猫さんの高血圧と血圧測定
先日、痙攣発作を主訴に来院されました。
食欲や元気も落ちているということでした。
色々と検査をさせていただいた結果
痙攣発作の原因は高血圧によるものと診断しました。
その時、院内で血圧測定をした時の数値は
収縮期血圧(いわゆる上の血圧)が195から200とかなり高い状態でした。
甲状腺機能亢進症などの基礎疾患による高血圧は否定的でしたので
降圧剤としてアムロジピンというお薬をスタートすることになりました。
で、そこから数日して元気になり
痙攣発作を一度も起こすことなく
食欲も出てきて、体重も増加していきました。
今日再び血圧を測定したわけですが
収縮期血圧は160前後ぐらいまで良好に下がってくれておりました。
血圧の測定は
人間の病院だとかなり頻繁に行われる検査項目でありますが
動物病院においては
血液検査やレントゲン検査・超音波検査ほどは実施されていないように感じます。
腎臓病と診断されました、とセカンドオピニオンで来院される患者様の中で
尿検査なんて今まで一度もやったことはないです、とおっしゃる方の割合はすごく多いのですが
それよりも、血圧測定をされたことは一度もないという方の方が多いように思います。
慢性腎臓病についてお詳しい方はご存知だと思いますが
わんちゃんでも猫さんでも
慢性腎臓病のステージ分類におけるサブステージの項目に
収縮期血圧というものが存在します。
これは慢性腎臓病において高血圧があるかないかによって
予後が変わる可能性があるからだと思いますし
高血圧が存在する場合は、治療が推奨されているからだと思います。
犬猫さんの健康診断における血圧測定は
検査項目としてやり過ぎだ、みたいなお話があったので
現在、全く健康な子には血圧測定は実施していないのですが
循環器疾患や慢性腎臓病など高血圧が病態に大きく影響する疾患や
高血圧を引き起こすような疾患の際には
可能な限り血圧測定の実施を基本的には試みております。
先日、高血圧だった猫さんは原発性アルドステロン症でありました。
ただし、そこはあくまでも動物なので
血圧測定をめちゃくちゃ嫌がってしまったり
逆に病院が楽し過ぎて興奮してじっとできなかったり
緊張のし過ぎで震えが止まらなかったり
そういう子は正直測定が難しい場合も少なくありません。
人間の医療で言われる白衣高血圧みたいな感じで
動物も病院の方が血圧が高くなる傾向にありますし
理想は自宅のような安心できる環境下で
血圧測定を実施できるのが良いのでしょうね。
何にしても
測定が可能な犬猫さんに関しては
血圧は、多くの病態に関係してくる要素の一つではあるので
動物医療においても、もっと一般的な検査項目になってくれると良いですよね。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。
こんにちは。犬の血圧測定について教えてください。
以前かかりつけの病院で血圧のことをお聞きしてみたところ、うちの犬の場合は緊張がはげしいので多分正しく計れず最高値がでてしまいそうなので、病院で計っても意味がないかもしれませんとのことでした。
自宅用の機器も市販されてはいるようですが、素人が計っても正しくできないように思います。
病院での血圧測定ができなくても目の状態とか何か判断できる方法はあるものでしょうか…?
あおき様
いつもご質問ありがとうございます。
確かにわんちゃんの性格や緊張のせいで測定が難しい場合もありますが
病院での数値が高く出てしまうとはいえ、その数値が高血圧の基準を下回るようであれば問題なしという判断もできるかとは思います。
あとは、施設によって色々な血圧測定時の工夫もされているので、一概に絶対に無理とは決めつけない方が良いかもしれません。
確かに高血圧の際に、標的臓器と呼ばれるような部位に症状が出てくることはありますし
それを高血圧を疑う根拠にはできます。
心臓なら心筋が厚くなりますし、目なら網膜剥離を引き起こしたりします。
腎臓なら蛋白尿などが増えるかもしれません。
ただし、例えば網膜剥離があるから絶対に高血圧だね、とはならないと思いますので
あくまで高血圧があるであろう状況証拠を集めに行くような感じになると思います。
いざ治療をするとなった場合においても、血圧の数値がわからないと治療目標も定めにくいと思いますので
やはり一番は血圧を測定することが重要だと考えいています。
いつも丁寧なご説明、大変勉強になります。
とてもよく分かりました。
お忙しいところありがとうございます。