副腎偶発腫に対するアプローチ方法
昨日に引き続き副腎偶発腫ネタでいこうかと思います。
昨日も書いたように
偶発腫というの名前は健康診断などでたまたま副腎がデカイよ
ということが判明した状態を指します。
そのほとんどが腹部の超音波検査によって大きな副腎を見つけることから始まるのですが
超音波検査によって評価できるのは
副腎腫瘤の大きさだったり、血管内に浸潤しているかどうかだったりであって
よっぽど特徴的な見え方をしていない限りは
悪性腫瘍かどうかの判別は難しいとされています。
なので今日はその先の検査手順を書いていきたいと思います。
ただ、副腎偶発腫が検出された状況で
どの検査を選択すべきかについては明確な指針はないので
あくまで参考程度に留めておいていただければと思います。
基本ここからは犬さんのお話です。
わんちゃんに副腎偶発腫が見つかった場合
まず最初にすべきことは
『本当に症状がないかどうかを確認する』ことです。
医療者から見れば明らかな症状だと認識できるものでも
ご家族からすれば、ただの加齢でしょ??的な感じのものも少なくないので
そこらへんの擦り合わせは非常に大事になります。
症状としては
クッシング症候群の際に認められるものの中だと
多飲多尿や多食、脱毛や筋力低下、肝臓の腫大やパンティングなど比較的一般的なものから
活動性の低下や尿漏れ、顔面神経麻痺や血栓塞栓症などの比較的稀なものまで
色々とあります。
また、血液検査などで肝酵素の数値の上昇を認めたり
尿検査でタンパク尿を認めたり
血圧測定で高血圧だったりと
他の検査における検査所見も参考にしないといけません。
そこら辺を再度評価し、明らかな症状や検査所見などがない場合に
次のステップとして
・コルチゾール産生腫瘍の評価
・カテコラミン産生腫瘍の評価
などの検査が挙げられます。
昨日のブログにも書いたように
副腎は場所によって産生しているホルモンが異なる臓器ですし
副腎にできた腫瘍だからといって
必ずしもホルモンを過剰に産生する(機能性腫瘍である)とは限らないので
そこら辺を評価するわけですね。
コルチゾール産生腫瘍の評価としての検査としては
クッシング症候群の診断時の検査とやや被りますが
今回の場合は『症状がない』という前提がありますので
基本的には感度が高い検査が適応となります。
感度が高い検査によって『陰性』となれば
コルチゾール産生腫瘍を否定することができるわけなので
そういった検査を選択します。
この場合ですと尿中コルチゾール・クレアチニン比(UCCR)が最も簡単な検査なので
まずはこれを
それで引っ掛かったら、低用量デキサメタゾン抑制試験といった手順かと思います。
ご存知の方も多いかもしれない
ACTH刺激試験については
コルチゾール産生腫瘍での感度が低いことと
副腎腫瘍における特異度が不明なことから推奨されないとされています。
が
例外として、一般状態が低下した症例で副腎偶発腫が見つかった場合
副腎のリンパ腫とかだと副腎皮質機能が低下していることがあるそうで
副腎皮質機能低下症の評価のためにACTH刺激試験を実施することはあるみたいです。
多分、かなり稀なケースですね。
あとはサブ的な検査だけど重要なものとしては
内因性ACTH濃度測定という検査があります。
フィードバックの話とかをここで書くとややこしくなりそうなので
めっちゃ端折りますが
簡単に言うと、内因性のACTH濃度が参考基準値範囲未満の場合は
コルチゾール産生腫瘍が疑われる
そんな検査です(ざっくりですみません)。
次に、カテコラミン産生腫瘍いわゆる褐色細胞腫の評価の検査としては
国内で利用できる検査としては
尿中メタネフリン・クレアチニン比(MN/Cre)と
尿中ノルメタネフリン・クレアチニン比(NMN/Cre)の測定が挙げられます。
特に、犬さんの褐色細胞腫はノルアドレナリン産生が優位な場合が多いみたいなので
尿中NMN/Creを用いた診断精度が比較的高いとされています。
これもUCCRと同様
ストレスの影響を受けて上昇することが報告されておりますので
お家で尿を取ってきてもらって、それをそのまま検査センターに送るような形になります。
こんな感じですかね。
あとやるとすればCT検査ぐらいでしょうか。
肺転移の有無を確認したり、下垂体を同時に評価できるのもCTの利点だと思います。
副腎腫瘍に対して外科手術を検討ってなったら
手術の計画を立てる意味でもやはりCTは必須なのかと思います。
CTほしいですね。頑張ります。
ちょっと本筋からは外れてしまいますが
一般的に『できもの』がどこかで見つかった場合に
針を刺す検査、細胞を採取する検査、いわゆる細胞診を想像される方も多いかもしれません。
でかい副腎に対して細胞診をするのはどうなの?と疑問を抱く方もいらっしゃるのかも。
ヒトだとカテコラミン産生腫瘍の細胞診とか生検においては
重篤な合併症が70%で発生しているので禁忌とされているみたいなんですが
犬さんの報告では
褐色細胞腫を含む副腎腫瘍に対して細胞診を実施した時の合併症の発生率は
5-10%ぐらい、死亡率は1%と報告はされているみたいで
比較的安全なようで
かつ
褐色細胞腫と副腎皮質腫瘍を鑑別する制度は90-100%と報告されていたりするみたいなんですが
正直、さっきのホルモン関連の検査で副腎皮質腫瘍なのか褐色細胞腫なのかの鑑別は
できてしまうことが多いですし
細胞診をしたからといって悪性度の評価までは難しいとされていることから
あんまり一般的には副腎腫瘍に対する細胞診は実施されません。
長くなってしまいましたね。
とりあえず、健康診断なんかで副腎偶発腫が見つかった時
その後どうしたらいいのー?的な流れについて書いてみました。
明日からは猫さんの副腎が大きかったら・・・って感じで書いてみようと思います。
それでは、今日はこの辺で。