血圧測定
獣医師を対象に実施するアンケートの中で
『血圧は測っていますか?』という質問がありました。
回答者279人のうち
頻繁に測っていると回答したのは、27%
時々測っていると回答したのは、40%でした。
残りの30%ちょっとの獣医さんは血圧測定をあまり実施していないみたいでした。
『頻繁に』という頻度がどのくらいの回数を指すのか
具体的にはわかりませんが
当院は一日一件の血圧測定が、あるかないかって感じの頻度で測定しています。
本日も、腎臓病のセカンドオピニオンで来院された犬さんの
血圧を測定させていただきました。
当院におきましては
以前は人間と同様に
健康診断時にも測定するようにしておりましたが
腎泌尿器学会の認定医講習会において
健康診断における血圧測定はあまり推奨されない的な話でありましたので
現在では
慢性腎臓病の犬猫さんのステージングや経過観察
循環器疾患のある犬猫さん
高血圧があるため治療を実施している犬猫さんなどを対象に実施しております。
動物なので
どうしても過度に緊張してしまう猫さんや
体動が絶対に止められない犬さんなど
一部の子は測定が困難だったりもしますが
測定が可能な子は、必要な場合に測定するようにしております。
上記のアンケート結果を見て
動物医療において血圧測定自体が普及しているかどうかを考えた時に
正直、あんまり一般的に測定されている検査ではないのかな、と僕は思っています。
市内の他の動物病院さんに通われている方がセカンドオピニオン目的で来院される際に
ACE阻害薬などの血管拡張薬(フォルテコールやアピナックなどが多いかな)や
ARBであるテルミサルタン(猫さんだとセミントラになりますでしょうか)を処方されているケースは
とても多いのですが
血圧測定をしてもらったとか
血圧測定結果を見せてもらったとか
そういう話では少なくとも市内からいらっしゃる方からは聞いたことがありません。
本日のわんちゃんも御多分に洩れず
腎臓病療法食やリン吸着剤のサプリメントは処方されていて
血液検査は1ヶ月に1回実施されているものの
血圧測定はやったことがないとのことでした。
腎臓病に関して述べるのであれば
高血圧もなく、尿蛋白も存在しない犬猫さんに
血管拡張薬を処方すること自体は不適切な処方内容だと思われます。
ですが
血圧測定も尿検査も最初から実施していなければ
間違いなのかどうかもわからないような状態で
ただ投薬を続けているような感じです。
何だかなあと思うような現実ではありますが
正しい血圧の測定方法自体にしっかりと決まったものがなく
施設ごとに手技がやや異なっていたり
結果を正しく判断する方法にも差があったりすることも、問題なのかもしれません。
僕が大学卒業をした10年前の時点でも
大学の授業で正しい血圧測定方法なんていう講義はなかったように記憶しておりますし
そうなると自分よりも上の代の先生方は学習する機会は仕事をし始めてからになるわけで。
実際に働いていた動物病院が血圧測定を頻繁にする病院だったかどうかで
血圧測定に対する考え方は大きく変わるように思います。
今の学生さん達は、授業で習ったりするんでしょうかね。
それでも
今この時点で小動物臨床の世界の多数を占めている世代の先生方にとって
血圧測定自体があまり一般的な検査ではなかったのであれば
どこの動物病院でも必要な時はルーチンで測定します、という時代になるのには
もう少し時間がかかるのかもしれません。
血圧測定を実施すること自体が困難であったり
その検査を実施することで他の検査ができなくなってしまうような特殊事例を除けば
腎臓病においても循環器疾患においても
血圧測定は大事な検査項目の一つだと思いますので
実施することを推奨させていただいております。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。