血液検査でマグネシウムを測ること。
あまりブログには書いておりませんが
現在、獣医内科学アカデミーのオンラインが開催中です。
時間がある時にちょこちょこと聞いては
使える知識をストックしていく作業を繰り返しております。
さっき聴いていた演題が
『低マグネシウム血症を是正したことにより良好にコントロールできた
難治性のタンパク喪失性腸症の一例』というもので
東京農工大学からの発表でした。
このテーマ
以前の勤務先でも複数の動物病院の先生が集まって行う勉強会の中で
何をやってもダメだった慢性腸症の子のマグネシウムを測ってみたら
すごい低マグネシウムが見つかって
マグネシウムを補ったらすごく良くなった、というお話を聴いておりました。
なので実際に重度のタンパク漏出性腸症の子で低マグネシウムがある子に
マグネシウムを補正した経験もございます。
残念ながらその子はすでに亡くなっておりますが
今も当院では重度の消化器症状を認める場合や
なかなかコントロールが難しい消化器疾患の子にはマグネシウムを測定するようにしております。
正直、血中のマグネシウム濃度を測定できるようにしている動物病院は
割合としてはかなり少ないと思います。
僕も数年前から
『もうすぐマグネシウムが脚光を浴びる時代が来るから!』と
仲の良い先生には話してみるものの
あまり真面目に取り合ってもらえず、半ば冗談だと思われております。
もっと普及したら良いのになあと思うのですが
マグネシウムを測れるようにしておくのも
病院としては在庫を抱えることになるわけなので
有用性や使用タイミングなどがわからなければ広まることはないんですよね。
こういう発表があると
測定する先生も増えるんじゃないかなあとか思うんです。
そういう意味では素晴らしい発表ですよね。
当院では主に次のようなタイミングで
血中マグネシウム濃度を測定しております。
・重度の消化器疾患
・急性腎障害や慢性腎臓病
・リフィーディング症候群に注意が必要な時
・糖尿病性ケトアシドーシスなどの糖尿病の急性期管理の時
主要なところとしては、このような感じです。
健康診断の血液検査項目としては測定しておりません。
うちの子、測定してないじゃない!って思われた方すみません。
ご希望であれば測定致しますが
健康な子で測定して、何かの疾患のスクリーニングとして使用できるのかどうかは
僕の勉強不足でわかりませんので、上手く活かせないかもしれないです。
なので、症状が無い方には基本的に測定しておりません。
ストルバイト結晶は正式名称がリン酸アンモニウムマグネシウムなので
血中のマグネシウム濃度が高ければストルバイト結晶を作りやすい、とかいうデータがあれば
健康診断で測ってみるのも良いのかもしれないですけどね。
それなら尿中のリンとかマグネシウム濃度を測定する方が合理的な気もします。
マグネシウムが下がる時、つまりは低マグネシウム血症に陥るタイミングは主に二つ
消化管から全然吸収できていない、か
腎臓から尿として出過ぎてしまっている、かです。
もちろん、マグネシウムを全然摂取できていない、みたいなこともあるのだとは思いますが
現実問題としてあまり鑑別診断にはそれは挙がってこないような気がします。
ですので、基本的には
消化器疾患と急性腎障害・慢性腎臓病の症例で測定しております。
先ほどの症例発表でもあったように
重度の消化器疾患でマグネシウムが低下してしまったら
補正したほうが良い場面というものは存在するみたいなので
ある程度重度の消化器疾患の症例では測定することがある感じです。
腎臓病における測定は
正直な話、半分趣味みたいな感じです。すみません。
腎臓病の場合、あまりマグネシウムが下がり過ぎるってことはないように感じています。
もちろん基準値より少し低いなあ、みたいな場面はよく見かけますが
補正しないといけないぐらい低いって感じにはならないように思います。
どちらかというと個人的な注目ポイントは、高マグネシウム血症の方で
AKI(急性)だろうとCKD(慢性)だろうと
マグネシウムがすごい高い子の予後はあまり良くないように感じています。
ここら辺をうまく言語化できれば良いのですが
今のところ、何となく悪そう・・・みたいな感じで考えております。
あとは、腎臓病の中でも
低カルシウム血症になる子もおりまして
そういう子の中の、難治性の低カルシウム血症の子では
マグネシウム測定が必要になることもあるので、そこでは有用ですね。
あまり日の目を見ることないマグネシウムですが
一応、当院では院内で測定することができるようにしております。
腎臓病の診断・治療に力を入れている動物病院とか公言するなら
個人的には測定できるようにしておくべきだと考えて導入しています。
もっと色々な場面で活かせそうな検査ではありますので
新しい情報がどんどん出てきてくれて
診療の幅がもっと広がると嬉しいですね。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。