犬におけるアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬投与後の腎機能悪化の危険因子の回顧的な評価

循環器疾患とか高血圧の治療、蛋白尿の治療として一般的に使用される
ACE阻害薬ですが
興味深い報告が出ましたので載せておきます。
今回は、翻訳ソフト的なやつでそのまま訳したやつを載せてみる感じにしてみようと思います。
読みにくかったらすみません。
こんな感じです↓
要旨
背景 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)は腎機能の悪化(WRF)を引き起こす可能性がある。そのため,ACEi治療開始1~2週間後には腎機能の再評価を行うことが推奨される。
目的
心疾患、蛋白尿、全身性高血圧のためにACEiを投与されている犬におけるWRFの危険因子を同定すること。
対象動物
ACEiを投与された156頭の顧客所有犬を対象とした。
方法
血清クレアチニン濃度を初診時および初回再評価時に測定し、WRF(sCrの増加≧0.3mg/dL)を検出し、グレード分けした。グレード1(非高窒素血症)、グレード2(軽度)、グレード3(中等度~重度)のWRFは、それぞれsCr残存率1.6mg/dL以下、1.7~2.5mg/dL増加、2.6~5.0mg/dL増加によって特徴付けられた。
初診時の総蛋白、アルブミン、血中尿素窒素、クレアチニン、対称型ジメチルアルギニン、グルコース、トリグリセリド、総コレステロール濃度、血清電解質濃度などの人口統計学的データおよび血清化学的データを評価した。ACEi治療後のWRFの危険因子を同定するために多変量モデリングを行った。
結果
腎機能の悪化はACEi投与後の27/156頭(17%、95%信頼区間[CI]、0.11-0.23)で確認された。腎機能悪化はそれぞれ17頭、2頭、8頭でGrade 1、2、3に分類された。
ACEiを投与された犬のWRFと関連する唯一の有意な因子は、フロセミドの同時投与(オッズ比、5.05;95%CI、2.05-12.4;P < 0.001)および既存の高窒素血症(オッズ比、3.21;95%CI、1.28-8.03;P = 0.01)であった。
結論と臨床的重要性
WRFはまれで軽度ではあるが、フロセミドを投与されている犬や既存の高窒素血症がある犬では、ACEiは慎重に処方されるべきである。
ACE阻害薬として一般的に処方されている薬としては
フォルテコール、エースワーカー、アピナックなんかがそれに相当しますし
ACE阻害薬ではないですが
同じようにレニンアンギオテンシン系に対して抑制的に働く薬としては
テルミサルタン(猫さん用の薬だとセミントラ)が挙げられます。
このACE阻害薬を処方された犬さんの17%で
腎機能の悪化があったと文字通り考えると
ちょっと怖い結果かもしれません。
ここの結論でも書かれてある通り
ACE阻害薬処方時の腎機能悪化のリスク因子としては
利尿剤の投与と、投与開始時点に高窒素血症があることとなっています。
ここで問題となってくるのは
動物医療において
なぜかACE阻害薬が腎臓の薬として濫用されてしまっている点かと思います。
蛋白尿や高血圧がある際には
投与を行うことで腎臓に対して保護的に作用することはあると思いますが
それらがないにも関わらず
盲目的に処方されている点に注意しないといけません。
特に、血液検査で腎数値の上昇が確認され
腎臓病と診断されたことを理由にACE阻害薬を処方されている方は
腎臓の機能を余計に悪化させるリスクがあるため注意しましょう。
何度も繰り返しますが
動物医療においては現在のところ
蛋白尿や高血圧がないのにACE阻害薬が適応になることはありません。
動物病院さんによっては
『腎臓の薬』と表記されてフォルテコールが出されていたりするので
結構怖いなあって思います。
腎臓の薬って言われて処方されているのに
それが逆に腎臓の機能を悪化させてしまっていたら
何したいのかわからないですからね。
そんなこと本当にあるのかって思いますが
腎臓病のセカンドオピニオンを受ける機会が多い当院では
月に一回ぐらいはそういった薬剤性の腎機能悪化に遭遇する気がしますので
それなりに色んな病院で起こっている出来事なんじゃないかなって感じます。
なので、この報告の数字もあんまり驚かないと言いますか
まあそうだろうなって感じでありまして。
もうちょっと注意して処方されるようになったら良いのになあとか
常々感じることではありますので
この報告が、注意喚起になってくれたら嬉しいですね。
長くなりましたが
結論
腎数値がすでに高い犬猫さん(今回の報告を受けるなら特に犬さんなのかな)
にACE阻害薬を処方する際には注意しましょう!
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。