犬と猫のてんかん重積状態及び群発発作
今回のテーマは
犬猫さんのてんかん重積(発作が長時間止まらないパターン)と
群発発作(発作が短時間に何度も起こるパターン)の管理に対する
初のコンセンサス・ステートメントが出たというお話です。
いわゆる、てんかんのような病気により
発作状態が長時間続いてしまったり
何度も起こってしまう状態というものは
治療薬剤への抵抗性を獲得してしまったり
重篤な神経細胞障害へと繋がってしまう可能性があり
場合によっては、致死的な経過をたどることがあります。
ですが、今までこういったてんかん重積や群発発作に対する
緊急治療法についての論拠の十分な統一見解は示されていませんでした。
色々な専門家の先生ごとの意見だったり、経験だったりに基づいた
治療方法が複数提案されているような状態で
その方法にも多少のばらつきがあった感じです。
そんなわけなので
このコンセンサス・ステートメントが発表されたということはすごく意味のあることみたいです。
確かに今までは
経験則だったり
色んな先生の話を参考にしたりしていた節があるように思うので
発作に対する緊急対応に関するきちんとしたデータに基づく統一見解が出たというのは
どこの動物病院でも一定の治療が受けられる可能性が高くなることにつながり
患者様にとっても良いことのように思います。
一応、この発表の中には
動物病院の中での短期管理のアルゴリズムと
ご家庭の中での管理の方法が書かれてありまして
レプトスピラの時同様、病院の中での安定化方法について
このブログに書いても仕方ないところもあるので
ここでは、家庭での管理方法、主には薬剤の投与について書こうと思います。
前提として
てんかん発作についてのエビデンスは
犬さんの方はそれなりにデータがあるのですが
猫さんに関してはどうしてもエビデンス不足という点が否めないのが現状です。
その点だけご留意ください。
長時間発作が止まらない場合(てんかん重積)や短時間に何度も発作を繰り返す(群発発作)の場合に
家庭で推奨される治療方法として
短時間作用薬のベンゾジアゼピン系薬剤の投与と
長時間作用薬のレベチラセタムのパルス療法を同時にするとされています。
短時間作用型のベンゾジアゼピン系の薬剤としては
ミダゾラムやジアゼパムが挙げられますが
犬さんの第一選択は、ミダゾラムの経鼻投与が推奨されています。
猫さんは研究数が不十分であるとはされていますが
当院では猫さんでも経鼻投与をさせてもらっています。
第二選択としては
犬猫さんともにジアゼパムの直腸投与が推奨されています。
この直腸投与に関しては
昔は動物病院でもよく処方されていたダイアップ坐薬という
ジアゼパムの坐薬製剤を用いるのではない、ということに注意が必要かと思います。
ここでいう直腸投与とは
注射薬に用いられる液体のジアゼパムを直接直腸内に投与することを指しています。
ダイアップ坐薬に関しては
効果が出てくるまでに時間がかかり過ぎてしまうので
目の前の痙攣を抑えてくれる効果は期待ができないことから
ここでは推奨されていないのだと思います。
ミダゾラムの経鼻投与に関しては
動物病院の中で、血管確保ができない時(静脈注射ができない時)などの
緊急時の対応の第一選択となっているぐらい
即効性があり有効性が高いことが明記されています。
注射薬を筋肉内投与するよりも推奨度が高いことは少し驚きかもしれません。
当院でも
痙攣が止まらない時の緊急時の対応策として
経鼻投与についてご説明させていただき
ご希望の方には
ミダゾラムやジアゼパムを
専用の投与デバイスを一緒にお渡しさせていただいておりますが
自宅でも病院と同様の対応ができるので便利なツールですよね。
というわけで
今回は、てんかん重積や群発発作の際の
ご家庭での薬剤の使用について書いてみました。
次の朝のブログのテーマは
犬さんのクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)になると思います。
それでは、失礼します。