クッシング症候群の診断に用いる検査
しつこいかもしれませんが
今日もクッシング症候群について書いていこうかと。
それくらい相談件数が多いのがこの疾患だと捉えていただければと思います。
今日のテーマはそのクッシング症候群を診断するための
検査方法についてです。
その前提として、用語を整理しておこうと思います。
どんな検査にも『感度』と『特異度』というものがあります。
感度というのは、病気の患者さんをその病気ですよ
って見逃さず診断できる確率のこと。
特異度というのは
病気じゃない患者さんをその病気ではないです
ってきちんと否定できる確率のこと
を指します。
感度が100%で特異度が100%の検査というものが理想ではあるのですが
現実的にそういった検査は存在しないので
それぞれの検査の特性を知っておかないといけませんし
症例によって、どの検査が適しているかを考えながら検査を進めないといけません。
クッシング症候群の診断に使用される検査で一般的なものとして
ACTH刺激(負荷)試験
低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST)
尿中コルチゾール・クレアチニン比(UCCR)
が挙げられるかと思います。
これらに関しては過去にも書いておりますので
もしよかったらそちらも読んでみてください。
今日はそれぞれの検査の特徴を見ていきたいと思います。
まずはACTH刺激試験について。
ACTH刺激試験の特徴は『特異度』が高いことです。
やや幅はあるものの59-93%とされています。
特異度が高い=偽陽性が少ない=陽性ならこの疾患です、と言える
といった感じなので
ACTH刺激試験の結果が陽性と判断されれば
クッシング症候群と診断できる、といった感じの検査ですね。
一方で、『感度』の方を見てみると
下垂体性クッシング症候群に対する感度は80-83%と良好な数値ですが
副腎腫瘍性クッシング症候群に対する感度は57-63%となっており
まあまあ感度は低いです。
感度が低いということは、偽陰性が多いということなので
見逃されている可能性もあるということを意味します。
副腎性のクッシング症候群をスクリーニングで見つけることに関して言えば
ACTH刺激試験は不向きってことですね。
次にLDDSTについて。
この検査の特徴は『感度』が高いこと。
つまりは偽陰性が少ないので、陰性ならクッシング症候群ではないですよ、と
言える確率が高いということになります。
感度だけを見れば、LDDSTが良さそうにも見えますが
検査時間が8時間かかるということで比較的長時間であることと
院内で預かるのが一般的なので
その間のストレスによってやや数値に影響があるのではないか、という点は注意です。
あとは、結果も大体4パターンぐらいに分かれるので
それぞれの特徴に沿った解釈が必要だったりします。
LDDSTがやや動物にとってストレスのかかる検査であるのに対して
犬さんにとって最もストレスの少ない検査としては
UCCRが挙げられます。
こちらは、『自宅で』尿を採取し
そちらをただ外注検査に提出するだけの検査になるので
ご家族の方が採尿しなければいけない、という手間以外に
特に負担になる点はない検査となっています。
こちらのUCCR。
クッシング症候群に対する感度はなんと99%。
特異度も77%と悪くありません。
感度が99%なので
このUCCRの結果が陰性であれば
クッシング症候群はほぼ否定していいということになります。
クッシング症候群を動物にストレスなく否定したい時には最適かもしれません。
ただ、この検査結果だけを受けてクッシング症候群と診断してはいけません。
あくまで他の検査結果と総合して判断しましょう。
長くなってきましたが
三つの検査について
大まかにその特徴を書いてみました。
これをどのように使い分けるかは
内分泌を専門とされている先生方の間でも
多少違いがあるようでして
皆様、その症例ごとに使い分けられている印象でした。
具体的に少し述べるなら
クッシング症候群の症状があるのか、ないのか
超音波検査にて副腎腫大があるのか
腫大があるのであれば、それが両側か片側か
クッシング症候群が疑わしいのか、それともクッシング症候群を否定したいのか
ここら辺を考慮に入れながら
その子の性格とかも加味しながら検査を進めていくみたいです。
少しは参考になりましたでしょうか。
ACTH刺激試験や低用量デキサメタゾン抑制試験は
実施されている動物病院さんも多いとは思いますが
UCCRが使えるよーっていう報告が2022年のものになるので
意外に使っている先生は少ないかもしれません。
自分のお家のわんちゃんが
クッシング症候群かどうか気になっていますって人は
結構多いと思いますので
今日のブログがほんの少しでも何かのご参考になりましたら幸いです。
それでは失礼いたします。