ラプロスどうしようか問題
獣医腎泌尿器学会関連の話題パート2。
こちらも人間のお医者様の発表。
どちらかと基礎研究的なお話ではあるのですが
面白いと思うので取り上げてみます。
テーマは
腸腎連関〜生体イメージング技術を駆使した腸管微小循環の可視化〜
というものでした。
まずは、この話の前提として
医学分野でわかっていることを。
末期の腎臓病になると共通して食欲不振や嘔気などの消化器症状が出現すること。
消化器症状によって必要エネルギー摂取量が低下し
筋肉量が低下、フレイルへとつながり、患者さんのQOLが下がってしまうこと。
そのために、腎不全状態での消化器症状の改善は非常に重要であるということ。
また、この消化器症状の出現は
体内への尿毒素物質の蓄積に伴い出現し
その機序として、尿毒症物質による嘔吐中枢の刺激と腸管への直接作用などが
想定されているとのこと。
特に、消化器症状の中でも慢性的な便秘は
慢性腎臓病発症の独立した危険因子であることも最近報告されており
腸内細菌叢のディスバイオーシスが関与することが明らかになっています。
なので、便秘症状の改善も慢性腎臓病の治療ターゲットになるということみたいですが
実際のところ、腎臓病における腸管運動低下の機序はまだ十分に解明されていないとのこと。
あと提唱されていることとして
慢性腎臓病において、腸内環境悪化に伴い腸管バリア機能が低下することや
腸管粘膜障害や蠕動運動などの腸管機能低下と腸管由来尿毒素の蓄積が起こること
なんかがあります。
これらの状態がさらに慢性腎臓病を進行させるらしく
腸腎連関という考え方に至るわけです。
で、ここで何で今日のタイトルが『ラプロス』なの?ってなると思います。
猫さんの慢性腎臓病の治療薬の一つとしてのラプロスは
ベラプロストナトリウムを主成分とするプロスタサイクリン製剤であり
慢性腎臓病のステージ2−3の腎機能低下の抑制と臨床症状の改善ということで
一応認可を取っているお薬です。
ただ、ご存知の方も多いかもしれませんが
僕自身はこのラプロスはあんまり用いない派の獣医師で
以前は使用していた経験もありますが
費用に見合うだけの効果に疑問を持ち
最近は処方する機会はほとんどなくなっておりました。
今年発表された論文のデータ的には
良さそうな感じで述べられておりますが
それでも尚、慢性腎臓病の猫さん全員に推奨しよう、とはなりませんでした。
で、今回の発表
生体イメージングを用いた研究において
腎不全モデルマウスが、腎不全じゃないマウスと比較して
腸管血流が低下していることもわかったらしいのですが
それに加えて
プロスタサイクリンの投与によって
腸管へ流れる血管の拡張が肉眼的にリアルタイムに確認でき
腸管血流の改善を認めたそうなんですね。
それだけでなく
腎不全モデルマウスで認められた
腸管の活性酸素種の増加であったり、タイトジャンクションの障害であったり
がプロスタサイクリンの投与によって改善したんですね。
つまり、何を言いたいのかといいますと
慢性腎臓病の猫さんの腸管血流が低下していたり
腸内細菌叢が乱れたりすることによって
食欲不振や便秘などの症状があるのであれば
ラプロスの投与によって腸管血流の改善を目指すことで
そういった消化器関連症状の改善も望めるのではないか、ということです。
ラプロスを飲んで食欲が改善したよ、という猫さんのお話を聞くことはありますが
もしかしたら消化管血流の改善が、こういった結果として出ているのかもしれません。
腎臓の糸球体の血流が実際にどうなるのかについては
この生体イメージングを用いた研究ではまだ確認されていないそうですが
少なくとも消化管に対しての効果はあるみたいです。
ただ、問題は投与回数と用量ですよね。
今現在使われている用量だと他の臓器の血流とかに悪影響与えないのかな、と
個人的にはやや不安な点もあるので
慢性腎臓病で、以前ほど食欲が・・・
みたいな猫さんには
慎重に一日一回とかからラプロスの投与の提案をしてみるのはありなのかなとも思いました。
そんなに安い薬剤でもないですし
血流に影響する薬剤は、やはり慎重に使用すべきかと思いますので
最初の一ヶ月とか使用してもらい、食欲とか排便状態とかに変化がないのであれば
続けるかどうかを再度検討し直す感じでも良いのかなと。
慢性腎臓病の進行自体を抑制してくれるのかはわかりませんが
一番最初に書いたように
消化器症状を改善すること自体は
慢性腎臓病の管理という意味でも、QOLの改善という意味でも
非常に重要だとは思います。
そういう位置付けで使用するなら、考え方を改めてみようかなと
今回のお話を聞いて思った次第であります。
何かもしご意見などございましたら、ご気軽にどうぞ。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。
ご心配をおかけしております。
毎日ブログ、裏ブログともに拝見しております。私の日課です!ありがとうございます。
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今のところ嘔吐、下痢はありませんが、鼻や肉球もカサカサですし、目も角膜炎みたいになっています。
尿毒症は様々な症状がでてくるんですね…あっという間の1ヶ月でした。
一日一日…寄り添っていきたいと思います。
>とっこ様
お世話になります。こちらこそいつもありがとうございます。
少しずつかもしれませんが、ごはんをまた食べてくれているようで良かったです!
食べる量が少なくても便の量が減ってしまうとは思うので、一概に尿毒症だけのせいかもしれませんが
便秘の子はそれなりに多い印象です。
嘔吐や下痢などの症状がないのが一番だとは思いますので、大変だとは思いますが
少しでもぴこさんと一緒に過ごせる時間が長くなってくれれば良いなと願っています。
また、ご連絡いただければと思います。