ねこ様の膵炎に対するシクロスポリン
ここ数日はネコ様の膵炎に苦しめられているのもあって
改めて調べてみました。

そこまで目新しい情報というものはなく
まあそうだよね。という納得のいくものが多い中で
オープンラベルではありますが
シクロスポリンの無作為化試験。
ステロイドと比較した感じのやつですかね。
ひとまず例の如くCHAPPYにまずはお願いします↓
🔹研究概要
- 目的:猫の「推定慢性膵炎」に対して
① 対症療法のみ
② 免疫抑制量のプレドニゾロン
③ シクロスポリン
の3群を比較し、**膵特異的リパーゼ(fPLI)と臨床活動指数(CAI)**への影響を評価。 - デザイン:
3週間のオープンラベル無作為化臨床試験(ただし対照群のみ非ランダム化)。- 対照群:16頭(対症療法のみ)
- プレドニゾロン群:15頭(2 mg/kg BID × 5 日→1 mg/kg BID × 16 日)
- シクロスポリン群:17頭(5 mg/kg SID × 21 日)
- 評価項目:
- 主評価:血清 fPLI の変化量
- 副次評価:臨床活動指数(CAI=活動性・食欲・体重減少・嘔吐・黄疸・腹痛・下痢の7項目)
- 実施施設:Texas A&M University GI Laboratory
- 症例:外来管理の飼い猫 48頭(年齢中央値 13.3歳)
🔹主要結果
●1) fPLI(膵リパーゼ)変化
| 比較 | 結果 | 解釈 |
|---|---|---|
| シクロスポリン vs 対照 | 平均 −13.0 µg/L(95 %CI −23.9 ~ −0.9) 減少 | 有意に低下 |
| プレドニゾロン vs 対照 | 平均 +14.6 µg/L(95 %CI 1.0 ~ 28.1) 上昇 | 有意に上昇 |
| シクロスポリン vs プレドニゾロン | 平均 −27.6 µg/L(95 %CI −41.2 ~ −11.4) 差 | シクロスポリンで有意に低下 |
👉 シクロスポリン投与によりfPLIが最も低下し、膵炎活動度の鎮静を示唆。
プレドニゾロン群では逆にfPLI上昇傾向。
●2) 臨床活動指数(CAI)変化
| 比較 | 結果 | 解釈 |
|---|---|---|
| プレドニゾロン vs 対照 | 平均 −1.9 (95 %CI −2.7 ~ −1.2) 改善 | 有意改善 |
| シクロスポリン vs 対照 | 平均 −0.7 (p > 0.05) | 有意差なし |
| シクロスポリン vs プレドニゾロン | 平均 +1.2 (95 %CI 0.4 ~ 2.1) 差 | プレドニゾロンの方が臨床改善大 |
👉 プレドニゾロン群では症状が最も改善。
シクロスポリン群ではfPLIは下がるが臨床改善は限定的。
●3) 相関
- fPLI と CAI には相関なし(r = 0.03, p = 0.79)。
→ 生化学的改善と臨床症状改善は必ずしも一致しない。
🔹考察の要点
- シクロスポリン:
- 5 mg/kg SID × 3 週で膵炎活動を抑える可能性。
- しかし臨床症状(食欲・嘔吐など)の改善は限定的。
- 血中濃度やバイオアベイラビリティの個体差が大きく、有効濃度未達の可能性。
- 副作用やT細胞抑制による免疫リスクを考慮し、用量調整と長期試験が必要。
- プレドニゾロン:
- 免疫抑制量で臨床改善(CAI低下)がみられた。
- しかしfPLI上昇(炎症バイオマーカー悪化)を伴い、症状改善=炎症抑制とは限らない。
- 抗炎症効果・食欲刺激・気分改善などの二次的効果の可能性。
- 臨床的含意:
- 猫の慢性膵炎では免疫抑制療法が有用な可能性はあるが、
「どの薬が炎症を鎮めるか」と「どの薬が症状を改善するか」は一致しない。 - 現時点でシクロスポリンを第一選択とする根拠はまだ不十分。
