腎臓病療法食を使う際のカルシウム・リン比
今週の木曜日のセミナーは
慢性腎臓病に関連する骨ミネラル代謝異常(いわゆるCKD-MBD)を中心に
腎臓病療法食について話す予定で考えています。
まだ、資料を作っていないので変更があるかもですが
基本その予定でいきたいと考えておりますので
その内容と関連のある報告として
今日のテーマはこちらの論文。

早期の慢性腎臓病の猫さんにおいて
二つの腎臓病療法食が、カルシウムの恒常性に関わるホルモン・調節経路に
どういう効果を与えたか?を見た研究です。
先に言っておきますが、頭数も少ないですし
いろんな側面でのレギュレーションがあるので
あくまでも参考程度にしておくのが良いかとは思います。
そもそもこの研究背景として、前述のCKD-MBDという概念が出てくるわけですが
そういった背景部分を先に簡単に書いておきます。
慢性腎臓病(CKD)が進行すると、糸球体濾過量(GFR)は低下し、リン排泄が低下します。
その結果として、血中リン濃度が上がりやすい状況が生まれますが
そこを防ぐために、まずFGF23というホルモンが上昇します。
FGF23はリンの排泄を促進し、カルシトリオール(活性型ビタミンD)の産生を抑制します。
さらにその状況が進行すると
低カルシトリオール、低イオン化カルシウム、高パラソルモン(上皮小体ホルモン)となり
二次性の腎性上皮小体機能亢進症へと発展します。
こうならないために、リン制限が推奨されるという感じですね。
ただ、その一方で
猫さんの慢性腎臓病ではリン制限食そのものが高カルシウム血症に関与する可能性が指摘されており
特に、リンを強く下げすぎると
相対的なカルシウムとリンの比が高くなってしまいます。
つまり
リン制限は大事な治療選択ではあるが
リンを下げ過ぎたり、カルシウム・リン比を上げすぎてしまうと
逆に高カルシウム血症の問題が出るのではないか?というのが
この研究のテーマになります。
リンとカルシウムの積が一定以上を超えると
身体の中で石灰沈着が出現してしまい、それは腎臓も対象となるため
このリンとカルシウムの積が上がらないようにしたいと考えると思うので
カルシウムが高くなってもリンが下げられているなら良いじゃないか、って話になるかもしれないんですけど
先日、書いたカルシプロテイン粒子・CPPでしたっけ?
そちらの論文を参考にすると
リン制限の結果起こる高カルシウム血症の状態はCPPの増加につながり
結果としてCKDを悪化させることにつながるという話だったかと思うので
リン制限をしてカルシウムが高くなることは
リンが下がるからって良いわけではないってことですね。
研究の背景だけで、長くなってしまったので
こっからはできるだけ端折っていきますが
この研究では
マイルドなリン制限食とよりリン制限を強くした制限食の2種類が
CKDステージ1−2のネコさんたちに使用されました。
ただ、注意点としては
単純にリンの含有量に差があるわけではなくて
リン制限が強い食事の方が、カルシウム含有量が高く
結果としてカルシウム・リン比が1.2:1と2.0:1という感じで
二つの食事の間で結構な差が開いておりました。
その結果、どうなったかと言いますと
カルシウムリン比が高かった食事の方では
イオン化カルシウムが上昇、尿中カルシウム排泄、カルシウム結石のリスク指標が上昇
FGF23が上昇、カルシトリオールが低下、パラソルモンが強く抑制されました。
一方で、両方の食事群の間にリンの値の差はあまりありませんでした。
論文の考察的に、リン制限が強い食事群で何が起きていたかを一言で書くと
『リンを強く制限し、カルシウムリン比を高くし、カルシウム恒常性が乱れた』
ということだそうなのですが、流れとしては
食事中のリンが低く、カルシウムが高く、カルシウムリン比が高い
↓
血中イオン化カルシウムが上昇
↓
パラソルモンが抑制
↓
尿中へのカルシウム排泄量が増加
↓
カルシウム結石のリスク指標が上昇。
さらには
血中のカルシウムが上昇またはカルシウムとリンの積が上昇
↓
FGF23が上昇
↓
カルシトリオールが低下
という流れになったのではないか、という話でした。
つまり、この論文的な結論を書いておくと
・腎臓病療法食はリンが低ければ低いほど良い、というわけではないということ。
・カルシウムリン比が高いことが必ずしも安全ではないということ。
・リン制限食を選択する時は、リンの量だけでなく、カルシウムの量も気にしましょうということ。
・リン制限食をスタートした後は、定期的なカルシウムのモニタリングをした方が良いということ。
こんな感じでしょうか。
個人的には、過度なリン制限の弊害により
どうしようもなく腎臓が悪くなっていった子達を経験しているので
この論文自体の制限はいくつかあったとしても
『腎臓病療法食を使用する上で注意すべきポイント』としては警鐘を鳴らしてくれる報告だと考えています。
ご参考になりましたら幸いです。
木曜日のセミナーでは
こんな感じのことを
もう少しわかりやすくお話ししたいと考えておりますので
もしよろしければ、ご参加ください。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfxONESy4cAPuH0q0bZlj54MOo8KEaGQupr684KAUiDbyKrlw/viewform
あと、youtubeの登録もお願いいたします。
それでは今日はこのへんで。