犬さん情報
入院中の犬における体液過剰状態の有無に伴うリスク因子と転帰の回顧的評価
人の医療と同様に
動物医療においても体液過剰・過剰輸液の危険性などが叫ばれております。
人医療では死亡率増加との関連性などが報告されておりますが
犬さんにおいてはあまり調査されていません。
そういう背景をもとにこの論文。

入院中の犬さんの治療において
体液過剰になった群となってない群で比べてみましたというやつ。
FOという群が過剰なやつです。
例の如く、AIにまとまめてもらうとこんな感じ↓
研究の概要
- デザイン:後ろ向き観察研究(大学病院EMRレビュー)
- 対象:IV輸液を受けた入院犬
- FO群 136例、対照群 109例(合計245例)
- FOの作業定義:IV輸液中に末梢浮腫、呼吸器徴候(頻呼吸・呼吸困難)、肺水腫、体腔貯留液のいずれかが出現し、臨床医がFOと判断した場合
主な結果(クリニカルに重要なところ)
- FOの関連疾患(オッズ比)
- 心血管疾患:OR 18.1(95%CI 5.4–60)
- 蛋白漏出性腎症(PLN):OR 15.3(2.0–116.8)
- 慢性腎臓病(CKD):OR 10.0(3.0–33.8)
- 急性腎障害(AKI):OR 5.2(2.5–10.6)
- 入院経過・転帰
- 入院日数:FO群 中央値6日(IQR 5–9) vs 対照 5日(4–7)【p<0.001】
- 退院まで生存:FO群 68.4% vs 対照 92.7%【p<0.001】
- ICU入院:FO群 76.5% vs 対照 58.7%【p=0.003】
- 医療費:FO群の方が有意に高額(中央値 $5760 vs $5401)【p=0.02】
- 投与“総輸液量”との関係
- Day1–5の総量(mL/kg)に群間差なし(FO 222 vs 対照 224、p=0.92)
- =FOは単純な輸液総量だけでは説明できない可能性
- 体重指標(ヒト基準の>10%増)
- FO群でこの基準を満たしたのは**6.0%**のみ
- 対照でも**2.9%**が基準を満たした(臨床徴候なし)
- =ヒトの>10%体重増ルールは犬では妥当性再検討が必要
臨床的含意(現場での使いどころ)
- 誰が危ないか(入院時のリスク層別化)
- 心疾患、PLN、CKD、AKI、呼吸器疾患、重い代謝・消化器疾患はFO高リスク。入院早期から厳密管理を。
- “量より質”の輸液管理
- 本研究では総輸液量自体は差が出なかった。
- 病態(循環・腎機能・心肺)に応じた“反応性評価”(バイタル/呼吸状態/尿量/末梢浮腫/画像所見)で都度調整が肝要。
- 体重だけに頼らない
- 10%体重増は感度が低い。**日次体重+臨床徴候+必要に応じ画像(胸部X線/超音波)**を組み合わせて判定。
- アウトカムを意識
- FOは入院延長・費用増・生存率低下と関連。早期検知・早期是正が重要。
実務チェックリスト(院内プロトコルのたたき台)
A. 入院初日(リスク層別化)
- 既往/主病態:心疾患、PLN/CKD/AKI、呼吸器疾患の有無を確認 → FOハイリスクにフラグ
- ベースライン:体重、呼吸数/努力呼吸、末梢浮腫、胸部聴診、PCV/TP、腎数値、電解質
- ICU/高看護が望ましい症例を早期選別(本研究でFO群はICU比率が高い)
B. デイリー監視(「反応ベース」)
- 毎日体重(ただし単独判断は不可)+尿量(可能なら)
- 浮腫(四肢/眼瞼/亀頭包皮/皮下のたわみ)、呼吸状態(RR、努力、酸素化)、胸部X線や肺超音波でのうっ血/水腫所見の変化
- 隠れた水分(hidden fluids):薬剤希釈液、CRIs、経腸栄養などを入った分として台帳化(FO寄与の報告がある概念)
C. FO兆候を見たら
- 輸液の段階的減量/一時中止を検討(維持量→半量→停止など、循環指標を見ながら)
- 心疾患/腎障害併発例では利尿薬の適応(※本論文は介入試験ではないため、一般的管理原則としての提案)
- 原因評価:心原性か、腎性(乏尿/無尿)か、血漿膠質圧低下(低Alb)か—で対処を選択
- 必要に応じ酸素化/呼吸補助、胸腔・腹腔穿刺排液
重要な限界点(結果の読み方の注意)
- FOの診断は臨床家の判断に依存(主観の入りうる定義)。
- 体重ベース(>10%増)のヒト基準は犬に不適合の可能性。
- 総輸液量に差が出なかった背景として、**アウト(尿・排液)の未記録や“隠れ水分”**など、後ろ向き研究の限界あり。
ひとことで:
FOは“量の積み上げ”というより、「ハイリスク病態+見逃されたうっ血」の組み合わせで起こりやすく、いったん起これば入院延長・費用増・生存率低下に直結。
日次体重+臨床徴候+画像+入出量の見える化で、**早期に“減らす勇気”**を持つのが現場の肝です。
当たり前っちゃ当たり前なのかもしれないですが
心疾患と腎疾患がある子については
輸液はかなり慎重に行いたいところです。
注目すべきは
トータルの輸液量はあんまり関係ないっぽいってとこですかね。
あとは体重増加とかだけで評価するのも微妙っぽいってとこか。
その子のその子によって輸液適正量をその都度見直すのが必要ですし
そのためには入院中は頻回のエコーとかがやっぱ大事なんでしょう。
輸液・点滴はもちろん必要な時は実施しないといけないですし
脱水の時なんかは最重要な治療の一つだと思いますが
安易な輸液療法は避けたいところですよね。
そういうお話しでした。
では。