老猫さんに多い病気 その3
はい。
今回で、高齢猫さんに多い病気シリーズは一旦終わりにします。
今回のテーマは甲状腺機能亢進症です。
慢性腎臓病やリンパ腫の影に隠れて忘れがちかもしれませんが
一般的には7歳以上の猫さんの10%以上が甲状腺機能亢進症を持っているとされているぐらい
一般的に多い疾患になりますし
猫さんの内分泌疾患だと一番多いのがこの病気になると思います。
犬さんの甲状腺機能低下症も多いように感じることがありますが
誤診されて内服を飲んでおられる子がめちゃくちゃ多いので
実際の甲状腺疾患は猫さんの方が犬さんよりもかなり多いと思います。
甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患は
基本的に症状があることが治療対象になりますので
症状のない猫さんにおいて検査を実施することには注意が必要でありますが
ご家族様がその症状に気づいていないケースも少なくないので
猫さんの定期的な血液検査で甲状腺ホルモンを測定する意義は一定あると思います。
具体的な猫さんの甲状腺機能亢進症の症状にはどんなものがあるでしょうか。
よく言われるのは
『食欲はあってご飯を食べているのに最近体重が落ちてきた』という感じでしょうか。
他にも
・慢性的な嘔吐や下痢
・水をよく飲み、尿量が以前よりも増える(多飲多尿)
・活動性が高まり、よく遊ぶようになったり、よく甘えるようになった
・性格がキツくなった
・落ち着きがなくなった
・毛並みが悪くなった
などでしょうか。
このような症状に逸早く気付いてあげることが重要となります。
病院で身体検査をする中で
疑わしいなって思うタイミングとしては
心拍数の増加(頻脈)が一番かもしれません。
もちろん、院内での興奮や緊張なんかで心拍数が上がることもありますが
多飲多尿や体重減少があったり、慢性的な嘔吐症状などがある猫さんの
心拍数が速い時には、甲状腺ホルモンを測定しようと獣医師が思うタイミングだと思います。
甲状腺機能亢進症になると
代謝を盛んにする働きがある甲状腺ホルモンの分泌が増えます。
その結果、エネルギーが生産され、体温も上がり、心臓の機能も高まり
ぱっと見では病気には見えないような、歳のわりにめちゃくちゃ元気だなあって感じの印象すら与えてくれることもあります。
しかし、体の中がそれほど活性化するということは身体にも負担がかかりますし
その結果として、早く老化して燃え尽きたように亡くなっていってしまうのがこの病気の本質です。
イメージは漫画ワンピースの中で、ギア2を編み出した当初のルフィみたいな感じです。
敵から『寿命を縮めているんだぞ!?』と指摘されておりましたが
無理矢理身体に負担をかけて身体能力を上げているわけですから
そりゃその通りかもしれません。
無理矢理に身体全体が活動し続けられてしまう
そんなイメージの病気です。
実際に、甲状腺機能亢進症の猫さんは
二次的な心筋肥大を引き起こすこともあり、心筋症の様な状態になることもありますし
肝臓に負担がかかるので血液検査上で、肝臓の数値が上昇することも多いです。
また、血圧も高くなりますので、腎臓など他の臓器への負担もかかります。
本当に身体全体で色々な影響が出てきます。
なのでやっぱり過剰な甲状腺ホルモンは抑えてあげなければなりません。
猫さんの甲状腺機能亢進症の治療方法は
大きく内科療法と外科療法に分かれます。
多くの場合、薬で甲状腺ホルモンを抑えてあげる内科療法を選択する場合が多いですが
最近では、一部の病院さんを中心に
甲状腺摘出術を実施している報告も増えているように思います。
当院では甲状腺摘出の手術は行っておりませんので
基本的には内服薬での治療を実施しております。
投薬がスタートすると基本的には一生涯続けていく形になりますが
猫さんに投薬を行うということの大変さもあるかとは思います。
その点は動物病院スタッフまで相談していただければと思います。
ざっくりとこんな感じで猫さんの甲状腺機能亢進症について書きましたが
細かいモニタリングの方法だったり
検査の頻度だったり、慢性腎臓病と併発している場合だったり
詳細な部分は省いております。
もし、猫さんの甲状腺機能亢進症を含め
何かしらの慢性疾患でお悩みの方は
ぜひ、みなとまちアニマルクリニックまでご相談ください。
それでは、これにて老猫さんの病気シリーズは一旦終わります。