猫の腫瘍別プロトコル解説集
最新のVETERINARY ONCOLOGYのタイトルです。
可愛らしい猫さんの絵が表紙になっておりますが
中に書いてある内容は色々とシビアな内容も書かれてあります。
その中に『血管肉腫・骨肉腫』の項目がありました。
血管肉腫はあまりよろしくない悪性腫瘍の一つですが
猫さんの血管肉腫は皮膚・肝臓・脾臓・小腸などのあらゆる場所にできる可能性があります。
転移率が比較的高いため、手術後に補助化学療法(術後の抗がん剤治療)が適応になる腫瘍の一つです。
犬さんは結構良く見かける腫瘍でありますが
猫さんは犬さんほど発生が多くないため、化学療法の効果や有害事象は十分に評価されておらず
実際の効果は不明なところも多いです。
本雑誌には少数の報告ですが記載がありまして
内臓血管肉腫の猫さん3例に対して
術後の補助化学療法としてドキソルビシンを投与したら
2例で100日以上生存が確認されました
という2007年の報告が引用されております。
それぐらい発生頻度が多くない&予後は良くない腫瘍なんだと思います。
昨年、ちょうどこの血管肉腫が脾臓にできてしまった猫さんの脾臓摘出手術をしました。
術後の病理検査結果で血管肉腫と診断したわけですが
ご家族と抗がん剤についてどうするか相談になりました。
犬さんと比較してあまりデータ数は多くはないということをご説明した上で
上記のドキソルビシンの投与を3週間に一回行うこととなりました。
投与期間中は比較的副作用などに悩まされることも少なく
結果、最大累積投与量まで投与を実施し
ドキソルビシンのプロトコルが終了した後も定期チェックを続けました。
2022年4月に手術をし、先月ご自宅で亡くなりました。
最終的には肝臓にも転移が認められ
体重減少は少しずつ進行していったものの
最後の最後まで食欲はほとんど落ちることもなく
いつも診察台の上ではきちんとシャー!と僕に怒りをぶつけてくれました。
この雑誌に書いてある生存期間の倍以上の期間
元気な姿を見せてくれたのは
ご家族が抗がん剤治療に対して積極的に考えてくださった結果だと思います。
最期の時、お母様曰く
猫さん自身は自分が亡くなるとは思ってなかったんじゃないかとおっしゃられておりました。
それぐらい自然に息を引き取った様子だったそうです。
最期の最後まで今までとほとんど同じぐらい普通に生活できるのであれば
抗がん剤治療をやって良かったなと思いますし
ちょうど本日他の子でお母様が来院された際にも
この子のことを少しお話をさせていただきました。
最期まで治療させていただいて、この子にもご家族にも僕はすごく感謝しています。
そんなことを考えながら昨日はこの雑誌を読んでおりました。
読みながらテンションが上がってくると、こうやってペンは回ります。
昨日は結構回りました。
今日は21時から輪読会ですが
この雑誌をテーマに、猫さんの抗がん剤治療について皆んなで深掘りしていく予定です。
完治はできないことの方が多い腫瘍科の診療ですが
少しでも動物とご家族のQOLを良好に保つことができるのであれば
抗がん剤治療というものは素晴らしい治療方法の一つなんじゃないかなと思うわけです。
世間一般的には、あんまり良いイメージの治療ではないかもしれないですが
そこのイメージを払拭できるかどうかは、抗がん剤の使い方にも大きく左右されるのだと思います。
抗がん剤をやって良かったと言っていただける機会を増やすためにも
しっかり勉強しようと思います。
それでは今日はこのへんで失礼いたします。