犬さんのタンパク尿を細分化して考える
最近また犬さんの蛋白漏出性腎症
つまりは腎臓から尿中にタンパク質が漏れ出てしまう病態の子を診察させていただく機会が多いです。
タンパク尿が検出されることで、慢性腎臓病の診断のきっかけになることも多いですが
タンパク尿自体が腎障害を進行させてしまうとされているので
できるだけ抑えてあげたい治療ポイントとなります。
ただ、治療をする中で
テルミサルタンなどの治療薬によって良好な反応が得られ
経過が良くお薬を休薬後も寛解したままの子もいれば
一方で、治療反応が悪かったり
腎数値が一気に悪くなってくる子も経験します。
その差はなんなんだろうなあ、ってところで
こんな論文を見つけました。

アブストしか読めないので、浅い知識だったら申し訳ありませんが
タンパク尿を
糸球体性と尿細管性とその混合型の三つに分類し
それぞれの予後だったり、腎臓病が進行するまでの期間はどうなの?ってのを調べた研究です。
とりあえずAIにまとめてもらうとこんな感じ↓
■ 背景
犬の慢性腎臓病(CKD)は一般的で予後のばらつきが大きく、
進行予測とリスク層別化が重要な課題となっている。
蛋白尿(UPC >0.5)は予後不良因子として知られているが、
👉 蛋白尿は一つの病態ではなく、複数の異なる腎障害の集合体
であり、
- 糸球体性
- 尿細管性
- 混合型
で臨床挙動が異なる可能性がある。
■ 問題点(既存の限界)
① 腎生検は理想だが現実的でない
- 侵襲的
- 合併症あり
- 一般臨床では困難
② UPCは便利だが不正確
- UPC >2でも尿細管病変あり
- UPC <2でも糸球体病変あり
👉 “量”では病態を正確に反映できない
■ 着目点(この論文のコア)
👉 タンパクの“量”ではなく“質(分子量)”を見る
- 高分子タンパク(アルブミンなど)
→ 糸球体障害 - 低分子タンパク
→ 尿細管障害
これを評価する方法が
👉 尿タンパク電気泳動(UPE / SDS-AGE)
■ 研究目的
初診時のUPEパターンが
- CKDの進行速度
- 生存期間
を予測できるか検証する
■ 方法
- 犬100例(蛋白尿性CKD)
- UPEで3分類
- 糸球体型
- 混合型
- 尿細管型
■ 主な結果
■ ① 尿細管型は進行が極めて速い
- Cr 25%上昇まで
- 尿細管型:2ヶ月
- 糸球体型:24ヶ月
■ ② 尿細管型は予後が極端に悪い
- 生存期間
- 尿細管型:1ヶ月
- 混合型:12ヶ月
- 糸球体型:55ヶ月
■ ③ この関連は独立因子
👉 他の血液データとは独立して予後に影響
■ 結論
👉 UPEパターンはCKDの進行と生存を予測する有用な指標になり得る
👉 初診時評価に組み込む価値がある可能性
■ この論文の本質(重要)
この論文が言っているのは一言でいうと
👉 「蛋白尿は量ではなく中身で予後が決まる」
■ 臨床的な意味づけ
■ ① 同じUPCでも中身で別物
- 糸球体型 → 比較的ゆっくり
- 尿細管型 → 急速進行・短命
👉 “同じ蛋白尿”ではない
■ ② UPCだけでは限界
👉 「UPCが高いから危険」ではなく
👉 「どういう蛋白が出ているか」が重要
■ ③ UPEは“非侵襲的な病態推定ツール”
- 腎生検の代替にはならないが
- 臨床的にはかなり現実的な中間手段
■ 超要約(1行)
👉 蛋白尿性CKD犬では、尿タンパクの質(UPEパターン)が進行速度と生存を強く規定する可能性がある
タンパク尿を認めるわんちゃんを100症例集めてくれているので
それなりに参考にはなるのかなとは思うのですが
尿細管性タンパク尿の子が11例なので
やや解釈には注意が必要かもしれません。
ただ、糸球体性のタンパク尿の子よりも尿細管性のタンパク尿の犬さんの方が
慢性腎臓病の進行も早く、予後が悪い傾向があるのはそうなのだと思います。
ただ、日常診療の中でもそうですし
IRISのガイドラインでもそうですが
タンパク尿の定量的な評価として一般的に用いられている検査ツールが
UPC(尿蛋白クレアチニン比)でありまして
これは、尿中のタンパク質を尿中のクレアチニンで割って算出されるわけなので
タンパク質の種類については考えていないわけです。
そこでこの論文では
尿蛋白の電気泳動で分類してるみたいなんですが
日本でも尿蛋白のタンパク分画をルーチンで調べている先生とかいらっしゃるんですかね。。。
そこがちょっとわからないんです。
なので、ご存知の方がいらっしゃれば教えてください。
電気泳動ではなく、調べる方法としては
糸球体障害によるタンパク尿だとアルブミンがメインになるかと思いますし
尿細管障害によるタンパク尿ですとβ2ミクログロブリンとかNAGとかになるみたいなので
UAC(尿アルブミン・クレアチニン比)や尿中NAGクレアチニン比などを追加測定することで
このUPCの高値は糸球体性なのかな?尿細管性なのかな?どっちもなのかな?
というのはある程度把握できるかもしれませんし
理論上
糸球体性の方にはテルミサルタンは効果があるはずですが
尿細管性のタンパク尿に対する効果がどれほどあるかがわからないので
薬物治療に対するタンパク尿性も異なる可能性もあると思っています。
尿細管性のタンパク尿については
薬が効かずにコントロールできないから予後が悪いのか
そもそも尿細管性のタンパク尿を引き起こす病態自体が予後が悪いのか
それに関しては、論文を細かく読めば考察されていたりするのかもしれませんが
現時点では僕にはわかりません。
有識者の方がいらっしゃればぜひ教えてください。
それでは今日はこのへんで。