老猫さんに多い病気 その2
その1で述べたように
高齢の猫さんに多い病気としては
慢性腎臓病、リンパ腫、甲状腺機能亢進症なんかが挙げられます。
その1で慢性腎臓病の治療や予防についてざっくり書いたので
今回はリンパ腫についてでも。
リンパ腫は猫さんに高頻度に発生する主要であり
臨床現場では頻繁に遭遇する悪性腫瘍です。
リンパ腫と一括りに表現するのには無理があるくらい非常に多様な病態を示す疾患ではありまして
猫さんの場合、本当に色々な臓器から発生する悪性腫瘍です。
以前、猫白血病ウイルス陽性の猫さんが多かった時代に
リンパ腫の中で最も多い解剖学的分類は
縦隔型と言って
胸の中にできるタイプでありましたが
現代では、消化管に発生する胃腸管型のリンパ腫が最も多く
それに次いで、鼻腔型が頻繁に認められ
その他、腎臓、縦隔、節性、中枢神経、気管など
本当に様々な臓器を起源とするリンパ腫がまあまあな頻度で発生します。
節性リンパ腫というのは文字通り病変が主にリンパ節から発生するという意味なのですが
犬さんだと最もよく遭遇する多中心型リンパ腫のように体表リンパ節の腫大から始まるような
そういった節性リンパ腫は
猫さんの場合、犬さんと比べて数が圧倒的少ないんです。
不思議ですよね。
その1で述べた慢性腎臓病とは違って
標的となる臓器が多様でありますので
早期発見というのもかなり難しくなるとは思います。
実際は、食欲不振や体重減少、慢性的な嘔吐や下痢なんかが最初の症状として認められ
それで色々と検査をしてみたらリンパ腫が疑わしいってなる場合が多いように思います。
当院の場合ですと
1、2ヶ月前から調子が悪くて他の動物病院に通ったけど全然良くならないっていう
セカンドオピニオンでいらっしゃった猫さんの多くが
何かしらのリンパ腫が多いように感じていますので
やっぱり高齢の猫さんに多い疾患の代表格なのだと思います。
色々と検査をしてリンパ腫が疑わしいなってなったら
疑われる臓器に針を刺して細胞診の検査を実施し
リンパ腫が疑われるような所見が得られれば確定となりますし
難しい場合は、内視鏡や外科的に組織を採取して病理検査を実施し確定診断を得ます。
こんな感じで診断をつけていくわけですが
リンパ腫を早期発見しようってなると
定期的に健康診断なんかで全身を調べるしかないのかもしれません。
ただし、症状が出ていないリンパ腫を見つけることはかなり難しいように思います。
そんな中で自宅でできる早期発見のツールとしてオススメは、体重を測定することです。
定期的に体重測定を自宅で実施することで
『食欲はあるのに最近体重が落ちてきたなあー』っていうことに気づくことが多いです。
後に出てくる甲状腺機能亢進症の話でもそうですが
体重が落ちてくるのって何か病気のサインであることが多いんですよね。
逆に、体重減少を認めない場合は、深刻じゃないケースが多いように感じます。
もちろん絶対ではありませんが。
最近は、猫さんの活動量計であったり
猫さんのトイレが体重計になっているタイプでスマホと連動してくれるアプリがあったり
色々と猫さんの健康管理系のデバイスが増えてきていると思います。
そういうのを駆使することが、リンパ腫に限らず
病気の早期発見につながるのだと思います。
で、いざ猫さんのリンパ腫と診断がつきました。
次は治療ですよね。
リンパ腫は血液系の腫瘍になりますので
基本的には化学療法(いわゆる抗がん剤)が適応となる悪性腫瘍です。
一部例外としては
消化管に孤立病変を作った場合は
外科的な摘出により予後が良いんじゃないか?みたいな話が出てきていたり
鼻のリンパ腫の場合には放射線治療を実施したり
そういうケースもありますが、基本は抗がん剤が適応になる疾患です。
抗がん剤と表現すると
どうしても医療ドラマに出てくる負のイメージがつきまとうので
そこまでやりたくないよーという方もいらっしゃるのだとは思います。
ただ、抗がん剤による副作用はある程度対策を打つことは可能になりますし
実際には、抗がん剤治療を受けた患者様の方が、受けなかった患者様よりも
治療に対する印象が良いように僕は思います。
もし、リンパ腫の抗がん剤治療に対してのご相談などあれば
いつでもご気軽にご来院ください。
リンパ腫に対する抗がん剤としては
CHOP療法やCOP療法と呼ばれるような多剤併用療法がメインの治療でありましたが
ここ数年で
猫さんのシクロホスファミドの用量が見直されてきたり
ニムスチンという薬剤の猫さんの薬用量が決まりつつあったり
少しずつですが進化しているようにも感じます。
それでもなかなか完治というのは難しいのがリンパ腫という疾患ですが
少しでも猫さんが快適に過ごせる時間を長くするためには
やっぱり病気の早期発見や適切な治療介入が必要なのだと思います。
そのためには、ご自宅で普段から猫さんを良く観察しておいていただくことと
何かおかしいなって思ったらすぐに動物病院を受診するのが良いのかなと思います。
それでは、今回のお話はここまでで
次は猫さんの甲状腺機能亢進症について書こうかと思います。