歯周病と慢性腎臓病
人間の方でもそうですし
猫さんでもそうですが
歯周病と慢性腎臓病には関連性があるとされています。
実際に、慢性腎臓病と診断する犬猫さんの中には歯周病に罹患している子が少なくないですし
歯周病があることで、慢性腎臓病をさらに悪化させている印象を受けることも多いです。
最近思うのが
元々、歯周病しか持っていない子が血液検査をした時に
誤って腎臓が悪いですねえ、ってなったりしてる場面があるんじゃないかという点。
血液検査の項目の中で
腎臓に関連する数値と言えば
BUNやCreが挙げられると思いますし、ご存知の方も多いと思います。
Creは筋肉量などを反映することなどをきちんと考慮していれば
腎臓のマーカーとしてはすごく優秀だと思いますので
それは置いておいてですね。
問題はBUNの方。
BUNは日本語だと、血中尿素窒素です。
簡単に表現すると
血液中の尿素の中に含まれる窒素の量がどのくらいかって話です。
なので、腎臓病じゃなくてもBUNが上昇する場面が存在するわけで
タンパク質をたくさん摂取したときであったり
消化管内で出血している時であったり
重度の感染症や炎症性疾患などでも上昇する可能性があるとされています。
ということは、歯周病が重度であれば
口の中で出血も起こりますし
BUNが上昇する場面というのもあるんじゃないかと思うんです。
実際、口腔内の治療を行った後に
BUNが低下した子もいるので、関係しているんではないかと考えています。
そうなると
歯周病の子が血液検査をする場面があった時に
クレアチニンは高くないけれど、BUNだけ高いということを理由に
腎臓が悪い!ってなって。
歯周病の治療として全身麻酔下での歯科治療をやりたいけど
腎臓が悪いから麻酔がかけられません。
仕方がないから、抗菌薬を使って症状を抑えましょう、という風な具合になっている子も
少なくないんじゃないのかなあと。。
で、抗菌薬を使い続けるうちに
元々ある歯周病も影響して
本当に腎臓が悪くなってきてしまう、、、みたいな。
そういう子が思っている以上にたくさんいるなあっていう印象です。
慢性腎臓病の犬猫さんに全身麻酔をかけるのって
患者さん側も動物病院側も
ちょっと怖いなっていう思いは確かにあるとは思いますし
実際に麻酔のリスクっていうのはゼロではないわけなので
当然の反応なのかなとも思います。
ですが、そういうリスク的なことをお話しした上で
慢性腎臓病の犬猫さんの歯科手術を実施する機会に当院は比較的多いのですが
やらせていただいている印象ですと
やって良かったなと言う人がほとんどな気がします。
歯周病もナメてかかると命を落としうる疾患だと思いますので
治療できる時に治療してあげることで
その子の予後をより良くさせることが多いんじゃないかなと感じています。
実際、他の動物病院さんで腎臓病が原因で断られてしまったという理由で
昨日・今日初めて当院でお会いした方の
大事な大事なわんちゃん・ねこちゃんに
いきなり全身麻酔をかけるのって
結構プレッシャーも大きいので
精神的には少ししんどいのですが。
それでも、歯の手術、本当はやってあげたいんだけど・・・
と悩まれている方がいらっしゃるのであれば
できるだけ力になりたいという想いはそれなりに強いので
一度、ご相談に来ていただければと思います。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。