多飲多尿になる疾患への考え方
今日の昼の手術2件が終わった後
『尿崩症の実践的な診断法』という講演を聞いておりました。
その中で
いわゆる多飲多尿
水をたくさん飲んで、たくさん排尿をするという症状の鑑別疾患が出てきました。
過去に書いたかどうかを覚えておりませんが
何かの病気が原因で飲水量が減ってしまう、ということはあんまりないですが
多飲多尿を引き起こす疾患というものはたくさんありますし
『水をたくさん飲む』というのは病気のシグナルであることも多いので
せっかくならここで書いとこうと思います。
ちなみに多飲多尿の基準ですが
一般的には
犬さんで100ml/kg/day以上
猫さんで50ml/kg/day以上で多飲とされ
いずれも2ml/kg/hr以上の尿産生で多尿とされています。
*食事中の水分も含むので、その辺りも考慮してください。
とりあえず、鑑別疾患を並べてみます↓
腎臓系
・慢性腎臓病
・急性腎障害
・尿路閉塞/閉塞後利尿
・腎盂腎炎
・ファンコーニ症候群
・腎性尿崩症
・潜在的な腎機能不全
内分泌系
・糖尿病
・副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
・副腎皮質機能低下症(アジソン病)
・甲状腺機能亢進症
・原発性上皮小体機能低下症
・末端肥大症
その他
・子宮蓄膿症などの感染症
・高カルシウム血症
・低カリウム血症
・中枢性尿崩症
・心因性多飲
・肝機能障害
・低栄養
・赤血球増多症
・薬剤性
・塩分過多
こんなもんでしょうか。
結構数がありますね。
問診なんかですぐに除外できるものもあれば
最後までなかなか除外しきれないものもあったりします。
患者さんに
『最近、うちの子、水を飲む量が増えたんですよね。』と言われた時には
獣医さんはこういった疾患を頭の中に思い浮かべることになります。
ただ、闇雲に検査をしていっても答えに辿りつかないことも多いですし
この鑑別疾患の中にも『一般的に見られるもの』という疾患があります。
それが以下の4つ(犬猫さんそれぞれに分けて考えるなら3つ?)
・腎臓病(慢性腎臓病・急性腎障害)
・糖尿病
・クッシング症候群(犬さん)
・甲状腺機能亢進症(猫さん)
なので、問診とか尿検査なんかで
本当に多飲多尿だってなった場合は
まずは、腎臓病・糖尿病・クッシング症候群・甲状腺機能亢進症などを念頭に
スクリーニング検査を実施します。
具体的には一般的な血液検査や尿検査に加えて
レントゲン検査や超音波検査などの画像検査を実施することになるかと思います。
それらを実施することによって
よくある一般的な疾患以外の疾患も
実は除外できてきちゃったりするんですよね。
あと残ってくるものとしては
心因性多飲
中枢性尿崩症
腎性尿崩症
になってくるかと思うのですが
こっからは今回の講演のテーマにもなっていた
変法水制限試験やADH負荷試験などを実施していく形になっていきます。
まあ、実際には
どこかの検査の結果がグレーになっちゃうこともありますし
すんなり診断がつくこともあれば
色々と悩んだ結果、診断的治療として治療介入するケースもあったりします。
ただ、基本的な流れとしてはこんな感じかと。
猫ちゃんで診断に悩むことはあんまり多くはないかもしれないですが
わんちゃんの場合は、クッシング症候群の診断じに結構悩ませてきたり
潜在的な腎機能不全というのも証明が難しかったりするのかな、と思います。
昨日
クッシング症候群の診断・モニタリングについて
私はこうしてます、的な
内分泌を専門とされている先生方が議論を繰り広げる講演みたいなのもあったので
明日はそれを改めて書こうかと思います。
それでは今日のこのくらいで。