引っ越しのストレスで心不全を発症した猫さん
昨日の夜は循環器の症例発表を聴いておりました。
その中で気になったのは
『引っ越しのストレスにより一過性心筋肥大を発症した中年齢猫の一例』という演題です。

一過性心筋肥大については以前にも触れたことがあるかもしれません。
何かしらの先行イベントが起きた後に
肥大型心筋症のように
一時的に心筋が肥厚し
うっ血性心不全や血栓塞栓症を引き起こす病態です。
一過性という名前の通り
通常は時間経過とともに
その心筋の肥大は改善していき正常に戻るというのが特徴的です。
また、若齢での報告が多く
去勢・避妊手術、全身麻酔
交通事故だったりワクチン接種や外傷なんかが
先行イベントとして報告されています。
一過性の心筋肥大で
いずれは元に戻るとは言うものの
うっ血性心不全を引き起こした際には
肺水腫や胸水貯留、場合によっては血栓塞栓症など
いずれも命に関わる状態に陥ってしまうことから
おそらく助からない猫さんもいるものと思われます。
僕自身は一例しか経験はないですが
その子も、他の動物病院さんで1週間ぐらい前に避妊手術をしてもらい
その数日後から元気・食欲がないみたいな感じで来院されました。
当院にいらした時には、完全に心原性肺水腫になっており
緊急的な治療で状態が改善しました。
そこから投薬治療をしていきましたが
経過を追うにつれて心臓の形態も正常に近づいていったので
薬を漸減していき、数ヶ月で薬を完全に切りました。
そこから3年以上経過してますが、特に問題なく過ごしてくれているみたいですので
本当に一過性だったんだと思います。
今回の報告では
引っ越しのストレスが心筋肥大の引き金になるという
ちょっと驚きな報告だったわけですが
この子も、心不全の時はとても危険な状態だったみたいですが
最終的には病態は改善し、1ヶ月もしない内に、心臓は正常化していました。
また、一般的には若齢で多いとされるこの病態ですが
この子は6歳5ヶ月と中年齢の猫さんでした。
若齢に囚われない方が良いということでしょうか。
この発表の考察の中では
引っ越しの過度のストレスによって
カテコラミンの分泌が起こり
それによる急性の心筋炎によって
心筋の浮腫や肥大、機能低下などが起きたのでは?ということでした。
人間にもストレス性の心筋症という病態が存在しておりまして
それに近いのかも?という話もされておりました。
過度なストレスというものは
本当に怖いみたいです。
皆様もご無理なさらずにお体を大事になさってください。
それでは、今日はこの辺で。