マロピタントは胃の運動性を低下させるかも?
消化器部屋の方で論文が紹介されておりましたので
ここでも紹介しておきます。

セレニアやマロピタットという商品でご存知の方も多いかもしれません。
制吐剤として一般的にしようされているマロピタントを健康な犬さんに投与した後に
胃や十二指腸などの運動性を評価したという研究です。
今回はAIにちょっとブログっぽくまとめてもらいましたので、よろしければ参考にしてください↓
マロピタントは胃腸の動きを低下させる?
犬におけるマロピタント投与後の消化管蠕動を調べた論文
犬や猫の嘔吐・吐き気に対して、マロピタント、商品名ではセレニアは非常によく使われる薬です。
日常診療でも「吐き気止め」として使用される機会が多く、安全性も高い薬として広く認識されています。
しかし今回紹介する論文では、犬にマロピタントを投与した後、胃や小腸の動きにどのような変化が起こるのかを調べています。
結論から言うと、健康な犬にマロピタントを投与すると、胃の出口である幽門部と空腸の蠕動運動が低下する可能性が示されました。
つまり、マロピタントは嘔吐を抑える薬ではありますが、「胃腸を動かす薬」ではなく、むしろ状況によっては消化管運動を低下させる可能性がある、という内容です。
研究の目的
この研究では、健康な成犬21頭を対象に、マロピタント投与前後で消化管の画像所見が変化するかを調べています。
評価された項目は主に以下の3つです。
1つ目は、超音波検査で見た胃や小腸の蠕動回数です。
評価部位は、幽門部、十二指腸、空腸でした。
2つ目は、超音波検査で見た消化管壁の厚さです。
全体の壁厚だけでなく、粘膜、粘膜下層、筋層といった各層の厚さも評価されています。
3つ目は、レントゲン検査で見た小腸の拡張やガス量です。
これは、マロピタントによって機能的イレウスのような画像所見が出るかどうかを確認する目的がありました。
研究方法
対象となったのは健康な成犬21頭です。
犬たちは8時間以上絶食した状態で、まず投与前の腹部レントゲン検査と消化管超音波検査を受けました。
その後、マロピタントを1mg/kgで皮下投与し、1時間後に再びレントゲン検査と超音波検査を実施しました。
さらに3時間後には、超音波検査のみを再度行っています。
超音波検査では、幽門部、十二指腸、空腸をそれぞれ3分間観察し、その間に何回の推進性収縮が起こるかを記録しています。
結果
最も重要な結果は、マロピタント投与後に幽門部の蠕動回数が有意に低下したことです。
特に、投与前と比較して、投与1時間後、3時間後の幽門部蠕動は明らかに低下していました。
また、空腸についても、投与前に蠕動が確認されていた犬だけで解析すると、投与1時間後に蠕動回数が有意に低下していました。
一方で、十二指腸の蠕動については、有意な変化は認められませんでした。
つまり、マロピタントの影響は消化管全体に一様に出るわけではなく、少なくともこの研究では、幽門部と空腸で蠕動低下が確認されたということになります。
消化管壁の厚さや小腸径はどうだったか
消化管壁の厚さについては、臨床的に重要な変化は認められませんでした。
幽門部の粘膜下層だけは一時的に厚くなっていましたが、全体の壁厚には変化がなく、著者らも臨床的意義は乏しいと考察しています。
また、レントゲン検査で見た小腸径や小腸内ガス量にも有意な変化はありませんでした。
つまり、健康な犬にマロピタントを投与しても、少なくともこの研究条件では、明らかな小腸拡張や機能的イレウス様のレントゲン所見が出るわけではありませんでした。
この論文の臨床的な意味
この論文で最も重要なのは、マロピタントが胃腸運動に影響する可能性を示した点です。
マロピタントは吐き気止めとして非常に有用な薬ですが、胃腸を動かす薬ではありません。
むしろ、胃の出口である幽門部の蠕動を低下させる可能性があるため、胃内容物の停滞、胃排出遅延、逆流、誤嚥などには注意が必要かもしれません。
特に、膵炎、胃内容物の貯留、機能的イレウス、術後の消化管運動低下、誤嚥リスクがある犬では、マロピタントを使用したあとに「嘔吐が止まった=胃腸が改善した」と単純に判断しない方がよいと思われます。
もう1つ重要なのは、腸閉塞が疑われる症例です。
犬の小腸閉塞では、レントゲンや超音波検査で、閉塞部位より口側の腸管拡張や、いわゆる“two populations of bowel”が重要な診断所見になります。
著者らは、マロピタントがサブスタンスPとNK-1受容体の作用を抑えることで、機械的閉塞があっても典型的な腸管拡張や画像所見が弱くなる可能性を指摘しています。
今回の研究は健康犬を対象にしたものなので、実際に腸閉塞の犬で診断を遅らせるかどうかまでは証明されていません。
しかし、腸閉塞が疑われる犬でマロピタントがすでに投与されている場合には、画像所見を解釈する際にその影響を考慮する必要があるかもしれません。
この論文から言えること
この研究から言えることは、以下のようにまとめられます。
マロピタントを健康な犬に1mg/kg皮下投与すると、幽門部の蠕動は1時間後および3時間後に有意に低下しました。
また、投与前に空腸蠕動が確認されていた犬では、投与1時間後に空腸蠕動も有意に低下しました。
一方で、十二指腸蠕動、小腸径、小腸内ガス量、消化管壁厚には明確な変化は認められませんでした。
したがって、マロピタントは嘔吐を抑える薬として有用ではあるものの、胃腸運動を改善する薬ではなく、むしろ胃や空腸の蠕動を低下させる可能性があります。
まとめ
マロピタントは、犬猫の嘔吐や吐き気に対して非常に便利で有用な薬です。
ただし、今回の論文からは、マロピタントが少なくとも健康な犬において、胃の出口や空腸の蠕動を低下させる可能性が示されました。
嘔吐が止まることと、胃腸の動きが改善することは同じではありません。
特に、胃内容物の停滞、膵炎、機能的イレウス、腸閉塞疑い、誤嚥リスクがある犬では、マロピタント投与後の画像所見や臨床症状の解釈には注意が必要です。
マロピタントは非常に有用な薬ですが、「吐き気を止める薬」であって、「胃腸を動かす薬ではない」という点は、臨床上しっかり意識しておきたいところです。
どうでしょうか?
僕自身は、マロピタント使用後に消化管の運動性が落ちているなあと感じたことはないのですが
この論文の筆者が抱いていたクリニカルクエスチョンを元にした研究だと思うので
実際には体感として感じている獣医師の先生方もいらっしゃるのだと思います。
この研究の中でも述べられているように
機能性イレウスや腸閉塞などの症例に使う際の
使用後の反応について
マロピタントがもたらすかもしれない消化管運動の低下という点は
頭の中に入れた上で評価しないといけないのかもしれません。
ご参考になりましたら幸いです。
それでは。