猫さんのフィラリア症
新しく猫さんのフィラリア・ノミ・マダニ予防のためのお薬が
発売されることを記念したセミナーが先日ありました。
テーマは猫さんのフィラリア症ってあるの?的なものです。
元々、フィラリア症というものは
犬糸状虫症という名前の通り
わんちゃんがメインとなる感染症です。
なので、家にわんちゃんがいらっしゃるご家庭は
皆様、フィラリア症の予防をされている方が多いと思います。
ただ、猫さんにもこのフィラリア症は感染します。
アメリカの調査報告や日本国内での報告でも
実は結構な数の猫さんがフィラリアに暴露されているんじゃないかと言われています。
それらの調査では
フィラリアの抗体を保有している猫さんが10数%いること。
抗体検査の偽陰性がその2倍ぐらいはいることなどを考慮すると
フィラリアに暴露されている猫さんは61-90%程じゃないかと言われています。
しかも、猫さんのフィラリア症は犬さんとは別の様相を呈しまして
犬さんのフィラリア症は循環器疾患というイメージですが
猫さんのフィラリア症は呼吸器症状がメインになります。
それに加えて、診断するための検査方法が限られており
フィラリア症と診断すること自体が結構難しいこともわんちゃんとは違うところです。
また
フィラリアの虫が成虫になる前から症状を示したりする点は大きく異なりますし
成虫まで成長したフィラリア症が死滅することにより
逆に症状が悪化する可能性があるので
犬さんのフィラリア症みたいにフィラリアの駆虫というものが治療になるのではなく
基本的には、症状に対する緩和療法がメインになります。
何が言いたいのかというと
フィラリア症に感染して、症状を呈すると
かなり厄介で重篤な状態になってしまう可能性があります。
突然死のリスクも結構高いですしね。
結局は、予防が大事って話です。
まあ、予防薬のセミナーなので結論は当たり前かもしれませんが
犬さんのフィラリア症と同様に
猫さんもフィラリア症の予防を実施しましょう、というお話でした。
最近では、猫さんも通年予防が推奨されてきているみたいな話もありました。
当院のスタンスとしては
今現状、猫さんのご家族様の判断に完全に委ねている状態ではありますが
フィラリア予防をされるご家庭は確実に増えてきている印象です。
本当は動物病院としてもっと推奨すべきだったりするんですかね。。。
わんちゃんのフィラリア予防も通年予防を推奨している病院さんも増えてきておりますし
世の流れとしてはそっちなのかもしれません。
ただ
僕自身、以前はそれなりにフィラリア症感染が多い地域で仕事をしていたのですが
静岡に来てほぼ検出する機会がなくなったので
正直、今の時点で予防できているんだったら
わざわざ通年にしなくてもいいのでは?とか思うわけですが
確かに冬でも暖かい日はありますし
蚊を見かける地域もあるみたいなので
冬も予防薬を飲みましょうという意見もわからなくはないです。
『フィラリア予防薬は冬の間も飲んだ方がいいですか?』という問いに対して
どっちでも良いですよ、とか答えるのって獣医師としてどうかとは思いますが
でも、実際本当に1月から3月の間の投薬中止だけでフィラリアに罹るのかって考えると
うーん、どうなんでしょう?って思うんですね。
なので、やっぱり現状は冬も予防したい人だけしてもらう
というスタンスになってしまっているように思います。
それでも
『猫さんのフィラリア予防はした方が良いですか?』という問いに対しては
今回のセミナーを聴く限りでは
やらないよりはやった方が良いですね、って感じなのかなと思います。
なんだかすごく曖昧ですが
強く推奨するのも商売っ気のある感じがして
少し気が引けると言いますか
お金もかかることですし
そこまでうちの病院は強く出れないんですよね。
そういうとこが弱いところな気がします。
動物病院をやるのって難しいですね。
今日はこのくらいで失礼します。