慢性腎臓病における代謝性アシドーシス
血液のpHが酸性に傾こうとする状態をアシドーシスと呼びますが
慢性腎臓病の際には、重炭酸イオンの再吸収や合成障害により
代謝性アシドーシスが起こるとされております。
ヒトにおいては代謝性アシドーシスは慢性腎臓病の進行と関連することが知られており
さらに、慢性的な代謝性アシドーシスは
筋肉量の減少や骨融解、心疾患の悪化などと関連するとされております。
しかし、犬さん・猫さんにおいては
代謝性アシドーシスと慢性腎臓病の進行との関連性や予後の評価は十分に評価されておりません。
そんな中、先日の学会の中の発表の一つで
犬さん・猫さんの慢性腎臓病の予後と代謝性アシドーシスの関連性を評価してみた
みたいな発表がありました。
結論、慢性腎臓病の症例の中で
代謝性アシドーシスを合併した症例の方が慢性腎臓病が進行する確率が高く
腎臓病の進行や死亡までの期間が有意に短いことがわかりました。
ということで、人間と同様に慢性腎臓病の進行と代謝性アシドーシスとは関係してそうで
もしかしたら代謝性アシドーシスの治療を試みることは
慢性腎臓病の内科的なコントロールに有用かもしれない、という考察でした。
じゃあ、慢性腎臓病の子には血液ガスを測定して
代謝性アシドーシスとしての基準を満たすのであれば治療をしたらいいじゃん、ってなるわけですが
この代謝性アシドーシスの治療に踏み切る基準みたいなものが現状ないんですね。
その点が非常に難しいところでして
これくらいの数値なら治療した方が良いよーみたいな基準があって
実際に治療してみて、このぐらいの数値を目標にしましょう、みたいな基準もあれば
病院にアルカリ化剤はありますし、今すぐにでも実践してみたいのですが。。。
どうしましょう、というのが目下の悩みです。
あとは、血液ガスを測定する費用なんかも個人的にはややネックなところで
どのくらいの間隔でモニタリングするかにもよりますが
細かく見ていくのであれば、毎回4000円とかかかるのはどうなのかなあ、と。
そのお金を出してまで予後を改善してくれるような
強烈なエビデンスが出てこれば話は変わるのですが。
難しいですね。。。はい。
昔の動物医療では
慢性腎臓病と診断されたら皮下点滴ですね、みたいな感じの風潮があって
その時は、皮下点滴を週に何回とかして、たまに血液検査とかして
そんな感じで段々と点滴の頻度が増えて・・・みたいな感じでした。
それでも年単位で生存できていた子がいたのは
おそらくその子にはそもそも皮下点滴が必要なかったからだと思うのです。
(*あくまでも個人的な見解ですよ。)
点滴の必要のない子に対して、週に何回か皮下点滴をして費用が発生するのと
1ヶ月とか3ヶ月毎とかにしっかり検査して慢性腎臓病の進行を予防していくのと
数年後の予後はどちらが良いですか?と聞かれたら
間違いなく後者です、と信じてはいるので僕はそっちを続けるわけですが
どっちがお金がかかるの?ってなったらそれも後者なのかな、と思うんですね。
心疾患とか内分泌疾患とか免疫系の疾患みたいに
比較的費用のかかる疾患たちと比較して
腎臓病ってそこまで医療費が嵩むイメージではなかったように思うわけですが
きちんとやろうとすると、どうしても費用がかかるんですね。
慢性疾患の管理とはそういうものなのかもしれませんが
動物病院側の心理としても中々難しいものがあるように感じます。
それでは、今日はこの辺で失礼します。