猫さんの歯周病と慢性腎臓病
2016年の報告で
猫さんの慢性腎臓病のリスク因子ってなんぞや?
みたいなのを網羅的に調べた研究があります。
その中でも出てくるのは
猫さんの歯科疾患ですね。
歯周病の程度が悪くなればなるほど
慢性腎臓病を発症するまでの時間が短いという報告もあります。
確かに、18歳なのに腎臓の数値は全然高くないですねっていう猫さんの
お口の中の状態は結構キレイだったり
逆に、10歳とか12歳とか比較的若くして
腎臓の数値が高くなってきている子の中には
歯周病の程度がかなりひどい子の割合もそれなりにいるようにも思います。
もちろん慢性腎臓病になる原因は歯周病だけではないので
一概に歯が悪いから慢性腎臓病の発症が早かったとは言えません。
ですが、慢性腎臓病のリスクの一つとしては考えても良いと思いますし
いざ慢性腎臓病の猫さんが目の前にいた時に
その子に歯周病があるかないかで予後が変わってくるようにも思います。
口が痛くてご飯を食べられないと
慢性腎臓病の管理にも影響は出ちゃいますからね。
口は痛くないことに越したことはありません。
慢性腎臓病の管理として、歯周病の治療までやらないといけなくなってしまいます。
で、歯周病の治療って何?ってなった時に
基本的には全身麻酔下での歯科処置が推奨されているわけで
慢性腎臓病があるのに全身麻酔下で手術しないといけないってなってしまうわけです。
当院も病院としての特色上
腎臓病の猫さんの歯科処置を実施する機会は少なくありません。
歯周病の治療はその後の満足度が比較的高いですし
麻酔のリスクがそれなりにある子の麻酔はやり甲斐がとてもあるので
それ自体は良いのですが
やっぱりリスクなんていうものは負わなくて済むなら背負いたくはありません。
健康なうちに定期的に麻酔下でのスケーリングをしたり
普段から自宅にて歯磨きを始めとしたデンタルケアに取り組んだり
そういう予防的な歯科治療によって
歯周病の悪化というものを防いでもらうことが理想的なわけです。
なので皆様、猫さんの(犬さんももちろんですが)歯磨きを頑張りましょう。
それによって可能な限り歯周病の悪化を防ぎましょう。
もしもヨダレが増えてきたとか、最近食べこぼすことが多いとか
口を気にする仕草があるとか
そういう症状が出てきた場合は
一度病院まで診察を受けに来ていただく方が良いかもしれません。
歯科治療は猫さんの健康寿命を延ばすことにも間違いなく寄与してくれます。
みんなで頑張りましょう。
それでは今日はこの辺で失礼いたします。
口内炎や歯周病等歯科疾患の猫が多いのは猫エイズ等の免疫疾患、口内環境(清掃状況、アルカリ性)が背景にあると考えます。腎臓病で命を失う猫は多いですが、先日ク執事の動画で愛猫へのAIM投与でクレアチニンの数値が低下したグラフを見ました。将来AIM療法食/治療薬が開発されると猫の寿命が劇的に伸びる可能性を感じています。
>藤井様
コメントありがとうございます。
猫さんの口内炎と歯周病とは病態が異なる疾患なので、一概にこれが原因とは言い難いものでありますが
藤井様が挙げられているものも一因にはなっていると思われます。
残念ながらAIM蛋白は一部の急性腎障害の治療へ利用できる可能性は考えられているものの
慢性腎臓病に対する治療の選択肢としては期待できないのが現状です。
AIM含有のフードのような謳い文句で発売されている猫さんフードも慢性腎臓病に対する効果はないものと思われますので
一部では詐欺に近いのでは?とまで言われております。
猫さんが慢性腎臓病を克服できる日がいつか来ることを期待しますが、移植医療やAIMが現実的ではない現状を考えると当面難しいと思われます。
再生医療などの分野がもっと発展すれば、慢性腎臓病の克服も可能になるのかもしれません。
ご指摘の通りAIMは急性腎障害の治療の可能性の認識です。(それだけでも人や動物への改善効果が確認されればとても良い事と思います。)新薬AIMはこれから治験が始まるので腎臓病への効能は治験結果をふまえた論文で示されると思います。
私の父も87歳で老衰、死因は慢性腎不全で亡くなりました(寝たきりとなり最後は飲食不能になった)が、高齢の場合は病死というより寿命(体全体的に生きる力が無くなった)だったと感じています。
数年かかり病態が進む慢性腎臓病の克服は困難と考えますが、病気になるリスク軽減や症状が緩和される方法が開発される事を期待します。
急性というより「慢性化していない腎臓病」への治療の“可能性”の方が正確な表現だったと思います。
AIM新薬開発チーム及び製薬会社に於かれましては内部で検証の上製品化されても医師や患者は薬の効果に確信が持てない為、治験結果を英語で論文化し世界中に事実が周知される様お願い致します。貴方の活動には敬意を表します。
猫の慢性腎臓病は10-15年かかって進行する病気なので新薬AIMの長期ステージにおける治験は長い年月がかかりますが、開発元より一定の進行度(ステージ)における治験の効果は既に確認済との説明を伺っています。インタビュー記事では末期の慢性腎臓病の猫に投与し改善した猫の症例も紹介されてますが、個人的には臓器や体の組織へのダメージが長期間蓄積される慢性腎臓病への効果は治験結果を待ち慎重になされるべきと考えます。
血管内へのAIM投与により抗体である免疫グロブリンM(IgM)から分離されたAIMが猫においても機能すると考えますが、腎臓病の全ステージにおけるAIMの効果を否定し、「詐欺に近いとまで言われている」のなら、そう考える根拠を教えて頂けますでしょうか?
