病理検査
人間もそうですが
犬猫さんも色々な臓器に腫瘍ができます。
多くの腫瘍は基本的な治療方法の第一選択は外科手術になるわけですが
手術前に確定診断が取れている場合と取れていない場合があります。
例えば、皮膚にできる悪性腫瘍として有名なものに肥満細胞腫がありますが
肥満細胞腫は多くの場合、細胞診(腫瘍に細い針を刺して細胞を取ってきて鏡検する検査)によって
肥満細胞腫だという確定診断は取れます。
なので、手術する前に腫瘍の種類がわかるので
ある程度手術前後の治療計画が立てられるわけです。
ただ、実際にその肥満細胞腫がどのくらい悪いのか?
細かい悪性度までは組織を取らないとわからないんですね。
なので、手術で取った腫瘍は基本的には病理組織検査というものをしてもらうわけです。
それによって悪性腫瘍の顔つきだったりが判明してくるんですね。
僕が静岡に来て仕事するようになって
不思議に感じたことってまあまああるのですが
その中でも不思議ランキング上位にランクインするのが
『過去に手術で腫瘍を取ったのに病理検査に出されていないことがある』
ということです。
確かに患者様の強い要望によって病理検査に出さないということも
なくはないのですが
手術をして腫瘍を取ったのであれば
良性、悪性かの判別もそうですし
先ほど挙げた悪性度の確定にも病理検査は必須だと考えていたのですが
そこがどうやら違うみたいで。
過去に手術した場所からまた腫瘍が再発してきました
的なセカンドオピニオンも受けることがままあるのですが
『一回目の手術の際の病理検査結果は手元にありますか?』とお伺いしても
患者様の頭に『何のこと???』というクエスチョンマークが連なることも少なくありません。
そうなると
2回目の手術をするかどうかという時に
最初の腫瘍の正体がわからないという
何とも不思議な事態となってしまいます。
本来は、患者様から強く希望してやってもらう検査とかではないとは思いますが
もし希望しないとやってもらえないような感じなのなら
せっかく腫瘍を取るんだったら病理検査はやってもらう方が良いと思います。
摘出した腫瘍は病理検査に出すのが当たり前だと思っていたら
地域性もあるのか
どうやら違うみたいだったので
もし今後手術をご検討されているなら、ぜひ病理検査は出された方が良いと思います。
以前にもブログで触れましたが
最近では、抗がん剤感受性試験という新しい検査も登場しました。
摘出した腫瘍から細胞を培養して
その子のオリジナルな腫瘍細胞を作出します。
そこに実際に使用する抗がん剤を数種類暴露させて
細胞の抑制率を測定してくれるという検査です。
同じ悪性腫瘍でも
手術後の抗がん剤に対する感受性はその子によって異なることもあるため
こういった検査があることによって
より適切な抗がん剤選択につながることができれば、ということで考えられた検査みたいです。
抗がん剤感受性試験は
当院でも最近では利用させていただく検査の一つとなりました。
動物の腫瘍科の世界も年々新しい検査だったり治療方法だったりが
アップデートされています。
静岡市という場所柄
放射線治療などが現実的にはなかなか受けるのが難しいという点もありますので
せめて他の情報に関しては
できる限りのアップデートを続けていかないとなあと思っています。
それでは今日はこの辺で失礼いたします。