新しい猫腎性貧血治療薬 バレンジン
発売前に何度か触れていた記憶があったので
もうすでに紹介していたような気になっていましたが
どうやらちゃんと記事にしていなかったみたいなので、今回書いていきます。
慢性腎臓病における腎性貧血は代表的な合併症の一つで
ステージの進行とともにその発症率は増加するとされています。
貧血は、活動性やQOLの低下を招くだけでなく、腎臓病のさらなる悪化に関与する可能性があります。
そのため、腎性貧血に対する治療は
慢性腎臓病の管理の上では重要なものになってくるわけですが
従来は、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が主な治療選択肢でありました。
このESA製剤は、体の外から造血ホルモンであるエリスロポエチン作用を補うことで
赤血球造血作用を促進する治療になります。
一方で、今回のバレンジン(モリデュスタットナトリウム)はHIF-PH阻害薬というものに分類される薬剤で
文字通りHIF-PHを阻害することにより
HIF-αの分解を抑制し、生体の低酸素応答を活性化する結果
内因性のエリスロポエチンの産生を促進する薬剤になるので
上述のESAとは全く異なる作用機序の薬剤となります。
また、慢性腎臓病に伴う貧血に関しては
腎臓からの内因性エリスロポエチン産生低下だけが原因で生じるわけではないとされており
別の機序として、慢性腎臓病における慢性的な炎症によりヘプシジンという物質が増加し
鉄の利用能が低下する機能的鉄欠乏が生じることなどによっても貧血が発症するとされています。
人医療においてHIF-PH阻害薬は
ヘプシジンを低下させることにより、腸管からの鉄吸収や貯蔵鉄の動員も促進され
結果的に鉄利用能を改善させる効果があるとされています。
今回の猫さんの慢性腎臓病における腎性貧血治療薬として発売されたバレンジンは
海外の臨床試験においても
約7割の症例で貧血の改善が認められ
安全性も良好であったことが報告されています。
具体的には
バレンジンは経口の懸濁液でフィッシュオイルフレーバーで
嗜好性も良好だそうなので、投与しやすいらしいです。
ここらへんは実際使ってみての感想はまた変わってくるのかもしれませんが
もし、使用した猫さんとかいらっしゃいましたら、感想を教えてくださると嬉しいです。
経口薬であるという点も
ESA製剤は基本的に注射薬による治療になるので、新しい点にはなると思いますし
どちらを選択するかは、猫さんの性格だったり状態によるかもしれないですね。
いずれにしろ、治療の選択肢が増えたこと自体は
猫さんにとっては喜ばしいことかなと思います。
新しい薬剤の登場によって、少しでも猫さんたちの快適な時間が増えると良いですね。
それでは、今日はこのへんで。