レムデシビルとモルヌピラビルによる猫さんのFIP治療
先月参加させていていただいた獣医内科学アカデミー。
そこで、オーストラリアの先生の講演がありました。
イギリス圏のオーストラリアでは
人間の新型コロナウイルスの治療を
猫さんのFIP(猫伝染性腹膜炎)の治療へといち早く導入し
大きな成果をあげています。
猫さんのご家族様の中にはご存知の方も多いかもしれません。
猫さんのFIPは新型コロナウイルス感染症が流行し始めた頃ぐらいまでは、致死的な感染症でありました。
当院でも悔しい思いをしたことは何度もあります。
あの時は助けてあげられなくて本当にごめんなさい。
人間の新型コロナウイルス感染症の治療戦略が確立されるにあたり
猫さんのコロナウイルスが原因となるFIPの治療へも応用されていきました。
新型コロナの流行の恩恵を最も受けたのはもしかしたら猫さんかもしれません。
それぐらい大きな治療変革でありました。
レムデシビルやGS製剤やモルヌピラビルがFIPに有効であるという事実は
少し前から存じておりましたが
中には有効でない症例がいたりすることや薬用量や副作用などの詳細がまだわからないことから
当院では手が出せないでおりました。
そんな中
少しずつ猫さんのFIPへの治療成績のデータが蓄積され
先月の学会で色々と詳しいお話を聞くことができました。
で、色々と検討した結果
遅くなりましたが
レムデシビルやモルヌピラビルなどの抗ウイルス薬を使用したFIPの治療を始めることになりました。
すぐさま輸入の手続きをとって
今日さっき、やっとお薬が手元に届きました。
緊急性のある投薬ができないようなFIPの猫さんには
3日から5日、入院下でのレムデシビルによる治療を。
投薬が可能な子にはモルヌピラビルによる治療をしていきたいと思います。
本当は、イギリスから経口のGS製剤も輸入して備えておくべきなのかもしれませんが
現時点での日本の薬剤輸入事情などを考慮すると
なかなか現実的でない部分もありますので
今回はそういう形を取ることとしました。
今後、薬剤事情などの変化に伴って
また治療方針は変わるかもしれませんが
目下のところはレムデシビルとモルヌピラビルの二本立てで備えようと思います。
どうにか助けたかったのに助けられなかった子たちのために
僕らができることは何かに挑戦し続けるしかないのかなって思います。
今日助けられなかった猫さんはFIPとは関係のない子ですが
本当にどうにかしたい思いでいっぱいでした。
それでも助けられなかったのは
完全に僕の力不足で
ご家族様にも申し訳ない気持ちしかありません。
その猫さんとご家族のために
せめて僕ができることは
助けられなかった悔しさを次の猫さんのための治療の糧として
繋いでいくぐらいなんでしょうか。
そうやって簡単に切り替えられれば楽なんでしょうが
なかなかそうはいきませんね。
それでは。