猫の慢性腎臓病の診断と管理2023
2023年の最後の日に聴いたセミナーは
猫さんの消化器の画像診断についてのものだったのですが
その一つ前のセミナーがタイトルのセミナーだったので
もう2024年になったわけでありますが
タイトルは去年のになっています。
去年のものですが、情報は比較的新しい方かと思います。
ここのブログでは猫さんの慢性腎臓病に触れる機会は多いので
過去の記事を検索していただくと、それなりに情報は出てくるとは思いますが
そんな中でも、今までに触れていなかったであろう話題についてだけ
今回は書こうかと。
一つは腎性貧血の治療選択肢の一つであるHIF-PH阻害薬です。
○○デュスタットという名前のお薬がそれに該当しまして
ヒトの医学領域ではいくつか薬剤が使用されております。
動物医療においても、アメリカの方では
モリデュスタットが猫さんの慢性腎臓病で認可を取っておりまして
Varenzin-CA1という名前で使用されております。
まだ発売されてから時間がそれほど経っていないので
データがそこまで蓄積されているわけではないみたいですが
今回のセミナーでは
治療効果や有害事象についての話であったり
現行の治療として存在しているエリスロポエチン製剤との比較などの
お話がありました。
現状、すごい魔法の薬だよーみたいな感じではなくて
エリスロポエチン製剤とうまく使い分けていければいいなあって感じの立ち位置みたいです。
注射薬が良いか、経口薬が良いか、であったり
対象となる猫さんによって使い分けていく感じかと思います。
ただ、人間の方では腎性貧血以外の貧血の治療としての可能性も
一部では言われているみたいなので
そこら辺はもしかしたら今後違うお話が出てくるかもしれません。
二つ目の話題としては
そこまで新しいわけではないですが
食欲増進剤についてですね。
すでにミルタザピンという薬剤に関しては以前にも述べたように思いますし
耳に塗ることのできる軟膏として、当院でも結構使用しております。
慢性腎臓病の猫さんだけでなく
悪性腫瘍を抱えた猫さんなどの食欲増進のためにも使用したりしています。
今回のセミナーで出てきたのは
カプロモレリンというグレリン受容体作動薬に分類される薬剤です。
ミルタザピンと作用機序が違いますし
成長ホルモンの産生を促すことで、筋肉量を増やしてくれるのではないか?
ということが期待されるお薬なんですね。
体重減少が負のリスク因子となる慢性腎臓病の管理としては
理論上は理想的な食欲増進剤なのかもしれません。
わんちゃん用ではエンタイスというお薬が先に出ておりまして
それは何回か使用経験があるのですが
そこまでの効果を実感できなかったため
猫さん用のエルーラという薬剤は当院には今置いてない状況でありました。
今回のセミナーのお話では
エンタイスよりも嗜好性が上がっているみたいなので
試してみるのもありかなと思った次第です。
ただ、猫さんに投薬ってやっぱりハードルがそれなりに高いんですよね。
その点、ミルタザピンは耳に塗ることで効果を発揮してくれるので
とても使いやすいように感じています。
モリデュスタット同様に、これも猫さんによって使い分ける感じですかね。
比較的新しめな情報としてはこの二つぐらいかなと思います。
あとは、皮下点滴への注意喚起的なのが結構強めに述べられておりました。
ここ数年でかなり声高に叫ばれるようになってきたような印象を受けますが
『皮下補液で慢性腎臓病は治らない』と
今回のセミナーのスライドのタイトルにもなっておりました。
過剰な補液による過水和の問題や高血圧の悪化の可能性にも言及されておりましたし
点滴で腎数値を下げることは腎臓病を治してるというわけではないんだよ
週に一回の皮下点滴をルーチンに行うというような治療は
現状の慢性腎臓病の治療方法としては推奨されない、というお話でした。
こういうセミナーを多くの動物病院で聴いてもらえれば
健康診断で腎臓の数値が高いと言われて
定期的な点滴が必要と言われたんですけど・・・的な相談件数は減るように思うんですが
残念ながら、そういう世の動物病院の流れを変える力など僕にはないわけで
せいぜいこんなブログでこうやって書いていくぐらいしかできないんです。すみません。
患者さん向けのセミナーとかを
腎臓病や内科専門の獣医さんが開催してくれたりすれば
患者側の知識も増えて、少しは流れが変わるのかもしれませんが
動物病院の獣医さんに言われるがままの治療を
受けざるを得ないような状態が現状なんだと思います。
もうちょっと患者様側の立場が強くなっても良いような気もするんですが
そこら辺をどうにか変えられないもんですかね。
難しい問題でありますが、とりあえず僕はブログを書き続けようと思います。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。
いつもありがとうございます。本当に大山先生の仰るような状況です…
シニア期、待ったなしなので、色々検索をして、こちらのブログに辿り着きました。あるお薬を中止し、点滴も間隔を空けました。別犬の様にお散歩で走るようになり、食欲も戻ってきました。大変お忙しい中、貴重なお時間を使って情報発信をして頂きまして、心から感謝致します。
>とっこ様
コメント頂きありがとうございます!
ただの自己満足みたいな感じのブログではありますが
実際に読んでいただいて、そのような感想を持っていただけて嬉しい限りです。
僕の方こそ感謝しかありません。。
これからもしょうもない内容が多いかもしれませんが
1人でも多くの方に読んでいただけるようにブログを続けていきたいと思います。