心臓の薬をやめてみた症例
今日、心臓の検査をさせていただいたわんちゃんは
5歳のチワワさんで
一年前に、健康診断で実施した心臓超音波検査にて
僧帽弁閉鎖不全症を指摘され
そこからずっと心臓の薬を処方されている犬さんでした。
で、今年の検査で、悪くなっているから薬を変更し
利尿剤が加わったとのことでした。
そこら辺から、元気もなく調子が悪い日が続いたとのことで
当院を受診されました。
先日、初めて診察させていただいた際に
まず、聴診をした時に『ん?』となりました。
なんと心雑音がなかったんです。
通常、僧帽弁閉鎖不全症のわんちゃんは身体検査の際に行う聴診で一番最初に見つかるケースが多いです。
ワクチンを打ちに病院に行ったら、聴診で雑音を指摘され
心臓の超音波検査をしたら、僧帽弁閉鎖不全症が見つかった、という感じの流れですね。
なので、通常は
身体検査→心雑音を検出→心臓の超音波検査→僧帽弁閉鎖不全症と診断の順で進むわけですが
この子の場合は
心臓の超音波検査→エコーで逆流を確認?→僧帽弁閉鎖不全症と診断となったわけです。
最終的に
僧帽弁閉鎖不全症と診断できるんだから
順番なんてどうでも良くないですか?ってなるかもしれません。
確かに診断をするだけであれば、どちらでも良いのかもです。
ただ、この病気にはステージ分類というものが存在し
各ステージに推奨されている検査や治療というものが一応あります。
この子の場合は
超音波検査上、確かに僧帽弁閉鎖不全症はあるのですが
僧帽弁の肥厚は軽度で、逆流も物凄く少なく
もちろん心臓の拡大もありませんでした。
ステージがA、B1、B2、C、DとあるうちのステージB1でした。
このステージでは
食事療法・薬物療法ともに推奨されておりません。
基本的にステージB2以降が投薬を考慮するステージになるわけですが
その投薬の基準の一つに『心雑音』があります。
そもそも、心雑音がない僧帽弁閉鎖不全症は薬の投薬の対象にならないわけなんですね。
そんなこともあり
この子はまず利尿剤を終了してもらいました。
そこから数日して調子はすごく良くなったみたいで
念の為、今日心臓の精査を実施させていただき
全ての薬を一旦休薬とすることにしました。
利尿剤は必要な時にはとても頼もしい戦力になってくれますが
必要ない時に入れると、調子を崩すみたいです。
同じ病気だからといって
何でもかんでも診断ついたら投薬しましょう、というわけではなくて
きちんと投薬基準を見定めた上で、投薬を開始し
しっかりモニタリングをしていくのが心臓病もそうですが
慢性疾患においては大事なことだと思います。
このブログを書き始めて5年目になりますが
投薬の必要ないのに投薬している子ってたくさんいます、みたいなことって
最初の頃から定期的にずっと書いているように思います。
こうやって色々と発信しているつもりでも
あまり現実を変えられてはいないんでしょうかね。
まあ、1人でも何かしらを変えられるきっかけにさえなっていれば良しとしましょうか。
もうちょっと影響力を持てるよう
地道に頑張りたいと思います。
それでは今日はこの辺で失礼致します。