慢性腎臓病に対する腹膜透析
今日のブログは
最近僕が悩んでいることと言いますか
やりたいことと言いますか
そういう事がテーマなんですが
僕の個人的な解釈も含んでいますので、間違っていることもあると思います。
それを踏まえて読んでいただければと思います。
透析という治療は
大きく腹膜透析と血液透析に分かれます。
血液透析は
いわゆる皆様がイメージする透析に相当するもので
これには特殊な機械が必要になります。
いずれは欲しいですが、今のところ当院にはこれがないので
当院で血液透析を実施することはできません。
じゃあ、腹膜透析は?となるわけですね。
腹膜透析は
まずはカテーテルと呼ばれるチューブみたいなのをお腹の中に設置します。
その後、めちゃくちゃ簡単に表現しますと
透析液をお腹の中に入れて
それをまた回収してきて・・・というのを繰り返して
血液をきれいにする、みたいな感じの治療です。
特殊な機械を使用するわけではないので
場合によっては、液体の交換は自宅でもできるわけです。
これを当院でも
慢性腎臓病の末期患者さんに利用できないかなあと考えているんです。
(実際に、自宅で腹膜透析をするように指導している動物病院さんもいくつか存在します。)
が、動物とか命とかそういうものに対する倫理観、考え方なんかも加わってきたりで
色々と弊害がありそうだなあ、というところを悩んでいる次第です。
透析治療は人医療では一般的であり
週に何回かベッドで横になりながら透析治療を受けている患者さんのイメージなんかは
皆んなが容易に想像できるものかもしれません。
ただ、動物医療においてはそれほど一般的な治療方法ではなく
多くが急性腎障害に相当する、急激に腎臓が障害され
腎機能が低下してしまうような病態が適応とされています。
急性腎障害は、治療介入が上手くいけば
失った腎機能を取り戻すことが可能になるので
透析治療は、その腎機能を取り戻すまでの繋ぎの治療となります。
尿が出なくなってしまって腎数値がどんどん上がってきてしまうから
腎臓が回復するまでの間は、透析で数値を下げて凌ごう、みたいな
そんなイメージの治療です。
なので、動物で一般的に行われている透析治療は
人間で行われている週に何回かの透析治療をずっと・・・みたいなのとはちょっと違うんですね。
それはきっと、腎移植に対する人間と動物の考え方の違いからくるんだと思います。
人間は、透析治療の先に腎移植治療が存在するので
腎移植に踏み切るまでの繋ぎの治療として、透析治療を実施するわけです。
もちろん移植腎臓の少なさから
腎移植治療が叶わない人も多いのだとは思いますが
移植治療はきちんと医療として確立されてはいるわけです。
一方で、日本の動物医療における腎移植治療は
一般的な治療とは到底言えません。
技術的には可能みたいですし、やっている動物病院さんもゼロではありませんが
動物倫理的な問題なども孕んでいることから
日本で普及するのは現時点ではなかなか難しいんではないかと思います。
移植手術を受けられる可能性がないのなら
人間みたいにずっと透析し続ける治療というのは
透析に依存し延命し続けるということになり
もしかしたら倫理的に問題があると考える人もいるんじゃないかなと思います。
でも、腎臓病だって言われて
自宅で皮下点滴を実施しているわんちゃんとかねこちゃんとかって
結構な数いらっしゃるんですよね。
自宅で皮下点滴するのはOKで、腹膜透析するのはダメです、っていうのは
なんかちょっと違うかなとも思うんですね。
それにやっぱり腎臓病が進行してきた先に
尿毒症症状がどうしても改善できなくて
段々と食事も取れなくなって、衰弱して亡くなってしまう
という犬猫さんを診察する機会が増えれば増えるほど
なんとかできないかな、と考えるわけです。
最初にチューブを入れないといけなかったり
感染のリスクがあったり
自宅でやらないといけないことの手間などもあったり
全員に適応できるわけではないのは分かっておりますが
選択肢の一つとして、チャレンジしたいなと思うんですね。
ただ、いかんせん、そんなに経験がないのと
慢性腎臓病の犬猫さんに腹膜透析を実施することに
あんまり日本の動物医療自体が前向きではないのとがあって
もう一歩踏み出せない自分がおるわけです。
ダメですね。
そんな感じで足踏みしていても埒が明かないので
経験がないなら経験がある先生に聞いて
しっかりと考え方なども教わる方が良いと考え
先日、腎臓病の偉い先生の病院に直接連絡してみました。
おそらく日本の動物病院の中で
最も腹膜透析の数を経験されている病院さんの一つではないかと推察される病院さんです。
こんなに動物病院が忙しい時期に
突然のメールを送ったにも関わらず、きちんと返事をしてくださるとのことなので
今はまだその連絡を待っている感じになりますが
できれば、その先生のご意見やご経験などを参考に
当院でも腹膜透析管理を導入したいなあって考えております。
そんなの延命じゃん、って言われるかもしれませんが
そんなことを言ったら
人間だって動物だって
医療というものにおける、ほとんど全ての治療が延命治療ではないかなと僕は思います。
やりたいという方に、ハマれば良いかなという選択肢の一つなので
なんとか形にできるよう頑張りたいと思います。
それでは、今日はこの辺で失礼致します。
長々と失礼しました。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。