皮下点滴に含まれる塩分量
『血液検査で腎臓の数値が高いと言われ
それ以降、定期的に皮下点滴をするように言われました。
でも、皮下点滴には塩分が結構入っているって聞いて
塩分を定期的に入れることって腎臓に対して悪影響はないのでしょうか?』
というご質問を受けました。
ので、今日はこれについて考察していこうかと思います。
(*あくまでも個人の考察なので間違いもあるかと思いますので
参考程度にお願いいたします。間違ってたらご指摘ください。)
皮下点滴として使用される輸液剤は多くは乳酸リンゲル液だと思います。
あとは、生理食塩水や酢酸リンゲル液などを用いる感じでしょうか。
とりあえず今回は、最も一般的かと思われる乳酸リンゲル液で考えていきたいと思います。
乳酸リンゲル液250ml中に含まれる塩化ナトリウム(NaCl)の量は1.5gと記載されています。
例えば、100mlの乳酸リンゲル液を皮下点滴するとすれば
塩化ナトリウム0.6g投与することになります。
これをナトリウムに換算すると、236.2mgのナトリウムを投与していることになります。
このナトリウム量って多いの?少ないの?ってなるかと思いますので
フードに含まれるナトリウム量を見ていきたいと思います。
ヒルズさんのサイエンスダイエットの11歳以上の高齢猫さん用のフードを例にいきます。
このフードに含まれるナトリウムは0.34%と記載されております。
3kgの猫さんのこのフードの推奨給与量は45gだそうなので
単純に考えると
3kgの猫さんの食事中に含まれるナトリウム量は153mgになると思います。
3kgの猫さんが慢性腎臓病と診断されて皮下点滴されている量を
他の動物病院さんがどのように計算しているのかは分かりませんが
大体聞くことが多いのは100ml以上な気がしますので、今回は100mlで考えています。
食事に含まれるナトリウム量が153mgで
皮下点滴に含まれるナトリウム量が236.2mgということになるわけですが
これを皆様はどう捉えますでしょうか。
食事中に含まれるナトリウム量の1.5倍の量を点滴で入れるわけなので
結構多い気がしますよね。
皮下点滴を行う目的は獣医さんによってやや異なるのかもしれませんが
一番は、脱水の補正とか予防とかなんじゃないかなと思います。
なので、基本的には水分のことを考えて点滴しているわけですので
あまり塩分のことを考えて点滴する先生は少ないと思うんですね。
ただ、過剰な塩分投与は高血圧のリスクにもなると思いますし
ナトリウム摂取量の増加は尿中へのカルシウム排泄量を増加させるので
シュウ酸カルシウム結石などの尿路結石のリスクを上げる可能性もあります。
なので、皮下点滴は必要な子にだけ最低限の量を入れてあげるのが良いのではないかと考えます。
自分自身で食事も取れて、水分も摂取できている状況下で
腎臓の数値が高いという理由だけで皮下点滴を毎日のように続けるのは
逆に腎臓病を悪化させてしまうリスクすらあると思います。
数ヶ月単位とか年単位で二日に一回とかの皮下点滴を続けている猫さんの
血液検査とかをさせて頂くと
高ナトリウム血症になっている子が多い印象があるのですが
元々少し高めな子なのか、点滴によって高くなっているのか分かりませんが
自分も気をつけて点滴しないといけないなあとは思います。
脱水の評価ってすごく難しいので
実際に点滴が必要かどうかの判断って厳密には物凄く難しいと思うのですが
それらの評価方法がもっとアップデートされれば
そういった医原性の病態悪化などは避けていくことができるのかなと思います。
何か良きツールでもできればいいですね。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。