無症候性細菌尿について
細菌性膀胱炎についてのセミナーを聞いていましたので
その内容の一部をここでもご紹介したいと思います。
今日のテーマは無症候性の細菌尿について。
文字通り
臨床症状がないけど、尿検査で細菌が認められる状態を指します。
ここで言うところの臨床症状とは
頻尿
排尿困難
不適切な場所での排尿
肉眼的な血尿
が当てはまります。
これらの症状がないけど
尿検査や尿の細菌培養検査においては細菌が検出される場合を
無症候性細菌尿と呼びます。
この無症候性細菌尿の治療方針については
人の方のデータが揃っています。
人間の方でも、普段から免疫抑制剤を飲んでいたりなんかで
尿中に細菌を認めることもあるみたいなんですが
原則として
基礎疾患や免疫抑制剤の使用の有無に関わらず
抗菌薬は使用しない、となっています。
いやあ、流石に免疫抑制剤を飲んでいたり糖尿病があったりして
尿中に細菌がいたら抗生物質飲んだ方がいいでしょ?ってなっちゃうかもしれません。
これについても
『糖尿病などの感染症リスクが高いと考えられる患者でも
抗菌薬の有無は予後に影響がない』
とされていたり
『抗菌薬は短期的な細菌陰性の状態を作り出すが
再感染は高率に起こり
抗菌薬投与の有無で全体的な予後などに影響がない』
とされていたりします。
つまりは、症状を引き起こしていないのであれば
抗生物質を投与することにあんまり意味はないということですね。
同じようなデータは犬さんの方でもあって

健康な犬さんの尿検査を実施したところ10%弱ぐらいで
尿中に細菌を認めたみたいなんですけど
そのうちの半分の子は自然に細菌が陰性化し
残りの半分の子も細菌が持続的に認められたものの症状は引き起こさなかった
となっています。
つまりは、何もしなくて良さそうという感じです。
同じように猫さんにおいてのデータもありまして

7歳以上の67頭の猫さんを三年間にわたり観察したもので
16%の確率で尿から細菌が検出されたみたいですが
結果として無治療でも生存期間への影響がなかったとされています。
なので、人と同様に
犬猫さんでも無症候性細菌尿については原則治療しないということになっています。
また、症状がない場合には基本的に細菌培養検査も薦めないとはされていますが
何事にも例外があるように
以下の時は細菌培養検査を考慮するとされています↓
・腎盂腎炎を疑う
・菌血症や敗血症を疑う際の感染源探し
・泌尿器の手術前
・犬さんのストルバイト結石疑い
(・糖尿病のコントロールが難しい子)
(・神経症状などがあって膀胱炎の症状を呈することができない子)
()内の二つは先生にもよるのかなと思います。
もちろん、いざという時のために細菌の種類を知っておくことを目的とした
細菌培養検査をするということ自体はやって良いと考えられておりますし
症状があるのかどうなのか曖昧な時もあるとは思うので
その場合に試験的に抗菌薬の投与をやってみるという場面も存在します。
その場合も、短期的な投与に留めておき
症状の改善などをきちんとモニタリングしながら
やはり無症候性なのだとわかれば休薬すべきだとは考えられています。
そんなわけで
今日は無症候性細菌尿について書いてみました。
尿の中に細菌がいたら、すぐに抗生物質を!!となってしまいがちな部分ではありますが
抗菌薬の濫用は動物にとっても環境にとってもあまり良いことではないので
症状がないなあって時は
今一度ゆっくり考えてから抗菌薬の必要性を検討しましょう。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。