犬さんの混合ワクチン
『混合ワクチンの接種は3年に1回で良い』という情報が
数年前から一人歩きしているように感じております。
当然と言えば当然なのですが
混合ワクチンに含まれる成分のうち
何を予防することを目的にするかによって
どのくらいの頻度で打つかは変わってきます。
WSAVA(世界小動物獣医師会)やAAHA(米国動物病院協会)のワクチネーションガイドラインで使用される用語に
コアワクチンとノンコアワクチンという言葉があります。
コアワクチンとは、世界的に重要な感染症に対して
その防御のために世界中のすべての犬猫さんに推奨された間隔で接種すべきワクチンとされており
犬さんの混合ワクチンで対象となるものは
以前は
犬ジステンパー、犬伝染性肝炎、犬パルボウイルス感染症、犬アデノウイルス2型感染症の4つになっておりました。
このコアワクチンの接種に関しては
現時点では
『幼若期に3回程度の接種を終えたのち、6から12ヶ月で追加接種し
その後は3年程度の間隔で接種する』と言う感じになっています。
一方で、ノンコアワクチンに分類されている
パラインフルエンザウイルスであったり、レプトスピラ感染症であったりは
1年に1回のワクチン接種が推奨されております。
なので、この二つの感染症の予防を考えるんだったら
結局ワクチン接種自体は種類数は変わるかもしれませんが、毎年打つことが推奨されるわけです。
それに加えて
2024年4月に(先月の話ですね)
WSAVAのガイドラインが8年ぶりに改訂されたそうでして
いくつか変更点があったみたいなんですが
特に大きな変更点としまして
『レプトスピラ感染症が新たに犬さんのコアワクチンになった』ということでした。
いや、さっきまでの話と違うやん、ってなるわけですけれども
改訂とは大体そんなもんです。
ただし、これには条件がついておりまして
レプトスピラの流行地域であり、流行している血清型に対応するワクチンが入手可能である場合
ということが条件となっているみたいです。
日本の場合は、ほぼ全国でレプトスピラが存在すると考えられており
今月号の医療雑誌に書いている先生のご意見では、すべてのわんちゃんを対象として良いのでは
とおっしゃっております。
実際にアメリカでもレプトスピラに関して
12週齢以降のすべての犬さんに毎年接種を推奨する声明を発表しているみたいですし
静岡県の場合もこの下の図の通りです。

これは、届けられた数を集計しているものになるので
本当にレプトスピラに感染しているわんちゃんの数はもっといると言われております。
実際に、一昨年の台風の時にも
川の氾濫の影響もあってか
静岡市内で少なくとも4件のレプトスピラの発生疑いがあったと聞きました。
全頭亡くなったそうで
確定診断に至ってないので、届出の報告の数には入っていないと思われますが
実情はそんな感じなんだと思います。
この亡くなった4件のわんちゃんは
みんなレプトスピラを含まない混合ワクチンを接種されていたそうでして
ワクチンを打っていたからといって、症状がでないわけではもちろんないですが
接種していれば、助けられた可能性もあるのかもしれません。
人間は自分に都合の良い話ばかり記憶してしまう傾向にあるので
どうしても、混合ワクチンは3年に1回で良い、という情報だけが広まってしまう傾向にありますが
お家のわんちゃんには
何の病気の予防が必要なのか?
今一度考えられた上で、何種ワクチンをどのくらいの頻度で打つのかは
検討される方が良いかと思います。
それでは、今日はこの辺で失礼致します。