代謝性アシドーシス治療
腎臓という臓器は
尿を作ったり、造血に関わったりと
色々な機能を持ちますが、その中に酸塩基平衡を保つというものがあります。
腎臓は
重炭酸イオンを再吸収し、酸を排泄することで
体の酸と塩基のバランスを保つために重要な役割を果たしています。
重炭酸イオンの再吸収は主に近位尿細管で行われ
酸の排泄は主に遠位尿細管や集合管にて行われるとされていますが
これらの重炭酸イオンの再吸収機能が落ちてしまったり
酸の排泄機能が低下することによって
塩基が減って酸が増えれば
身体は酸性に傾こうとしてしまいます。
これがいわゆる代謝性アシドーシスと呼ばれるやつですね。
IRIS分類の慢性腎臓病のステージ3の猫さんの15%
ステージ4の猫さんの53%が代謝性アシドーシスというデータがあります。
犬さんにおいても慢性腎臓病が進行するほど
代謝性アシドーシスが重度になることがわかっておりまして
猫さんよりも早い段階で軽度な代謝性アシドーシスが生じている可能性があるとされています。
人の方では
代謝性アシドーシスが慢性腎臓病の増悪因子であることが分かっておりまして
アシドーシスの治療を実施することによって
QOLが改善し、慢性腎臓病の進行を遅らせることが分かっています。
なので、慢性腎臓病の犬猫さんの血液検査の際には
血液ガスの測定も理論上は推奨されるわけですけれども
現状、犬猫さんの慢性腎臓病における代謝性アシドーシスの
治療開始推奨時期を明確にした研究がないのと
治療としては食事療法も含まれていたりするので
あんまり一般的には実施されていないのかな、と思います。
一応、IRISは人の研究を外挿して
犬さんなら重炭酸が18mmol/L未満に、猫さんなら16mmol/L未満になったら治療を開始し
犬さんは18-24、猫さんは16-24mmol/Lにしましょう、と提唱しているみたいなんですが
血液ガスの測定機器自体があまり一般的ではないですし
どこまで実施すべきかは悩ましいところ。
たぶん同じようなことを1年以上前にも書いているんですけど
最近またやってみようかどうか悩み中な感じです。
一応、血液ガス測定機器は病院にあって
その治療のためのクエン酸カリウムなんかも用意してあって
やってみようと思えばやれる話ではあるんですが
それを実施して、本当に動物の方でも慢性腎臓病の進行が遅れるのかどうかは不明なわけで
それだったら食事療法を従来通り推奨するだけでも良いのでは、と思ってしまったり。
難しいですね。
それでも
食事療法を実施しても
代謝性アシドーシスが酷い子にとっては
治療の選択肢が増えるわけなので、やってみるのもアリなんですかね。
もうちょっと考えてみます。
それでは。