腎臓病に対するACE阻害薬の使用
ホームページの業者様との打ち合わせの際に
どういったキーワードを検索して
このホームページを訪れているか?というデータを見せていただきました。
中でも多かったのが
『犬 腎臓病』『猫 抗生物質』『腎臓 フォルテコール』『テルミサルタン 腎臓』とかでした。
循環器とか麻酔とかはあんまり流入経路になってないんかあ、と思うと少し悲しいですが
腎臓病自体だったり、腎臓病に対する薬剤だったり、抗生物質だったり
そういうことに興味のある方が多いのかな、というのを知れたのは良かったかなと思います。
というよりもそういう記事を書いているからなのかもしれませんね。
とはいえ、興味のある方が一定数おられるのは確かだと思うので
今日は検索の多かったものを取り上げて書きたいと思います。
ちょうど2週間前ぐらいに初めていらした猫さんが
以前の病院さんで腎臓病だと診断され
ACE阻害薬であるベナゼプリル(商品名フォルテコール)という薬をずっと飲んでいる
という状況に遭遇したので、それについてでも。
確かにフォルテコールの商品紹介のページを読んでもらうと
適応には猫さんの慢性腎臓病って書いてはあるんですが
実際の効果のところには
蛋白尿の漏出を抑制することで腎臓に保護的に働く的なことが書いてあります。
でも、この猫さんは尿検査をしたこともないそうで
蛋白尿が実際に存在するのかどうかは定かではないみたいなんです。
にも関わらず、ずっとACE阻害薬を飲んでいるという状況でありました。
この点には注意が必要で
ACE阻害薬は蛋白尿抑制だったり血圧を下げるためのお薬ではありますが
腎臓病の薬ではないわけですね。
別にBUNとかCreとかの数値を良くしてくれるとかそういう薬剤ではないわけなんです。
なので、血圧測定もしたことなければ尿検査もしたことのない犬・猫さんの
慢性腎臓病に対して使用すべき薬剤ではないと思います。
それに加えて
以前は蛋白尿の治療といえばべナゼプリルみたいなところもありましたが
今ではARB(動物薬だと猫さんのセミントラというお薬がそれに相当します)
という違う種類の薬剤の方のデータが増えてきており
ARBの方が蛋白尿抑制についても血圧降下に関しても
ACE阻害薬よりも良さそうなんですね。
なので、腎臓病の内科をされる獣医さんの間では
慢性腎臓病に対してACE阻害薬はほとんど使用されなくなってきている、と
先日のセミナーでも述べられておりました。
元々、持病として心疾患があるとか意外に
わざわざACE阻害薬を腎臓病に対する薬剤として選択するメリットがないのだと思います。
10年前ぐらいまでは主流として使用されていた薬剤なのに
新しいものに置き換わって使用されなくなるっていう事実は
なんだかすごいことのように感じますが
どんな分野でも色々と変わってきているんだろうなあと思うと
情報は常に更新しないとと改めて考えさせられます。
そんなわけで
今日は腎臓病に対するACE阻害薬の使用について書いてみました。
結論としては、慢性腎臓病単独なら使用する機会は
蛋白尿がある時ぐらいで
その場合でも他の薬剤の方が良いかもよという感じでいいんじゃないかなと思います。
それでは今日はこの辺で失礼します。