慢性腎臓病に伴う貧血の治療
今月の雑誌で上の文献が紹介されておりましたので
ご紹介を。
猫さんの慢性腎臓病においては
エリスロポエチンといういわゆる造血ホルモンが作られなくなってしまうことや
慢性炎症によって機能的な鉄欠乏が起こり貧血を起こします。
いわゆる腎性貧血というやつです。
腎性貧血の治療としては
現在の日本の動物医療においては
赤血球造血刺激因子製剤が使用されております。
昔ならエスポーとかダルベポエチンとか
今ならエポベットという新しい猫さん用の薬剤がメインですかね。
これらの薬剤は効果もある程度認められ
慢性腎臓病の治療の一端を担っているのですが
赤芽球瘻、高血圧、血栓形成などの副作用の観点から
貧血がある程度進行した場合のみの使用が推奨されています。
ただ、腎性貧血による貧血の進行は
慢性腎臓病の予後不良因子の一つであるため
できるだけ早期から使用できるような薬剤の開発が望まれる
というような内容が書かれてありました。
そこで、以前にもこのブログで何回か紹介した
HIF-PH阻害薬が注目されている、ということでした。
HIFは低酸素誘導因子と呼ばれ
正常酸素条件下では、酵素によって不活化されておりますが
低酸素になるとHIFが活性化し
上記のエリスロポエチンの産生や消化管での鉄吸収、貯蔵鉄の放出などを促進して
造血を促すように作用してくれます。
逆の逆みたいでややこしいですが
HIF-PH阻害薬は、HIFを分解してしまう酵素を阻害するので
単純にHIFを活性化させるお薬となります。
従来の造血刺激因子製剤は、素材の補充に頼り切っている治療であるのに対し
自己素材(エリスロポエチンや鉄)の代謝自体を改善するという観点から
より生理的に腎性貧血の治療が可能になるんじゃないかということでした。
一応、HIF-PH阻害薬の一つであるモリデュスタットを健常な猫さんに投与した報告とか
慢性腎臓病の猫さんに投与した報告↓
なんかも出てきておりまして
これからもどんどん新しい報告が出てきそうなお薬ですよね。
海外ではVARENZIN-CA1という名前で
すでに猫さん用の製剤が発売されています。
当院ではまだ在庫しておりませんが
これからの研究報告次第では
輸入して使用していくことも検討したいと思います。
それでは今日はこの辺で失礼致します。