慢性腎臓病の末期ステージになってからではなく、初期ステージから新薬AIM投与により早期治療介入した場合も治療効果が期待できないと考えておられますでしょうか?
>藤井様
コメントありがとうございます。
初めに書いておきますが、AIM蛋白の全てを否定しているわけではございません。
AIM蛋白は急性腎障害の治療という観点からなら十分に可能性のあるものだと認識はしております。
今後治療薬として製剤化されれば、腎臓病に対する治療の選択肢として使用できる場面もあるかもしれないと考えてはいます。
ただ、当初、『腎臓病を治す薬』みたいな感じで取り上げられ
猫ちゃんが慢性腎臓病を克服できる日が来る、と過度な期待を消費者に抱かせたような印象があります。
その上で、きちんとした臨床試験を経て療法食としての位置付けでフードを発売するならまだしも
『腎臓の健康維持』というよくわからない立ち位置のフードやチュールが発売されました。
慢性腎臓病は藤井様がおっしゃるように数年単位で進行していく疾患です。
少なくとも3年から5年以上の経過を追って効果を確かめない限りは、本当に『腎臓に良い』かどうかはわからないと思います。
『詐欺に近い』という表現は、獣医師向けの学術雑誌に腎臓病を専門的に診療されている先生が書かれたものですが
療法食ですらないフードしか発売されていない現時点では、僕自身も似たような印象しか抱くことができません。
猫さんの飼い主様の中には、『このフードを食べれば腎臓病が良くなる』と藁にもすがる思いでこのフードを選んでおられる方もおります。
確かに、あれだけ『腎臓病を良くする未来の薬』みたいな取り上げられ方をしたので仕方がないのかもしれません。
ただ、食事療法は慢性腎臓病の治療として重要な役割を担う一つの治療方法ですので
AIM30のフードを選択することによって腎臓病療法食に切り替えることができておらず、慢性腎臓病の病態を進行させているケースを目にすることもございます。
その重要な治療法に取って代わろうとするのであれば、きちんとしたデータを示すべきなのかなと思います。
フードを作っているメーカーからすれば、療法食ではないとの説明をしているとは思いますので
消費者側がどう捉えるか?が問題なのかもしれませんが
愛猫が腎臓病と診断され、可能性のあるものなら何でもやりたいと考えるのはご家族様の意見として当然のように思います。
その想いに対して
数年単位でのきちんとしたデータのないフードをあたかも『腎臓病を治してくれるフード』のような感じで発売するのは
どうなんだろうなって単純に疑問に思うというだけです。
AIMの製剤化についても
『一定のステージにおける治験の効果はすでに確認済み』という説明自体がやや疑問を抱いています。
慢性腎臓病のどのステージのことを指しているのかはわかりませんが
1年や2年で治療薬としての評価ができるほど進行スピードが早くはないと思います。
何の治療を行わなくても一年以上全く進行しないこともよくある病態です。
本当に治療薬の効果があるのかどうかに関しては、慎重に評価していくべきだと思います。
2017年に猫さんの腎臓病治療薬としてベラプロストナトリウムが発売されましたが
当初はAIMと同様に腎臓病が治る!みたいにニュースでも取り上げられ、患者様にも過度な期待を抱かせたことがありました。
実際に、発売から5年以上経過してもガイドラインにすら記載されていないような状況です。
発売元は腎臓病を治すことはできないと明言されているのですが、どうしても世の中にはやや過大に伝わってしまう傾向にあるようです。
AIMが現時点でどのような薬剤になるのかはわかりませんが
適応症例を見極めれば、何かしらの腎臓病には活かせる可能性はあると思いますので
そこらへんのきちんとした情報を待ちたいと考えております。
御回答有難うございます。
貴職のご指摘はご尤もで現場で混乱を招かぬ様、治験データを開示し関係各所の影響を見ながら慎重に進めていくべきだと思います。
皆各々の立場で猫の為を思って頑張っているのですが、最初から全体最適を描き、コンセンサスを得るのは難しいと感じます。改善していく為には正確に事実やデータを開示し、問題やリスクを解決・回避し、協力して理想型を作り上げる姿勢が大事と考えます。
腎臓の病気で不調になったり亡くなる生き物(脊椎動物、ヒト)は多く、腎臓病に効果が有りそうな新薬に対する期待や報道が過大になるのは致し方ない所もあり、各方面からの様々なプレッシャーの中での開発と思考致します。受益者側は創造主から与えられた命という原点に立ち返り、冷静な対応を心がけたいと思います。