- 生化学マーカー(fPLI) と 臨床症状を別々に追うことが重要。
- 猫の慢性膵炎では免疫抑制療法が有用な可能性はあるが、
🔹研究の限界
- 診断は「推定慢性膵炎」であり、生検確定例なし。
- サンプルサイズ小(n = 48)・期間短(3 週間)。
- 血中シクロスポリン濃度測定なし。
- 無作為化は治療群のみ(対照群は希望制)。
- CAIは未検証の指標であり、オープンラベルによるバイアスの可能性。
🔹結論(著者)
「3 週間の治療で、シクロスポリンはfPLIを有意に低下させたが、
臨床症状改善はプレドニゾロンが優れていた。
長期的にシクロスポリンが炎症鎮静や予後改善に寄与するかは、
今後の研究が必要である。」
🔹臨床応用メモ
| 項目 | 推奨・示唆 |
|---|---|
| 投与量 | CsA 5 mg/kg SID × 21 日(変動あり) |
| 効果 | fPLI ↓ だが症状改善は限定 |
| 有害事象 | 本試験では詳細未報告、既報では嘔吐・食欲低下・腎リスクなど |
| 適応検討 | 免疫介在性膵炎の可能性が高い症例、ステロイド不耐例などで検討余地 |
| 併発疾患 | Triaditis(胆管炎・IBD)併発では個別治療必要 |
【確実性:中】
- 初のRCTであり、先行する2021 年の後ろ向き研究を支持する結果。
- ただし短期間・臨床効果未確定のため、
現段階では「有望だが要検証」と位置づけられます。
主要評価項目がfPLIの数値というのは
本当にそれで良いのか、と思いますが
そこに対しては、シクロスポリンに対して軍配が上がった感じでしょうか。
症状改善というところに着目すると
こちらはステロイドに軍配が上がったような感じです。
ステロイドの量が結構多いのは気になりますが
PLIの数値よりも大事なのは症状な気もするので
結局はステロイドの方が臨床的には良いんでしょうか?
ただ、数値がむしろ上昇したみたいなのも少し引っ掛かるところ。
fPLIの数値が高いということは慢性的な炎症は持続しているということになるのか。
それだったらステロイドは急性期の炎症による臨床症状は緩和してくれるけど
慢性的な膵臓の炎症に対しては
むしろシクロスポリンのほうが良いってことなんでしょうかね。
そもそも
シクロスポリンは投与してすぐに効果を発揮するタイプの薬剤ではないため
急性膵炎症例よりは慢性膵炎症例が対象にはなるのだと思うのですが
この研究だけでは、今すぐ採用!とはならないかもですね。
ただ、ずっと燻っている可能性のある膵臓での炎症を
シクロスポリンが抑えてくれる可能性はあるのだと思うので
慢性膵炎の急性増悪の発症を抑える可能性とかはあるのかもしれないですね。
何度も膵炎様症状を繰り返してしまうタイプの猫さんには
検討してみる価値はありそうな気もします。
もう少し長期的なデータが出てきて欲しいところでしょうか。
お世話になります。
本日は休日なのに対応頂き、有り難う御座いました。
帰ってきた後は頂いた消化サポートのご飯をちゃんと食べてくれて一安心しました。
一昨日はずっと吐いて飲むのも食べるのも無理だったのでまだ本調子では無いですが少しずつ元気になってきて良かったです。
元々季節の変わり目やストレスでお腹を壊しやすい子だったので今回みたいに酷くならないように人間が気を付けてあげないといけないですね…。
色々対応して頂き、有り難う御座いました。
また宜しくお願いします。
>マ様
お世話になります。
ご帰宅後にフードを食べてくださったと聞いて安心しました。
消化器症状の再燃がなければ、食欲も戻ってくると思います。
こちらこそお時間を合わせていただきありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。