椎間板ヘルニアと診断・治療された犬さんが血管肉腫だった話
先日、当院で脾臓摘出の手術を実施した犬さんは
2ヶ月前から『足のふらつき』を主訴に他の動物病院さんで治療されておりました。
詳細な治療内容は不明でありますが
診断名が『椎間板ヘルニア』と言われていたそうなので
痛み止めとか、そういう治療なんだったのかなと思います。
ただ、だんだん食欲も落ちてきて呼吸もハアハアするとのことで
セカンドオピニオンとして当院に来院されました。
動物病院の不定愁訴あるあるだと思いますが
犬猫さんたちは痛みを口で伝えられないので
なんとなく元気がない、とか
いつもと様子が違う、とか
そういう不定愁訴系の主訴は、『腰の痛み』みたいなので片付けられることが多いです。
実際に、腰痛で同じような症状になる子もいると思いますし
痛み止めを使用すると改善する子もいるので全部が間違いではないと思います。
ただ、こういうパターンもあるんですよ、ってことを知っておいてもらえたらなと思い
こうして書いています。
この子は、当院にいらした際に食欲が低下してしまっていたので
血液検査と腹部の超音波を実施しました。
結果、中程度の貧血と脾臓に大きな腫瘤状病変が見つかり
その腫瘤の周りには液体貯留も少しあったので
過去に出血した可能性が考えられました。
犬さんの脾臓腫瘤や肝臓腫瘤の破裂による腹腔内出血は
それほど珍しい病態ではないため
2ヶ月前からのふらつきみたいなのも
この症状と関連していた可能性は十分にあるかなと思います。
というよりも、この子に関しては
少量ずつだったかもしれませんが、持続的な出血による貧血の可能性も考えられたため
初日に加療後、翌日の手術とさせていただきました。
手術当日のヘマトクリット値も前日と比較してさらに低下しておりましたが
手術した翌日の数値は低下していなかったため
持続的な出血があったのではないかと考えています。
病理の結果は血管肉腫ではあったものの
手術したその日から元気に歩いてくれており
翌日の経過も問題なかったので、手術をして良かったように思います。
こういった感じで
『痛み』と捉えられがちな不定愁訴の中には
怖い病気が隠れていたりすることは少なくありません。
実際、僕も2年目の時に同じようなことをやらかしてまして
その時も『なんとなく元気がない』という主訴で来院されたウェスティさんに対して
身体検査上のバイタルが問題なかったので
僕は、腰痛でもあるのかな?って感じで説明し
念の為、レントゲンを撮らせてもらいました。
その結果、腹腔内にでかい腫瘤があることがわかり
そこからの出血であることが判明し、手術まで持っていけたのですが
当時は、FASTエコーみたいな救急エコーの技術が普及する前だったので
レントゲンを撮っておいて良かったなあ、という症例でございます。
今だったらすぐにエコーを当てればわかるんでしょうけどね。。。
救急の先生方の全国的な活動のおかげか
救急エコーという分野も日本全国に普及しており
動物病院の中ですぐにエコーが当てられるという施設も多くなっているとは思いますが
それでも、未だにエコー室みたいなところに
電源が入っていない状態で安置されていたりする動物病院さんも少なくないみたいなので
こういうケースが見逃されてしまうのかな、と思います。
たぶん、聴診器を当てるぐらいの感覚で
エコーで少し確認する、ぐらいの思考のクセが重要なのかもしれません。
今回のわんちゃんのことを経験して
改めて、自分自身の診療の中でも気をつけようと思いました。
それでは、今日はこのへんで。