老齢犬の認知障害に立ち向かう
というセミナーを聴きました。
犬さんの認知機能障害、いわゆる認知症については
当院でもよくご相談を受けますし
塩酸ドネペジルの使用頻度が増えていることも
その裏付けではないかと思われます。
認知障害の治療は大きく三つに分かれます。
薬物療法、栄養療法、環境整備です。
薬物療法に関しては以前にも書いたことがあるかもしれません。
昔からある、いわゆる睡眠薬一辺倒の寝かせる治療というものではなく
不安を取り除くためのサプリメントや薬物を使用していく形が
現在の主流になっているのではないかと思います。
当院では
基本的なサプリメントや薬剤はほとんど全て揃えておりますので
お困りの方はご相談ください。
ただ、できれば薬剤を使わないで済むように
薬剤での治療介入を極力遅らせるように
実際に認知機能が落ちる前に
予防的に何かに取り組みたいところ。
人間でいうところの認知症予防的なケアが
動物においても重要なのではないかと思います。
そこにはやはり栄養と環境整備。
栄養に関しては
低品質フードが認知機能不全のリスクを2.8倍にまで増加させるという報告や
脳に良い栄養素を含むフードの使用により
認知症診断に使うスコアの改善を認めたなどの報告もあり
認知症予防に対する有効な手段の一つと言えます。
大事なのは、身体状態にあったフードや
脳に良い栄養素を含むフードやサプリメントを摂取することです。
環境整備と書くと
ヨガマットやコルク製のマットを敷いたり
ゴム製の靴下やトーグリップスなどの滑り止めを使うことによる
転倒防止対策を講じることや
オムツを二重に履かせ排便用と排尿用を分けることで清潔に保つ工夫であったり
角に嵌まり込むことを防止するために隙間や角がないように囲む工夫であったりと
そういう設備的な面での整備がイメージされるかもしれません。
もちろんそれも大事ではあるのですが
その前に予防的に実施できることとしては
人間でいう『脳トレ』的なもの。
認知症予防から初期にかけてのトレーニングとして
コマンドトレーニングや探索行動ができる遊び
ボールやおもちゃでの遊びなんかが挙げられます。
おやつやフードを探すノーズワークマットとか良いですよね。
中期以降に推奨されるものとしては
散歩、同種動物との遊び・関わりや
リハビリ・マッサージ、日光浴(特に朝)なんかが
大事になってきます。
日常生活の中で普段当たり前のように実施していることでも
認知機能が落ちてきている子たちにとっては
それらが良い刺激になってくれて、脳の機能が落ちるのを少しでも防いでくれます。
人間の方でも
寝たきりになるんじゃなくて、最後まで自力で歩行ができるような
健康寿命を伸ばそうみたいな取り組みがあちこちでされておりますが
動物の方も可能であればそういう取り組みを実施することで
最後の最後まで若々しくいれるのが理想ではないかと思います。
そういう高齢犬向けの
リハビリ・トレーニング施設的なものであったり
認知症対策のための栄養指導なんかができる施設があったら良いんですけどね。
本当は動物病院でできたら理想なのかもしれませんが
なかなか設備的な問題や人手的な問題もあって病院でやるのは難しそうですが
犬猫さんとの時間の創造、的な
うちの病院の理念とも通ずる部分もあると思いますし
地域でそういうことを実現できたら理想だなって思ってます。はい。
なんか妙案あれば、ご教授くださいませ。
それでは。