若齢の犬猫さんに抗菌薬(抗生物質)を使わない選択
2023年のヨーロッパの内科学の学会で
猫さんが若齢の時に抗菌薬(抗生物質)を処方されていると
将来的に慢性下痢になるリスクが19.9倍になるというデータが発表されたというお話は
以前にもさせていただきました。
人間の医療の分野でも
小児の頃に抗菌薬を使用したことがアレルギー系の疾患の発生リスクにつながったりと
耐性菌の問題以外の様々な問題が挙げられております。
過去に、風邪薬として抗菌薬・抗生物質を濫用していた黒歴史を
どうにか払拭しようと
医療の分野は、抗菌薬の適正使用があらゆる場所で叫ばれている状況です。
動物医療もそれに倣って
抗菌薬の適正使用という考え方が広まれば良いのですが
なかなか現実はそう簡単ではないということは、皆様もご存知かと思います。
そもそも犬猫さんが普通に動物病院に通っていたとして
1歳までに抗菌薬・抗生物質を一度も処方されていない子ってどのくらいいるんでしょうか。
人間とは違って、急性下痢とかにも抗菌薬が乱用されている動物医療ですから
一度でも嘔吐や下痢症状なんかで若いうちに動物病院にかかってしまうと
抗菌薬を使用されてしまうかもしれません。
猫ちゃんの風邪症状とかもそうですね。
目脂・鼻水があります。
じゃあ、抗菌薬を処方しますね、って感じで乱用されている現実があると思います。
皮膚炎とかでもまだ処方されていたりするんですかね。
昔は、急性の湿疹とかがあったら
抗菌薬とステロイドとを処方してたら大丈夫、みたいなことがあったかと思いますので
現在もまだ続いている悪しき風習かもしれません。
猫さんの膀胱炎症状なんかも、抗菌薬乱用あるあるになるかと思います。
わんちゃんと違って、若い猫さんが細菌性の膀胱炎になる確率はかなり低いですから
そもそも初手で抗菌薬を注射したり処方したりするという行為自体が
ものすごい確率の低いところに対する治療だということになってしまいます。
あと、人と大きく違う点として
去勢・避妊手術をされる方が多いという点もありますね。
手術をすると当たり前のように
術後の抗菌薬・抗生物質というものが処方されてしまうのも厄介なところです。
僕自身も以前に働いていた施設では二つとも術後の抗菌薬を処方しておりました。
でも、今ではそれはガイドライン上でやったらダメなこととされています。
抗菌薬・抗生物質という薬剤は
本来は細菌感染症に対する治療薬なわけでありまして
感染が成立していない段階では基本的に処方すべきではありません。
予防的な抗菌薬投与というものも原則としては推奨されておりません。
なので、当院は
犬猫さんの将来のことを考慮して
1歳以下の犬猫さんについては
可能な限り抗菌薬・抗生物質の処方というものをやらないようにしています。
サプリメントや栄養療法なんかで免疫力を維持することで
正体が病原体に打ち勝てそうなら薬は必要ないと考えておりますし
そもそも猫さんの膀胱炎みたいな細菌感染が関係してないものや
ウイルス疾患に対して使うべきではありません。
発熱などの全身性の症状が出ており
抗菌薬の使用を考慮しないと状態が危ぶまれるような子には迷わず使用することになるとは思いますが
そういった一年に何件あるかな?という稀なケースを除いて
若齢の子は特に、抗菌薬の使用は避けていきたいと考えていきたいと思っています。
こうやって書いていると
勝手にうちの病院だけが変なことを言っているみたいに捉えられるみたいですし
どうしても地域の動物病院さんの賛同は得られないっぽいので
こういう先生は他にもいるんだよー的な例を挙げておしまいにします↓
色々と熱心に書かれている先生なのでよろしければお読みください。
抗菌薬に使用によって腸内細菌叢のバランスがダメになってしまうディスバイオーシスの話にも触れてくれています。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。