動物病院への通院時の不安軽減
今月号のveterinary boardの文献紹介のところで
こちらの論文が紹介されておりました。
『動物病院受診中の犬さんの行動学的・生理学的ストレス徴候に対するトラゾドンの効果』
という感じのタイトルです。
動物病院のことが好きなわんちゃんにはあんまし関係ないかもなんですが
一般的に動物病院への通院や診察は
恐怖・不安・ストレス徴候を引き起こすとされ
循環器・内分泌における変化や攻撃行動を生じる可能性があり
検査の結果を上手く評価できなかったり
誤診につながってしまったり
ご家族や病院スタッフが怪我をしてしまったり
結果的に、動物病院への足が遠のき、治療介入が遅れる可能性が指摘されています。
そうなると
病気が完全に進行してしまってからでないと
動物病院への通院が難しくなってしまい
もうすでに手遅れの状態で・・・ということにもなりかねません。
そんなわけで
動物病院に来院時のストレスを少しでも軽減できないかということで
短時間作用型の薬物であるトラゾドンを単回投与することで
わんちゃんのストレスが軽減するかどうか
それに伴って、動物病院受診中のご家族のストレスが軽減されるかどうかを
検討したのが、こちらの報告です。
結論
ご家族自身のストレススコアには有意差は出なかったみたいですが
90%のご家族がトラゾドン投与時に
犬さんのストレススコアを低いと判定したとのことで
動物病院受診前のストレス軽減のための薬剤として
トラゾドンは有用であり
これを利用することで
適正な臨床検査や犬さんの福祉向上をもたらすんじゃないかってことでした。
こういった
通院や診察時の不安や恐怖のストレスを軽減するための薬剤を
Pre-Visit Pharmaceuticals (PVP)と呼ぶそうですが
当院でも、PVPとしてこの論文に上がっているトラゾドンの他に
ガバペンチンという薬剤も使用することがあります。
ガバペンチンについては主に猫さんに使用することが多かったですが
犬さんについての動物病院受診前の単回投与の効果を評価した報告も出ているみたいなので
わんちゃんにも良いみたいです。
また、トラゾドンとガバペンチンの併用も効果的みたいなので
どちらかの投与だけでは効果が不十分な子には良いみたいです。
PVPは適応をきちんと考えた上で処方すれば
安全に実施できるものですし
その結果として
検査の再現性の向上や検査結果の質の向上
病気の早期発見にもつながるとは思います。
何より、動物たちにとって
動物病院に対するストレスが緩和するということは
ご家族様にとっても嬉しいことですしね。
攻撃的な行動を取るので動物病院を出禁になりました
というご相談をたまに受けることがありました。
僕自身は
そういう子には上記のような薬剤によるストレス緩和のご提案をさせていただいております。
ご興味のある方は、ご相談ください。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。