皮下点滴による高血圧、それに伴う網膜剥離の可能性
先日、経験した症例を共有しておきます。
あくまで僕の個人的な経験なので、因果関係を証明できるわけではないので
その点だけあらかじめご承知おきください。
14歳の犬さんが1年以上前に片方の腎臓を摘出しました。
その後から、ACE阻害薬の投与と毎日の皮下点滴が始まりました。
今年に入って、眼の調子が悪く眼科の専門病院を受診。
そこで高血圧に起因する網膜剥離との診断を受けました。
その後、高血圧の原因や現在の投薬・処置の内容についてのセカンドオピニオンとして
当院を受診されました。
で、僕としては高血圧を引き起こした原因について以下のような鑑別疾患を考えました。
・慢性腎臓病に起因する腎性の高血圧
・心疾患由来の高血圧
・本態性高血圧
・慢性的な皮下点滴による高血圧
この中で、心臓のエコー検査的に心疾患はないでしょう、となり
心臓性の高血圧の可能性は低いと判断しました。
あとのものに関しては経過を見ていくしかありませんでした。
腎機能が本当に落ちているのかどうかを確認するために尿検査を実施したかったのですが
毎日の皮下点滴により、正確な尿検査結果が得られないと判断し
腎機能の評価に関しては保留としました。
活動性も食欲も申し分なく
皮下点滴の必要性はなさそうな状態だったので
まずは皮下点滴の量を漸減し、休薬していくことを目標としました。
一週間単位で徐々に投与回数を減らしてもらい
3日に一回の投与頻度になった二週間後に再度血圧を測定させてもらいました。
結果
初診の日の収縮気血圧が170後半だったのに対し
二週間後の収縮期血圧は120前後にまで低下しておりました。
これだったら降圧剤の必要性もないんじゃないかなってことで
カルシウムチャネルブロッカーであるアムロジピンとACE阻害薬の2種類のうち
アムロジピンも漸減からの休薬を図りました。
ACE阻害薬に関しては
もしかしたらタンパク尿を抑制している可能性もあるな、と考えていたのと
輸入再動脈と輸出細動脈のどちらの拡張から抑える方が負担が少ないかを検討した上で
後に残しておきました。
さらにまた二週間後
収縮期血圧は変わらず120前後。
アムロジピンも必要ないかなってなりました。
皮下点滴もすでに終了していたので尿検査を実施。
そこでの尿比重も問題なく、尿蛋白の出現もなかったため
ACE阻害薬も休薬を目指すことになりました。
以上のような経過より
僕の仮説にはなりますが
慢性的な皮下点滴投与→容量過負荷やナトリウム負荷→高血圧→網膜剥離
という流れが起きていたのではないかと考えました。
もちろんこの一例だけで
皮下点滴の危険性として網膜剥離が起こるかも??とは言えないとは思いますし
皮下点滴が危ないですよーなんていうのを言って回るつもりもないです。
僕も日々誰かに皮下点滴をしていますしね。
ただ、実際にこういう犬さんもいらっしゃいましたよ、という話がしたかったというだけです。
何度も書いておりますが
皮下点滴というものはお薬の処方と同じで
必要な子にだけ実施すべき治療だと思います。
本当に必要なのかをきちんと評価せず
漫然と続けてしまうと、上記のような経過も起こりうるのではないかと考えました。
参考になりましたら幸いです。
それでは。