SDMAについて改めて考える
昨日のセミナーの内容を忘れないように
個人的に気になるところを何回かに分けてまとめておきたいと思います。
ここ最近、健康診断でSDMAだけが高いということで慢性腎臓病と診断された
というご相談が多いのもあるので
そこの注意喚起も込めて書いておこうと思います。
SDMAの検査が開始された当初は
Cre(クレアチニン)などの既存の腎臓病バイオマーカーと比較して
早期に慢性腎臓病が発見できるツールとして述べられておりました。
なので、慢性腎臓病の初期はSDMAだけが高くなってくるだろう、と考えていらっしゃる方も多いのかもしれません。
SDMAについてのいくつかの最近の報告によると
実際はそんなことないですよー、というのがだんだんわかってきています。
↑この中では
慢性腎臓病のステージ1と2と健常な猫さんを比較した時に
クレアチニンはきちんとステージが上がるごとに高くなっていったけど
SDMAはきちんと差が出なかったことがわかっています。
また、カットオフ値を14とした時の検査感度も29%しかなかったみたいです。
この数字だと、SDMAで慢性腎臓病を見つけるのはなかなか難しそうな感じです。
あと、これは腎泌尿器学会の中でも話があったのですが
クレアチニンと比較して
SDMAは検査間変動が大きいのと
個体内変動が大きいことがわかっています。
つまりは、検査する日によって結構数値が変動してしまう検査であり
また、同じ猫さんを検査したとしても数値が変動する可能性も大きいということです。
それに加えて、特定の品種でSDMAが高くなってしまうことや
猫さんは年齢を重ねるごとにSDMAが上昇するんじゃないか、とも言われていたり
リンパ腫の時にSDMAの上昇を認めることは結構有名な話になりました。
そんなこともあって
SDMAを単独で慢性腎臓病の発見のためのバイオマーカーとして使用するのはやや危険です。
SDMAの数値だけで、慢性腎臓病を診断することはできないですし
SDMA単独で慢性腎臓病のステージングもやってはいけません。
変動が大きいので、慢性腎臓病の経過・進行の評価にもあまり適してはおりません。
一つメリットがあるとすれば
クレアチニンが筋肉量によって数値が変動してしまうので
体重の小さい子や筋肉が少ない子には、一定の有用性があるのではないかと思われます。
なので、SDMAの使い道としては
健康診断の時とかに測って数値が高ければ
他のクレアチニンだったり尿検査だったりの検査と一緒に
総合的に判断し、画像検査などに進むためのきっかけにするといった感じでしょうか。
最近よく遭遇するような
SDMAが高いという一点で、慢性腎臓病と診断され
そこから腎臓病療法食だったりACE阻害薬やテルミサルタンなどの投薬治療だったり
そういうのをスタートする、ということ風な使い方は危険だということですかね。
SDMAの数値が高い・低いで治療方法が変わるわけでもないですし
単独での病態進行の評価やステージングには使用できないとなると
なかなか検査機会が限られてきそうな感じもありますが
慢性腎臓病に気づくきっかけにはなってくれることはあるとは思います。
どんな検査もそうですが
この検査をしとけば大丈夫、みたいなものは基本的にないわけで
それぞれの検査項目の特性を知った上で実施するのが大事ってことですね。
少し長くなってしまいましたが
今日は慢性腎臓病の時に良く登場するSDMAについて書いてみました。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。