などを引き起こすとされ
腎血流量の低下や消化管運動の低下、肝臓の代謝機能が落ちてしまったり
意識レベルの低下や心拍出量の低下や不整脈、肺水腫や胸水貯留を引き起こすこともあります。
そういった怖い症状が出る前に
できれば輸液が過剰になってないかを見極めたいところではありますが
初期段階の体液過剰は
体重の増加や体液のイン・アウトバランスの正への傾きなどから検出できるとされておりますが
獣医療において
これらを厳密に評価・モニタリングするのは現実的に難しいことも多く
動物医療において、犬猫さんの輸液療法中の体液過剰の発生については
過小評価されているんじゃないかとされています。
今回のガイドラインでは新たな表現として
Fluid intoleranceという言葉が登場しました。
これは輸液忍容性と呼ばれ
うっ血などによる臓器障害を生じることなく
輸液療法を許容できる体液レベルのことを指します。
ここの範囲なら副作用なく安全に輸液療法が続けられるよ
という体液レベルを輸液忍容性と呼ぶわけですが
この忍容性は症例ごとに大きく異なるとされています。
重篤な犬猫さんほど
積極的な輸液療法が求められる状態であることが多いわけですが
同時に、輸液忍容性が低く、体液過剰も起こしやすいとされています。
重篤な状態であればあるほど
先ほど申し上げた体重の増加や全身の浮腫所見などを
細かく評価しながら、輸液量を調節しないといけないということですね。
過剰輸液に対する治療方法としては
ナトリウムや水分摂取の制限や輸液量の制限、利尿剤の投与や運動などが挙げられますが
どれも有効性が高いとは言えず
特に重症化してしまった場合には、治療は容易ではないとされています。
可能であれば
過剰輸液になってしまわないように予防することと
仮になってしまったとしても早期発見し、対策を打てるようにした状態で
輸液療法には臨まなければなりません。
点滴とか輸液という表現は
何となく安易に捉えられがちな気がしておりますし
『点滴だけでもやってあげて』とおっしゃるご家族様も多いとは思います。
ただ、点滴をするという行為も薬剤を投与するということと同じである、という認識を
持っていただく方が良いのかなと思います。
薬と一緒で
点滴・輸液を行うことは有益な場面も多いですが
重篤な副作用を引き起こすことも少なくないと思います。
必要・不必要をきちんと見極める努力をした上で、輸液療法を実施するのが良いと思います。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。