フリーソロ
獣医さんが獣医さんに対してアンケートを実施して
統計調査みたいなのができるサイトがあるんです。
常に幾つかの質問がなされているんですが
今ある質問に
『犬猫の避妊・去勢手術の際、静脈留置を設置しますか?』というものがありました。
静脈留置というのは
静脈に薬剤を注射したり、静脈に点滴を流したりする時に使用するデバイスを設置することで
医療ドラマとかでいう『ルート確保』ってやつです。
それを犬猫さんの去勢手術や避妊手術の時に
ルーチンに確保しますか?っていう質問です。
皆様はどう思いますか?
ちなみに当院はもちろん全身麻酔をかける症例には全頭確保しております。
一応、まだ回答受付中なので
今後結果が少し変わる可能性はありますが
現在の回答数が177人で
必ず設置すると答えた獣医さんは45.8%でした。
症例によっては設置すると答えたのが44.6%
設置しないとの回答が5.6%で、その他が4.0%でした。
その他が何を指しているのかはわかりませんが
必ず設置するという回答が45.8%というのは、なんだかなあと個人的には思います。
静脈確保をしない先生方の言い分もあるのだとは思います。
静脈留置を確保するのに、それだけの時間と費用がかかってしまうので
去勢手術や避妊手術にかける時間が長くなってしまうので
忙しい診察の合間にそういった準備をするのも面倒だとは思います。
留置する針もそこに蓋をするデバイスにももちろん費用はかかります。
去勢・避妊手術なんてすぐ終わるんだから
そんなん付けなくても大丈夫っしょ、という考えなのかもしれません。
ただ、全身麻酔というものは
100%安全が保証されているものというわけではありません。
それが例え10000分の1の確率だったとしても
何かしら予期せぬ事態というものが起こり得る処置だと思います。
そういった有事の際に緊急対応ができるようにするための静脈留置だと僕は考えておりますし
僕自身は血管を確保するだけだったら怖いから
緊急薬を3種類ぐらいずっと胸ポケットに入れたまま、どんな手術にも臨むよう心がけています。
命綱はおろか一切の安全装置を使用することなく
自分の手と足だけで岸壁を登るクライミングスタイルを
フリーソロと呼んだりするらしいですが
静脈留置を設置せずに手術に臨むことは、僕にとってはそういうイメージです。
命綱を付けずにクライミングすることは名誉のあることなのかもしれませんが
血管確保をせずに手術に臨むことでは、何の名誉も得られないように思います。
このアンケートが
全国の動物病院の内情をそのまま反映しているのかどうかはわかりませんが
そんなにズレてないんじゃないかなあって思いますし
この質問の仕方が、犬猫さんで別々になされていたら
猫さんの去勢手術とかは
静脈確保をルーチンで実施している割合はもっと低いんではないかと予想されます。
去勢手術や避妊手術というのは
どこの動物病院でもやっていることは同じだと捉えられがちで
どうしても値段で比較される傾向にはありますが
安い病院さんには安い理由がそれなりにあるんじゃないかなと思います。
去勢手術・避妊手術をお考えの方は
どういう風に実施するのか動物病院に聞いてみるのもありだと思います。
なんせ一生に一度のことなので、それぐらいやってみても良いかと。
それでは、今日はこの辺で失礼致します。