老猫さんに多い病気 その1
『高齢の猫さんが罹りやすい病気にはどんなものがあるのか?
その予防方法や治療方法が知りたい』というお声が多いみたいなので
今日のブログのテーマは
高齢の猫さんによく見られる疾患について書いていきたいと思います。
老猫さんによく認められる疾患といえば
慢性腎臓病、リンパ腫、甲状腺機能亢進症なんかが挙げられると思います。
乳腺がんなどを挙げられる方もいらっしゃるかもしれませんが
最近は避妊手術をされている猫さんがほとんどだと思いますので
乳腺がんを診察する機会はかなり減ったように思います。
なので、ここからは慢性腎臓病、リンパ腫、甲状腺機能亢進症の三つについて書いていきます。
猫さんのご家族様が
猫さんのなりやすい病気として一番認識されているんじゃないか、というのが腎臓病ですよね。
確かに、慢性腎臓病は多くの猫さんが将来的に罹患する可能性の高い疾患だと思います。
程度の差はあれど、高齢の猫さんで健康診断などをすると慢性腎臓病が見つかることは少なくありません。
猫さんの死因のトップ3にも入ってますし
猫さんのご家族にとっては、気にしておかないといけない疾患だと思います。
猫さんの慢性腎臓病については
ここのブログでも何度も取り上げているので
ずっと読まれている方は、しつこいなあと感じるかもしれませんが
今日初めてここを訪れる方もいらっしゃるのでご容赦ください。
慢性腎臓病というものは
人間の医学領域でもそうですが
根本的に治療する薬や治療法なんかが存在しません。
慢性腎臓病が見つかった猫さんに関しては
いかに進行を抑えていくか、進行スピードをゆっくりにさせるための管理ができるかが勝負になります。
具体的には
脱水にならないように普段から水分摂取を心がけたりですとか
(間違っても定期的な皮下点滴とかが治療になるわけではないことにご注意ください。)
血圧測定の結果、高血圧であれば血圧を下げるようなお薬を服用します。
尿検査の結果、尿蛋白が有意に出現しているのであれば尿蛋白を抑制するお薬を服用します。
また、腎臓病が原因で貧血になる腎性貧血があれば造血ホルモン製剤を使用します。
FGF23という検査項目が高い値を示している場合は、腎臓病療法食の開始を検討します。
上記の治療対象となるような異常を何も認めない慢性腎臓病の初期の猫さんについては
3ヶ月から半年に一度の定期的な血液検査や尿検査、血圧測定をしながら
異常が出てきたタイミングで治療介入を検討しますし
すでに何かしらの内服や食事を始めた猫さんについては
その治療が上手くいっているかのモニタリングを
1ヶ月から3ヶ月毎ぐらいに血液検査、尿検査、血圧測定などを実施しながら確認していきます。
そうやって可能な限り進行をゆっくりにして寿命を全うさせてあげることを目標にする感じでしょうか。
細かくモニタリングしようとすると
診察内容自体はまあまあ煩雑になりますので
検査をせずに薬を処方されていたり、腎臓病療法食を処方されている動物病院さんはかなり多いですが
不適切な治療は、逆に慢性腎臓病を悪化させるリスクもありますのでご注意ください。
僕自身、4月からは獣医腎泌尿器学会の認定医を名乗ることができる予定なので
腎臓病でお悩みの猫さんは宜しければご相談ください。
上記のように慢性腎臓病は一度罹患すると完治することはありません。
基本的には病気の進行を緩慢にする治療を実施する形になります。
それなら、できるだけ早く発見したいですよね。
腎臓に悪い薬を極力使用しない、腎毒性のあるような中毒物質に注意する、脱水にさせないこと、などは
慢性腎臓病の予防として挙げられるのかもしれませんが
多くは自然発生的に慢性腎臓病が起こると考えられておりますので
直接的に慢性腎臓病を予防するのは不可能だと思います。
それならば、早期発見するということも、一つの予防策だと僕は考えています。
通常、尿量や飲水量が増えてきたり、尿の色が薄くなってきたり
尿蛋白が出現したり、血液検査で腎臓の数値が高かったり
画像診断で腎臓の構造がおかしかったり
そういう場合に、慢性腎臓病は発見されるケースが多いです。
なので、家でできることとしては
定期的な尿の観察なり、飲水量の測定なり、体重測定とかでしょうか。
動物病院でするとすれば
血液検査、尿検査、腹部超音波検査やレントゲン検査などを含めた健康診断が
早期発見のポイントになると思います。
健康診断と言っても
どのくらいの頻度で検査をすれば良いのか?問題が発生してしまうのですが
これも非常に難しくてですね。
以前は年に一回は・・・って感じで述べられることが多かった印象ですが
最近では、高齢猫さんだと4ヶ月に一度もしくは半年に一度を推奨する獣医師も増えている印象です。
こう書くと
いくつから高齢としますか?問題も発生するのですが
正直答えはわかりません。
猫さんも8歳ぐらいを超えると何かしらの病気が増えてくる印象ですし
10歳や12歳を超えた時に検査をさせてもらうと
何かしらの異常を発見できるケースは多いと思います。
じゃあ、10歳超えたら半年に一回検査をし続けなければいけないの?ってなるわけですが
いや、まあそれは費用のかかることでもありますし
ご家庭の事情に合わせていただいて良いのかなと思います。
ただ、最近は高齢の猫さんで(犬さんもそうですが)
半年に一回以上の全身の細かな検査を希望される患者様は増えてきている印象です。
半年に一回と表現するとすごく頻繁な気もしますが
人間に換算すると2年に一回人間ドックを受ける、みたいなわけですから
そうでもないのかもしれません。
難しいですね。。。
本当は慢性腎臓病だけじゃなくて
リンパ腫と甲状腺機能亢進症についても同じ記事の中で書きたかったのですが
すでにここまでで2300文字を超えています。
流石にもう読むのが面倒くさくなってきたと思いますので
リンパ腫・甲状腺機能亢進症については次回以降に回します。
すみません。
それでは、今回のブログはこの辺で失礼いたします。