急性膵炎と急性腎障害
昨日、教えてもらった論文。
せっかくなので共有しておきます。

犬さんの急性膵炎の予後指標として
急性腎障害と他の併発疾患などとの関連を振り返ってみた研究ですね。
とりあえずうちのAI的には以下のような感じ↓
犬の膵炎とAKIの関係について
この論文を一言で言うなら、
「膵炎の犬は、膵臓より腎臓で予後が決まる」
それを数字でちゃんと示した研究です。
146頭の膵炎症例を、
- 膵炎だけ
- 膵炎+AKI
- 膵炎+併発疾患
- 膵炎+AKI+併発疾患
に分けて、生存を追っています。
結果は正直、臨床感覚どおりです。
AKIがない膵炎は、多少ほかに病気があっても、わりと助かる。
AKIが入った瞬間に、死亡率は一気に跳ね上がる。
実際、
- 膵炎のみ:死亡率4%
- 膵炎+AKI:64%
- 膵炎+AKI+併発疾患:69%
で、AKIがあるかどうかがすべてと言っていいレベルです。
併発疾患が増えても、AKIがある時点で予後はほぼ変わらない。
じゃあ、何を見ればいいのか
この論文で面白いのは、
「予後因子をいろいろ入れた結果、最後に残ったのが2つだけ」
という点です。
- ヘマトクリット
- BUN/Cr比
cPLの高さとか、年齢とか、犬種とかは残りません。
HCTが下がっている犬は危ない。
BUN/Cr比が上がっている犬も危ない。
これ、目新しい話ではないですが、
多変量解析でちゃんと残っているのがポイントです。
BUNやCr単独より、BUN/Cr比の方が効いているのも納得で、
脱水、循環不全、消化管出血、異化亢進が全部混ざった指標になっている。
「腎臓が悪い」というより、
「全身が回っていない」 ことを拾っている感じです。
臨床的にどう解釈するか
この論文を読んで改めて思うのは、
膵炎を“消化器の病気”として見すぎると危ない ということです。
膵炎
→ 炎症
→ 循環破綻
→ 腎血流低下
→ AKI
ここまで来ると、
もう膵臓をどうこうする段階ではなくなります。
HCTが落ちてきて、BUN/Cr比が上がってきた犬は、
「膵炎が重い」ではなく、
「全身管理に失敗すると死ぬフェーズに入っている」。
ICU管理を考えるべき犬です。
正直な評価
この研究は後ろ向きで、治療内容もバラバラです。
因果関係を証明する論文ではありません。
でも、
- AKIの有無
- HCT
- BUN/Cr比
この3点を見ておけば、
膵炎の犬を“楽観視していいかどうか”はかなり判断できる。
それを、
「感覚」ではなく「データ」として再確認できた、
そういう位置づけの論文だと思います。
論文の中では
リパーゼの数値とか、他の電解質異常とか
もともと慢性腎臓病を持病として持っていたとかよりも
急性腎障害(AKI)が発生するかどうかで予後が大きく変わっていた、という感じの結論になっています。
AIの文章内でも書かれてありますし
当たり前っちゃ当たり前なのかと思いますが
急性膵炎を単純な消化器疾患として捉えるのではなく
全身の循環管理が必要な全身性の炎症性疾患と捉えて
治療にあたらないといけないという感じなんでしょうね。
膵炎は日本の動物医療だと
誤診の多い疾患の一つだと思いますし
血液検査でリパーゼを測定されて
数値が高いから膵炎ですね、と診断されてしまった
なんちゃって膵炎のケースが実際には多いように感じておりますが
年に何度か来るガチの膵炎の治療は本当に命の危険のある疾患だという認識の方が良いですし
それ相応の集中治療が必要だと思います。
今回の報告は
そういう点も改めて教えてくれる論文かと思います。
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