膵炎に対する食事療法
学術的なことに触れないと
さすがにそろそろ怒られそうなので、今日は真面目に病気のことについてでも書いていきます。
今月号のCLINIC NOTEより
『犬と猫の膵炎に対する食事療法』ついて抜粋して簡単に記載したいと思います。
興味のある方はぜひ読んでみてください。
膵炎の内科管理において重要な三つの項目として
①膵酵素の分泌を減少させることによる膵臓自己消化の抑制
②膵臓組織の適切な灌流維持や回復
③電解質及び酸塩基平衡の以上の是正
が挙げられますが、これらのうち
①の膵酵素の分泌を減少させるという点について、食事療法における注意点があります。
すごく簡単に書くと、もともと膵炎という病気は
膵臓の中にある消化酵素である膵酵素が暴れまくって、膵臓自身を消化してしまうという病気です。
これが最初に何で起こるのかの発症機序については未だ解明されていないのでわかりませんが
とにかく、膵臓の中の消化酵素が活性化しまくって自らを消化して
またそれにより膵臓の酵素が活性化して、また消化して・・・を繰り返しながら
炎症がどんどん広がっていき、膵臓だけでなく周りの消化管なり腹腔内なりに炎症が波及する病気です。
血液検査でリパーゼが高いというだけで膵炎と診断される機会がどうしても増えてしまい
誤診の多いのがこの膵炎という病気の特徴ではありますが
本物の急性膵炎は結構恐ろしい病気です。
この炎症の広がりを止めることができなければ死に至るケースも少なくない病気であります。
今日のテーマはそんな恐ろしい膵炎の食事療法についてです。
犬さんの膵炎の場合、ほとんどの症例で嘔吐か下痢、もしくはその両方を認めるわけですが
嘔吐がある場合には、食事療法よりも先に嘔吐のコントロールをしなければなりません。
まあ、食べても吐いてしまうのであれば、腸に食べ物を入れるのはなかなか難しいわけですから当然かもしれません。
で、吐き気が止まればできるだけ早期に経腸栄養を開始するべきとされています。
ここで問題となるのが
『絶食にした方が良いか?』という質問ですね。
よく嘔吐や下痢を主訴に来院された患者様に尋ねられることも多いのですが
僕は基本的に、吐かないなら食べてください、と言います。
下痢が続いているからといって、食事を抜く意味はほとんどないと思いますし
むしろ絶食が及ぼす身体への悪影響の方が大きいと考えています。
これは膵炎だけでなく他の消化器疾患でも同様だと考えておりまして
嘔吐を注射薬なりでできるだけ早く抑えてあげた上で
食べさせることができるなら、可能な限り早めに食事を与える、というのが現在最も一般的な考え方だと思います。
10年以上前は、膵炎の時は膵臓を休めるという意味合いで絶対に絶食!みたいに言われていたんですが
最近の報告では、早期に食事を開始した方が回復が早いことが複数のグループから報告されています。
なので、嘔吐をコントロールできているなら、早く食べさせましょう。
じゃあ、何を与えればいいのか?という話になるわけです。
膵臓の酵素の分泌をできるだけ抑えたいわけですので
膵酵素の分泌を刺激するような食事は極力避けたいわけですね。
犬さんにおいて、『脂肪』は膵酵素の分泌を最も刺激するきっかけになる因子の一つであるとされているので
膵炎のどの段階であっても脂肪分の多い食材は避けるべきであるとされています。
逆に、炭水化物はこの刺激する効果がかなり弱いためお米のような消化性の高い炭水化物で最初に導入するのは理にかなった方法です。
あとは、低脂肪のカッテージチーズや鳥ささみなどの必須アミノ酸などの含有量の多い、栄養学的価値の高いタンパク質を少量ずつあげる感じですかね。
もちろん、病院での治療だと療法食として使用される
いわゆる消化器用の低脂肪食を駆使して治療していきます。
ですが、現状、どの基準を持って低脂肪の食事であるとするかはコンセンサスは得られていないので、ここはやや曖昧です。
一方で、猫さんの膵炎においては
食事中の脂肪制限を支持するデータは存在しません。
猫さんは基本的に、犬さんよりも脂質の要求量が高く
高脂質に対する体制も高いため
犬さんの膵炎で推奨されているような低脂肪食は推奨されません。
ここは注意が必要ですね。
猫さんは基本的に低脂肪食などではなく、普段食べているものをあげるで良いかと思われます。
なので、猫さんの場合は、何を与えるか?というよりは
きちんと食事を与える、ということの方がより重要ということですね。
犬さんと猫さんの膵炎における食事療法はこんな感じでしょうか。
あんまり何も新しい情報はないと思いますが
僕が強く言いたいな、と思うのは
『無意味な絶食はやめましょう。』ということですかね。
絶食するという行為は、治癒が遅れたり、悪化する原因となったりと
あまり良い結果は得られないと思います。
確かに、下痢をしている時に食事を抜けば、食べていないから下痢の量は減るのかもしれませんが
別にそれは下痢が改善しているわけではなく、ただ出すものがないだけの話だと思います。
一部の特殊な消化器疾患を除いて
絶食という行為は、治療にはならないと考えられるため、お勧めできません。
そんなところでしょうか。
このブログを一年以上前から読んでくださっている方にとっては
また同じような話かあ、となるのかもですが
絶食にしないこと、食べてもらうことはすごく大事なことだと思うので
また書いてみました。
こうやって繰り返し書いていくことが大事なのかなと最近感じるようになったので
続けていこうかと思います。
つまらなかったらごめんなさい、読み飛ばしてください。
それでは、今日はこのへんで失礼いたします。